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21話
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文化祭といえば、これ!というやつもいるかもしれない。
それは、教室の前方に貼られた模造紙に描かれている、クラスTシャツのデザイン案だ。
毎年クラスごとに作られるから、集めるだけでも面白い。さらに、その後に個人で手を加えて「世界に一つだけのTシャツ」に仕上げるのも、いい思い出になる。
並んでいるのは、無難なシンプル系から、ネタ枠全開のふざけたやつまで全部で6種類。
「好きなのにシール貼ってくれ~。多数決で決めるから!」
学級委員の声に、みんながわらわらと前に集まり始めた。
俺も何となく前に出ようとした、そのとき──。
「……は?! えっ!? お前らそれなの!?」
ロロと東雲が同時に指さしたのは、よりによって──
たこ焼きを両手で一つずつ持ったドラゴンが、なぜかサングラスをかけている、意味不明なデザイン。
「コレ、カッコイイ!」
「……ん」
ワクワクしているロロと、たぶん何となくのセンスで選んだだけっぽい東雲。
いや、色派手とかそういう問題じゃないから!!
それ、完全に中二病寄りだからな!? と、心の中で全力ツッコミ。
「お、お前ら……なんでそんなに波長合ってんの!」
堪えきれずに笑いがこみ上げ、気づけば腹を抱えて爆笑してた。
「よりによって、これ選ぶか!? センスどうなってんだよ!」
東雲は肩をすくめ、ロロは平然と「イチバン、カッコイイ!」とか言ってる。
結果、たこ焼きドラゴンは多数決であえなく5位。
……いや、むしろ健闘した方だろ、これ。
決まったのは無難なロゴ入りTシャツだったけど、二人がちょっとだけ残念そうに「マケタ…」って笑い合ってるのを見て──
(……やっぱり何か…あるのかな。)
胸の奥で、そんな言葉がまたひとつ強くなった。
──
そして数日後、完成したクラスTシャツが届いた。
カラーは自分で選べるということもあって、色とりどりのTシャツが各個人に配られる中、東雲のシャツは3Lということもあり、やたらと大きい。
隣で広げてみたロロのシャツと比べても、一回りどころか二回りは違う。
3人一緒に黒にしてみたものの──何か異様にでかい。
黒って確か収縮色って言われてるよな?
白は膨張しやすいっていう、あの有名なやつだ。
そんな効果をぶち破るぐらい、でかい。
元々そこまでピッタリしていないデザインのせいなのかもしれないけれど。
「え、これ東雲が着てもダボダボなんじゃ……」
そう言ってみたら、東雲がカッターシャツの上から羽織ってみてくれた。
すると、案外ちょうどいい感じのサイズ感だ。
「え?お前こんな胴回り太いの?隠れデブ?」
「誰が肥満体型だ、こら」
流れるようなツッコミに思わず固まる。
……案外、ノリツッコミもできるタイプなのか?と、東雲の新しい一面を発見できたことがちょっと嬉しい。
ちなみに女子は、ここからビーズやパールを貼り付けてさらに華やかにデコるらしい。
男子はあまりそういうことをしないが、ロロが「どうしてもやりたい」と言い出し、付き合うことになった。
最近カップルの間で流行っているという──腕に絵の具を塗ったまま抱きしめ合い、背中に手形や腕跡を残すアレンジ。
「……俺もやんのかよ、それ」
面倒くさそうに呟く東雲の前に、白と青の絵の具を両腕と手の平に塗った俺とロロが立つ。
そこに東雲が赤色の手を加えれば、フランス国旗カラーになるわけだ。
今回はカップルではなく、トリオ。
3人で円陣を組むみたいに背中に手を回せば、まあ何となくそれっぽくなるだろう──。
ロロの提案で「トリオTシャツ」を作ることになった。
本当は2人が良かったんじゃないのか?
俺も一緒でいいのか?とは思ったけど、「まだお友達だもんな」ということで仲間に入れてもらうことにした。
やむなく、という体裁で両腕を真っ赤に塗る東雲。
でかい手と腕ゆえになかなか塗り終わらない。
その間ワクワクして待っていたロロの絵の具はすでに半乾きで、結局もう一度塗り直す羽目になった。
「セーノ!セーノ!」
ロロが「せーの」を言いたくて、妙に張り切った声を上げる。
俺もそれに合わせて手を構えた。
「……ほんとにやんのか」
東雲はまだ半信半疑な顔をしている。
けど、両腕が真っ赤に塗られている時点で、もう逃げ場なんかない。
「いくぞー、いち、に──」
「──さんっ!」
一斉に背中へバンッと手を押し付ける。
ねちょっとした絵の具の感触が広がった。
「デキタ?デキタ?」
ロロが目を輝かせ、俺と東雲の背中を見比べる。
だが、俺の背中についた白・赤、東雲の背中についた白・青の手形にロロは首を傾げた。
「Hmm?」
「あ?あ、そっか! 皆、一色足りないのか!」
自分の腕の色は他の2人に押し付けられても、自分の背中にはその色がない──うっかり失念していたらしい。
「いやでも、2色でもかっこいいけどな?」
そう言うと、ロロは自分の背中を見ようとくるくる回る。
……いや、無理だから。自分の背中は見えないから。
──落ち着きなさい。自分の尻尾を追いかける犬じゃないんだから。
そう優しく言ってやると「デモ、ミタイ!!」と力強く言われて、そうだよな、完成形は見たいよな、とお母さんみたいな気持ちになる。
仕方なく廊下の姿見の前まで行ったロロは、「Wow!」と声を上げ、目を輝かせていた。
予想外に、いい感じにできていたのだろう。
その後、とりあえず、3色にするには…?と考えた結果。
自分で自分を抱きしめるしかない、という結論になり、肩や腹あたりに適当な感じで自分の手のスタンプが押されることになる。
「……まぁ、いいんじゃねぇの?」
東雲はちらっと自分の背中を覗き込んで、小さく頷いた。
その反応がまたロロを喜ばせたらしく、肩を叩いてニパッと笑っている。
「これデ、すぐワカル!」
ロロがはしゃぎながら言うけど、たぶんそれは間違いない。
こんな色の暴力みたいなTシャツを着てたら、嫌でも視線集まるからな。
そうやって、もともと真っ黒だったクラスTシャツの背中に、赤・白・青のトリコロールカラーの巨大な手形が並び、ロロはまるで世界征服を成し遂げたみたいな笑みを浮かべる。
──そしてこの派手すぎる背中が、文化祭当日ちょっとした注目を集めることになるのは、このときの俺たちはまだ知らなかった。
それは、教室の前方に貼られた模造紙に描かれている、クラスTシャツのデザイン案だ。
毎年クラスごとに作られるから、集めるだけでも面白い。さらに、その後に個人で手を加えて「世界に一つだけのTシャツ」に仕上げるのも、いい思い出になる。
並んでいるのは、無難なシンプル系から、ネタ枠全開のふざけたやつまで全部で6種類。
「好きなのにシール貼ってくれ~。多数決で決めるから!」
学級委員の声に、みんながわらわらと前に集まり始めた。
俺も何となく前に出ようとした、そのとき──。
「……は?! えっ!? お前らそれなの!?」
ロロと東雲が同時に指さしたのは、よりによって──
たこ焼きを両手で一つずつ持ったドラゴンが、なぜかサングラスをかけている、意味不明なデザイン。
「コレ、カッコイイ!」
「……ん」
ワクワクしているロロと、たぶん何となくのセンスで選んだだけっぽい東雲。
いや、色派手とかそういう問題じゃないから!!
それ、完全に中二病寄りだからな!? と、心の中で全力ツッコミ。
「お、お前ら……なんでそんなに波長合ってんの!」
堪えきれずに笑いがこみ上げ、気づけば腹を抱えて爆笑してた。
「よりによって、これ選ぶか!? センスどうなってんだよ!」
東雲は肩をすくめ、ロロは平然と「イチバン、カッコイイ!」とか言ってる。
結果、たこ焼きドラゴンは多数決であえなく5位。
……いや、むしろ健闘した方だろ、これ。
決まったのは無難なロゴ入りTシャツだったけど、二人がちょっとだけ残念そうに「マケタ…」って笑い合ってるのを見て──
(……やっぱり何か…あるのかな。)
胸の奥で、そんな言葉がまたひとつ強くなった。
──
そして数日後、完成したクラスTシャツが届いた。
カラーは自分で選べるということもあって、色とりどりのTシャツが各個人に配られる中、東雲のシャツは3Lということもあり、やたらと大きい。
隣で広げてみたロロのシャツと比べても、一回りどころか二回りは違う。
3人一緒に黒にしてみたものの──何か異様にでかい。
黒って確か収縮色って言われてるよな?
白は膨張しやすいっていう、あの有名なやつだ。
そんな効果をぶち破るぐらい、でかい。
元々そこまでピッタリしていないデザインのせいなのかもしれないけれど。
「え、これ東雲が着てもダボダボなんじゃ……」
そう言ってみたら、東雲がカッターシャツの上から羽織ってみてくれた。
すると、案外ちょうどいい感じのサイズ感だ。
「え?お前こんな胴回り太いの?隠れデブ?」
「誰が肥満体型だ、こら」
流れるようなツッコミに思わず固まる。
……案外、ノリツッコミもできるタイプなのか?と、東雲の新しい一面を発見できたことがちょっと嬉しい。
ちなみに女子は、ここからビーズやパールを貼り付けてさらに華やかにデコるらしい。
男子はあまりそういうことをしないが、ロロが「どうしてもやりたい」と言い出し、付き合うことになった。
最近カップルの間で流行っているという──腕に絵の具を塗ったまま抱きしめ合い、背中に手形や腕跡を残すアレンジ。
「……俺もやんのかよ、それ」
面倒くさそうに呟く東雲の前に、白と青の絵の具を両腕と手の平に塗った俺とロロが立つ。
そこに東雲が赤色の手を加えれば、フランス国旗カラーになるわけだ。
今回はカップルではなく、トリオ。
3人で円陣を組むみたいに背中に手を回せば、まあ何となくそれっぽくなるだろう──。
ロロの提案で「トリオTシャツ」を作ることになった。
本当は2人が良かったんじゃないのか?
俺も一緒でいいのか?とは思ったけど、「まだお友達だもんな」ということで仲間に入れてもらうことにした。
やむなく、という体裁で両腕を真っ赤に塗る東雲。
でかい手と腕ゆえになかなか塗り終わらない。
その間ワクワクして待っていたロロの絵の具はすでに半乾きで、結局もう一度塗り直す羽目になった。
「セーノ!セーノ!」
ロロが「せーの」を言いたくて、妙に張り切った声を上げる。
俺もそれに合わせて手を構えた。
「……ほんとにやんのか」
東雲はまだ半信半疑な顔をしている。
けど、両腕が真っ赤に塗られている時点で、もう逃げ場なんかない。
「いくぞー、いち、に──」
「──さんっ!」
一斉に背中へバンッと手を押し付ける。
ねちょっとした絵の具の感触が広がった。
「デキタ?デキタ?」
ロロが目を輝かせ、俺と東雲の背中を見比べる。
だが、俺の背中についた白・赤、東雲の背中についた白・青の手形にロロは首を傾げた。
「Hmm?」
「あ?あ、そっか! 皆、一色足りないのか!」
自分の腕の色は他の2人に押し付けられても、自分の背中にはその色がない──うっかり失念していたらしい。
「いやでも、2色でもかっこいいけどな?」
そう言うと、ロロは自分の背中を見ようとくるくる回る。
……いや、無理だから。自分の背中は見えないから。
──落ち着きなさい。自分の尻尾を追いかける犬じゃないんだから。
そう優しく言ってやると「デモ、ミタイ!!」と力強く言われて、そうだよな、完成形は見たいよな、とお母さんみたいな気持ちになる。
仕方なく廊下の姿見の前まで行ったロロは、「Wow!」と声を上げ、目を輝かせていた。
予想外に、いい感じにできていたのだろう。
その後、とりあえず、3色にするには…?と考えた結果。
自分で自分を抱きしめるしかない、という結論になり、肩や腹あたりに適当な感じで自分の手のスタンプが押されることになる。
「……まぁ、いいんじゃねぇの?」
東雲はちらっと自分の背中を覗き込んで、小さく頷いた。
その反応がまたロロを喜ばせたらしく、肩を叩いてニパッと笑っている。
「これデ、すぐワカル!」
ロロがはしゃぎながら言うけど、たぶんそれは間違いない。
こんな色の暴力みたいなTシャツを着てたら、嫌でも視線集まるからな。
そうやって、もともと真っ黒だったクラスTシャツの背中に、赤・白・青のトリコロールカラーの巨大な手形が並び、ロロはまるで世界征服を成し遂げたみたいな笑みを浮かべる。
──そしてこの派手すぎる背中が、文化祭当日ちょっとした注目を集めることになるのは、このときの俺たちはまだ知らなかった。
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