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あたしらが事件を起こしてどうすんだ!?編
第7話「変身!! カバさんパニック!? その2」
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ど、どうしよう!?
ユカリちゃんたちに、カバさんに変身したシーちゃんを見られちゃった。
「きゃああああ!? だれかぁぁぁぁ!」
大きな悲鳴を上げながら逃げていくユカリちゃんたち。
こ、このままじゃ大騒ぎになって、人が集まってきちゃう!
「シーちゃん! 変身はあとどれくらいで解けるの!?」
「変身解除まで残り3分ほどよ!」
「さ、3分かぁ」
び、微妙な時間だ。
誰にも見つからずに変身が解けるのが先か、ユカリちゃんたちの騒ぎを聞きつけて人が集まってくるのが先か、どちらが早いかな……。
「ここから移動した方がいいんじゃないかしら?」
シーちゃんの言葉に、あたしは首を振った。
「ダメだよ。この校舎裏から出たら、もっとひと目についちゃう」
「じゃあ、どうするのよ!」
「いま考えてるよ!」
って言っても、なんにも思いつかない!
ああ、はやく3分経たないかなぁ!
ザッ……。
そのとき、足音がした。
「……ユイ?」
ぎくりとして声の方を向く。
「り、リンちゃん!?」
いつの間にか、リンちゃんが、そこにいた。
リンちゃんは、ぽかんと口を開け、視線はカバさんのシーちゃんに向けられている。
「村野さんの悲鳴を聞いて来てみたら……うそでしょ。その動物って、カバさんだよね?」
「あ、あの……その……はい、カバさんです」
ど、どうすんのさぁ!?
リンちゃんにも見つかっちゃったんだけど!?
「ああ!! カバさん! かわいい! 好き!!」
リンちゃんが、瞳をキラッキラに輝かせた。
そ、そうだった!
リンちゃんは、カバさんが大好きなんだった!
色んな動物が展示されてる動物園に行っても、開園から閉園までカバさんの前から動かないくらいなんだ。
リンちゃんは涙をにじませながらカバさんに変身しているシーちゃんに近づいていった。
「か、かわいい! 子どものカバさんだよね! ぷるぷるしてる! 羊羹みたい!」
目の前に大きな動物がいるのに、まるで恐れたりしないのは単純にすごい……。
(ちょっと! この子、なに!? どうしたらいいの!?)
ぺたぺたと親し気に身体を触られているシーちゃんが、困った様子でテレパシーを送ってきた。
(リンちゃんは、カバさんが大好きなんだよ。本物……ではないけど、本物だと思ってるカバさんに会えて感動してるんだね)
(まずいじゃない! いま変身が解けたら、ぬいぐるみの姿に戻るのが見られちゃうわよ!)
そ、そうだよね。
カバさんの姿が見られたのも大変なことだけど、ぬいぐるみの姿に戻っちゃうのを見られるのもいけない。
『これは、いったいどういうことなの!? どうしてカバさんが人のぬいぐるみに!?』
とか詰め寄られたら説明のしようがない。
リンちゃんに魔法の存在を知られてしまえば、最悪スクラップがルール違反をしたと判断して大変なことになりかねないし。
なんとか、誤魔化さないと……。
「ねえカバさん、あなたのお名前はなんていうの? 私と友だちになってくれる?」
リンちゃんは、カバさんのシーちゃんを撫でながら話しかけている。
あっ、そうだ!!
この手で、いこう!
「リンちゃん! このカバさんはね。カバさんの王国から日本に観光に来たんだ!」
「え! カバさんの王国から!? 観光に!?」
リンちゃんは、驚いた様子だった。
(ちょっと、ユイ! なにを言ってるのよ!)
いいから! すこし黙ってて!
「でも観光に来たんだけど、もうすぐ帰らなきゃいけないの。王国からカバさんの仲間が迎えにくるんだけど、その瞬間を誰かに見られちゃったら王国を追放されちゃうんだよ!」
「ええ!? そ、そんなひどい!? 追放だなんて!!」
口元を手でおさえて、あとずさりするリンちゃん。
とてもショックを受けているようだ。
(いや、待ってよ。なんで、この子……そんなデタラメを真に受けてるのよ)
(リンちゃんは、カバさんのことになると、どういうわけか考え方が子どもっぽくというか、すごくかわいらしくなっちゃうのさ!)
(そ、そうなの!? よくわかんないけど、それは好都合ね!)
そう好都合だった。
カバさんのことになると、考え方がかわいらしくなっちゃうリンちゃんに協力してもらうのだ。
「だから、誰にも見つからないように隠れてたんだけど、さっきユカリちゃんたちに見つかっちゃったの!! このままじゃ学校の子たちが集まってきちゃって、このカバさん……ええっと、シー子ちゃんは王国を追放されちゃうかもしれないんだ!」
(シー子ちゃんって、なによ!? 私はシルヴァーナよ!)
いいから、もうすこし黙ってて!!
「な、なんとかしなきゃ! シー子ちゃんが追放されちゃったらかわいそう!」
「そうだよね! とにかく仲間が迎えにくる瞬間を見られちゃいけないから、ここには誰も近寄らせちゃいけないの! リンちゃん! お願い力を貸して! リンちゃんも、シー子ちゃんを無事に王国に帰してあげたいでしょう!!」
「もちろんよ! 私はどうしたらいいの?」
「とにかく、誰も近寄らせないようにしよう! ユカリちゃんたちの騒ぎを聞いて大勢の人が集まってくるかもしれないから、あたしと一緒に、その人たちを足止めするんだよ!」
「ようし! わかった!」
リンちゃんが、力強くうなずいてくれたときだった。
「先生! こっちです! こっちに5メートルを超える巨大なカバが!」
ユカリちゃんの声が聞こえてきた。
5メートル超って、3倍以上、大きさが増し増しになっちゃってるんだけど……。
「いこう! リンちゃん!」
「ええ! シー子ちゃんは、私が守る! 心配しないでね、シー子ちゃん!」
リンちゃんは、本気でシー子ちゃんを守ろうとしてくれている。
なんて頼もしいんだろう。
「ぐぉぐぉぐぉぉぉぉ」
自分を守ってくれようとしてくれているリンちゃんに、シー子ちゃんもお礼を言うように、低く小さくうなった。
(カバさんの真似をしてるシーちゃん、めっちゃおもろい!)
(うるさいわね! それより、なんとかしてよね!)
(もちろんだよ! シー子ちゃん!)
(私はシルヴァーナよ!)
あたしとリンちゃんは、校舎の裏から飛び出した。
すると、すぐに”さすまた”を持った男の先生たちや、保科先生、そしてユカリちゃんが、こちらに走ってくるのが見えた。
「き、きた! 先生たちだ!」
「くるなら来なさい! カバさんは、シー子ちゃんは私の命に懸けて守ってみせる!」
リンちゃんが、地面を踏み抜くように「どしん!」と足を踏みしめた。
そして、軽く腰を落として拳を前に「ビシッ」と向ける。
よく知らないけれど、空手か何かの構えかもしれない……。
「あ、あのリンちゃん。念のために確認しておくけど、みんなを足止めするって言っても、暴力をふるって力づくで止めるわけじゃないからね?」
「あ、そうなの……?」
「そ、それはそうでしょ。リンちゃんだって、暴力は嫌いっていつも言ってるじゃん」
「ご、ごめんなさい。シー子ちゃんを守りたいと思うあまり頭に血が昇っていたみたい」
リンちゃんが、構えをスッと解いた。
わかってもらえてよかった。
と、思ったのも一瞬だった。
「先生たち! 早くカバをやっつけて!!」
ユカリちゃんが、赤い目をギラギラさせながら叫んだ。
おい!? なに言ってんの!?
「なんですって!? 許せぬ! すべて返り討ちにしてやるわ!!」
ああ!? リンちゃんが、臨戦態勢に入った!?
ぎっちりと構えて目には炎を宿らせている!
おいおい!?
もうこれどうなんのよ!?
ていうか、事件を解決するのが目的のはずだったのに、あたしらが事件を起こしちゃってんじゃん!
あほか~~い!!
読んでくださりありがとうございます!
次回の更新は8月3日を予定しております!
ユカリちゃんたちに、カバさんに変身したシーちゃんを見られちゃった。
「きゃああああ!? だれかぁぁぁぁ!」
大きな悲鳴を上げながら逃げていくユカリちゃんたち。
こ、このままじゃ大騒ぎになって、人が集まってきちゃう!
「シーちゃん! 変身はあとどれくらいで解けるの!?」
「変身解除まで残り3分ほどよ!」
「さ、3分かぁ」
び、微妙な時間だ。
誰にも見つからずに変身が解けるのが先か、ユカリちゃんたちの騒ぎを聞きつけて人が集まってくるのが先か、どちらが早いかな……。
「ここから移動した方がいいんじゃないかしら?」
シーちゃんの言葉に、あたしは首を振った。
「ダメだよ。この校舎裏から出たら、もっとひと目についちゃう」
「じゃあ、どうするのよ!」
「いま考えてるよ!」
って言っても、なんにも思いつかない!
ああ、はやく3分経たないかなぁ!
ザッ……。
そのとき、足音がした。
「……ユイ?」
ぎくりとして声の方を向く。
「り、リンちゃん!?」
いつの間にか、リンちゃんが、そこにいた。
リンちゃんは、ぽかんと口を開け、視線はカバさんのシーちゃんに向けられている。
「村野さんの悲鳴を聞いて来てみたら……うそでしょ。その動物って、カバさんだよね?」
「あ、あの……その……はい、カバさんです」
ど、どうすんのさぁ!?
リンちゃんにも見つかっちゃったんだけど!?
「ああ!! カバさん! かわいい! 好き!!」
リンちゃんが、瞳をキラッキラに輝かせた。
そ、そうだった!
リンちゃんは、カバさんが大好きなんだった!
色んな動物が展示されてる動物園に行っても、開園から閉園までカバさんの前から動かないくらいなんだ。
リンちゃんは涙をにじませながらカバさんに変身しているシーちゃんに近づいていった。
「か、かわいい! 子どものカバさんだよね! ぷるぷるしてる! 羊羹みたい!」
目の前に大きな動物がいるのに、まるで恐れたりしないのは単純にすごい……。
(ちょっと! この子、なに!? どうしたらいいの!?)
ぺたぺたと親し気に身体を触られているシーちゃんが、困った様子でテレパシーを送ってきた。
(リンちゃんは、カバさんが大好きなんだよ。本物……ではないけど、本物だと思ってるカバさんに会えて感動してるんだね)
(まずいじゃない! いま変身が解けたら、ぬいぐるみの姿に戻るのが見られちゃうわよ!)
そ、そうだよね。
カバさんの姿が見られたのも大変なことだけど、ぬいぐるみの姿に戻っちゃうのを見られるのもいけない。
『これは、いったいどういうことなの!? どうしてカバさんが人のぬいぐるみに!?』
とか詰め寄られたら説明のしようがない。
リンちゃんに魔法の存在を知られてしまえば、最悪スクラップがルール違反をしたと判断して大変なことになりかねないし。
なんとか、誤魔化さないと……。
「ねえカバさん、あなたのお名前はなんていうの? 私と友だちになってくれる?」
リンちゃんは、カバさんのシーちゃんを撫でながら話しかけている。
あっ、そうだ!!
この手で、いこう!
「リンちゃん! このカバさんはね。カバさんの王国から日本に観光に来たんだ!」
「え! カバさんの王国から!? 観光に!?」
リンちゃんは、驚いた様子だった。
(ちょっと、ユイ! なにを言ってるのよ!)
いいから! すこし黙ってて!
「でも観光に来たんだけど、もうすぐ帰らなきゃいけないの。王国からカバさんの仲間が迎えにくるんだけど、その瞬間を誰かに見られちゃったら王国を追放されちゃうんだよ!」
「ええ!? そ、そんなひどい!? 追放だなんて!!」
口元を手でおさえて、あとずさりするリンちゃん。
とてもショックを受けているようだ。
(いや、待ってよ。なんで、この子……そんなデタラメを真に受けてるのよ)
(リンちゃんは、カバさんのことになると、どういうわけか考え方が子どもっぽくというか、すごくかわいらしくなっちゃうのさ!)
(そ、そうなの!? よくわかんないけど、それは好都合ね!)
そう好都合だった。
カバさんのことになると、考え方がかわいらしくなっちゃうリンちゃんに協力してもらうのだ。
「だから、誰にも見つからないように隠れてたんだけど、さっきユカリちゃんたちに見つかっちゃったの!! このままじゃ学校の子たちが集まってきちゃって、このカバさん……ええっと、シー子ちゃんは王国を追放されちゃうかもしれないんだ!」
(シー子ちゃんって、なによ!? 私はシルヴァーナよ!)
いいから、もうすこし黙ってて!!
「な、なんとかしなきゃ! シー子ちゃんが追放されちゃったらかわいそう!」
「そうだよね! とにかく仲間が迎えにくる瞬間を見られちゃいけないから、ここには誰も近寄らせちゃいけないの! リンちゃん! お願い力を貸して! リンちゃんも、シー子ちゃんを無事に王国に帰してあげたいでしょう!!」
「もちろんよ! 私はどうしたらいいの?」
「とにかく、誰も近寄らせないようにしよう! ユカリちゃんたちの騒ぎを聞いて大勢の人が集まってくるかもしれないから、あたしと一緒に、その人たちを足止めするんだよ!」
「ようし! わかった!」
リンちゃんが、力強くうなずいてくれたときだった。
「先生! こっちです! こっちに5メートルを超える巨大なカバが!」
ユカリちゃんの声が聞こえてきた。
5メートル超って、3倍以上、大きさが増し増しになっちゃってるんだけど……。
「いこう! リンちゃん!」
「ええ! シー子ちゃんは、私が守る! 心配しないでね、シー子ちゃん!」
リンちゃんは、本気でシー子ちゃんを守ろうとしてくれている。
なんて頼もしいんだろう。
「ぐぉぐぉぐぉぉぉぉ」
自分を守ってくれようとしてくれているリンちゃんに、シー子ちゃんもお礼を言うように、低く小さくうなった。
(カバさんの真似をしてるシーちゃん、めっちゃおもろい!)
(うるさいわね! それより、なんとかしてよね!)
(もちろんだよ! シー子ちゃん!)
(私はシルヴァーナよ!)
あたしとリンちゃんは、校舎の裏から飛び出した。
すると、すぐに”さすまた”を持った男の先生たちや、保科先生、そしてユカリちゃんが、こちらに走ってくるのが見えた。
「き、きた! 先生たちだ!」
「くるなら来なさい! カバさんは、シー子ちゃんは私の命に懸けて守ってみせる!」
リンちゃんが、地面を踏み抜くように「どしん!」と足を踏みしめた。
そして、軽く腰を落として拳を前に「ビシッ」と向ける。
よく知らないけれど、空手か何かの構えかもしれない……。
「あ、あのリンちゃん。念のために確認しておくけど、みんなを足止めするって言っても、暴力をふるって力づくで止めるわけじゃないからね?」
「あ、そうなの……?」
「そ、それはそうでしょ。リンちゃんだって、暴力は嫌いっていつも言ってるじゃん」
「ご、ごめんなさい。シー子ちゃんを守りたいと思うあまり頭に血が昇っていたみたい」
リンちゃんが、構えをスッと解いた。
わかってもらえてよかった。
と、思ったのも一瞬だった。
「先生たち! 早くカバをやっつけて!!」
ユカリちゃんが、赤い目をギラギラさせながら叫んだ。
おい!? なに言ってんの!?
「なんですって!? 許せぬ! すべて返り討ちにしてやるわ!!」
ああ!? リンちゃんが、臨戦態勢に入った!?
ぎっちりと構えて目には炎を宿らせている!
おいおい!?
もうこれどうなんのよ!?
ていうか、事件を解決するのが目的のはずだったのに、あたしらが事件を起こしちゃってんじゃん!
あほか~~い!!
読んでくださりありがとうございます!
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