AIに意識を移植されたのでちょっと異世界に行ってきます

鉛風船

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異世界へ

#3 ようこそナノロボット

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 確かに俺は何者かに拉致監禁されているがしかし、すべてが悪い方向へ向かっているという訳ではなかった。八咫烏があるものを発見したのだ。

『マスター、大発見です』

『どうした?』

『我々の半身を見つけました』

『それがあれば動ける?』

『それだけではありません。自由自在です。水中も地中も空中だって何処にでも行けます』

『マジか』

『マジです』

『で、それは何処にあるんだ?』

 俺はこの体に慣れていないので、自分の視覚外の情報を集める方法がわからなかった。首を伸ばそうとして諦めた。俺に首はない。

『なるほど、まだ完全に私とリンクしていないのですね』八咫烏が得心したように呟き、『これよりマスターの人格を私とリンクさせます。よろしいですか?』

 と聞いてきた。

『後で俺の人格を乗っ取ったりしない?』

 俺は少し怖くなった。これまでコンピュータが人間に反旗を翻す映画をたくさん見てきたから、万が一のことを考えたのだ。

『私にそのような権限は与えられていませんのでご安心ください。この行為はどちらかというと、マスターに私の機能のすべてを余さず使いこなせるようにするための措置です』

『それは助かる。いつまでも八咫烏の助言に助けられてばかりじゃいられないと思っていたんだ』

 俺は快諾して、八咫烏と人格をリンクさせた。すると、それまで視覚だけだった俺の感覚に、味覚以外の感覚が戻ってきた。てっきりこの部屋は無音かと思っていたけれども、存外この部屋は騒がしいようで、あちこちから機械音がするし、何より俺の下からもぞもぞと何かが動く音が聞こえてきた。

『それではマスター、意識を我々の下へ向けて下さい』

 俺は言われるがまま、意識を椅子の下に向けた。そこには三四十センチメートルくらいのスライムのような物体がいた。

 いや、俺はこの物体を直接見たわけではないから、あたかも見たような言い方をするのはおかしいとわかっているのだがしかし、感覚としてありありといるのがわかるのだから仕方がない。俺は困惑した。

『それは、マスターが空気中に散布したナノロボットがマスターの視界外の情報を収集してこちらに送信しているからです』

『いつのまにそんなことをしていたのか。もしかして君がやったのか?』

『いえ、私ではありません。マスターが無意識に行ったのです。マスターの人格をリンクさせる際に、マスターがとある動作をした場合、その背後で一定のプログラムを無意識下で実行するようプログラムし直したので、それが上手く機能したのでしょう』

『なるほど。でも、どうして無意識下に実行するようプログラムしたんだ? 俺が操作するんじゃダメなのか?』

『もちろん手動の方が細かく制御できますが、今はまだこの体に慣れる方が先決だと判断いたしましたので、このようにプログラムしました』

 確かに、いきなり手動で操作すれば、膨大な量の処理を一人で行わなければならなくなり、俺の下にあるものを確かめるどころじゃなくなるだろう。本当に欲しい情報も満足に得られないに違いない。

『助かるよ。でも、慣れてきたら自分で操作できるようになりたいな』

 一通り、視界外の情報を集められるようになった俺は、下でぷるぷるしている鈍色のスライムについて考えることにした。

 まあ、こいつは十中八九ナノロボットの集合体だろう。ファンタジーめいた魔物に見えなくもないが、この世に魔物なんているわけがないからな。

 それに、こいつからは暗号化された電波が出ている。

『マスター、下のナノロボット達とコネクトしますか?』

『ああ、そうしよう。そうすれば動けるようになるんだろう?』

『はい。我々は彼らの上位存在なので、従えることができます』

『よし』

 俺がコネクトしようと考えると、俺の体に小さな穴が一つ開きそこから半透明のキラキラした細い触手のようなものが菌糸のようにうねうねと広がり出て来た。

『なんだこのキモイの!』

『し、少々心外なお言葉ですが、これは菌糸を参考に作られた生体ケーブルで、人体に用いれば怪我や病気の治療は勿論、心拍数の測定や血流検査と言ったバイタルチェックにも使えるだけでなく、機械に用いれば故障した箇所や程度にもよるが回路の代替としても使える万能の代物なのです』

『ごめん。つい口が滑った』

 そうだったのか。そういえば、数年前に医療現場にこのケーブルを導入すると決定したとニュースになっていたような。俺は健康優良児だったからついぞお目にかかる事はなかったが、こうして目の当たりにしてみると、なんだか……うん、精神衛生上よくない気がする。ましてやこれが全身に纏わり付いたらと考えると、ないはずの背筋がぶるりと震える。

『いいえ、私はマスターに使えるAIですので、マスターの言葉は絶対です。ですから、このケーブルは間違いなく気持ち悪いです』

『…………』

 悪かったって。

『兎に角、これをナノロボットに接続しましょう』

『わかった』

 俺はケーブルをスライム、もといナノロボットに垂らした。ロボットに触れると、ケーブルは菌糸のように根を張りスライムを包み込んだ。

 本物の生き物みたいだ。それが率直な俺の感想だった。ケーブルは触覚を振り回すナメクジのように先端をぬらぬらと動かしており、見る人が見れば目を逸らしかねない光景だった。

『しばしお待ちを。ただ今内部にもケーブルを張り巡らせています。それが終わり次第ナノロボットたちを呼び寄せましょう』

 ややをして、視界がグンと広がる感覚とひんやりと冷たい地面の感触が俺に届いた。先ほどまでスライムを包んでいたケーブルはいつの間にか消え、数本に束ねられたケーブルがスライムに接続されていた。

『繋がった』

『はい』

 俺はこっちにこいと心の中で念じた。すると、大昔の掃除機のようにケーブルが巻き取られ、鈍色のスライムが椅子を登ってきた。

『これが俺の体になるってことでいいんだよな?』

『はい、マスターの手足になります』

『よし』

 スライムが俺に覆いかぶさった。
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