神様の仰せのままに

幽零

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無神機関編

23話

「………」

二ヶ宮からあてがわれた部屋は、一ノ門の時の離れのようなものではなく、しっかりとした部屋だった。昼間に行った場所を本館と例えるなら、こちらは別館と行ったところだろうか?多少の不便はあるが、あの離れ程ではない。そもそも序列関係の厳しい神社で、ある程度広い部屋を二人にあてがわれたのは破格の待遇だろう。


……まぁ、そこはいいんだが……


「すぴーすぴー、谷透さ~ん…ふへへ~、むぎゅー……すぴー」

「………暑い」

いつも着ているフードを脱いで、黒いインナー姿で仰向けになっている谷透の上に仄がくっついて寝ていた。布団は二人分用意されていたが、仄が一緒が良いと言い出し、今に至る。

「………」

壁にかけてあるアンティークな時計に目をやると、日付が変わっていた。

「……ちょいとゴメンな」

抱きついて寝ている仄を剥がして、布団をかける。立てかけていた封神剣と床に置いていたフードを持って外へ出た。



外に出てると、案外肌寒いように感じる。しばらく鞘に入ったまんまの封神剣を振っていると、暑くなってきたので、フードを脱いで腰のあたりに巻きつける。

「……へぇ、こうしてもぶら下がってる封神剣の邪魔にはならなぇな……さすが四方のハンドメイド」


しばらく封神剣を振った後、鞘を腰に固定して封神剣を引き抜いた。美しいぐらいに透き通った漆黒の刀身が現れる。


「………」

「珍しい剣ですね」

「……なんだ、アンタか」

谷透は一瞬警戒したが、すぐに警戒を解く。声をかけてきたのは昼間に案内してもらった神守の女性、満だった。

「なんの用だ、こんな深夜に」

「……いいえ、特に用があった訳ではありません。見回り中に人の気配がしたので、確認しておこうかと」

満はスッとメガネの位置を直しながら続ける。

「それで、何故さっきから『突き』ばかりをしていたのですか?」

「……」

谷透は抜き身の封神剣を肩に乗せて答える。

「………さてな。なんでろうな?」

谷透がはぐらかすように答えると、満はそれ以上聞いてはこなかった。

「どうでもいいですが、夜は寝て下さい。『穢祓い』として貴方はいるのですから、いざという時に寝不足ではこちらが困ります」

満が腕を組んでため息をつきながら話すと、谷透は封神剣をしまって両手を広げながら答える。

「へーへー、わかりましたよーっと」


谷透はそのまま仄の寝ている部屋へと戻った。




「………ふぅ」

谷透が居なくなった事を確認すると、満はため息をつきメガネの位置を再び直す。

「『なんとか助けられた』って感じぃ?ハハッ僕からすれば『残念だなぁ』って感じぃ。昔の君はそんなことしなかったしぃ」

満の背後から男の声が聞こえてきた。満が振り返るとそこにはにこやかに笑う、半袖シャツとジーンズの青年が立っていた。

「……今更私になんのご用で?」

満が嫌悪感を露わにして答えると、青年は笑いながら。空中で何かに立っているような体勢をとると青年は続ける。

「冷たいなぁー、僕は『面倒なやつ』って感じぃ?でも僕からすれば『お好きにどうぞ』って感じぃ」

「……要件はなんだと聞いている」

眼鏡の奥で光る双眸が鋭くなる。その様子を見た青年は、それでもにこやかに笑う。

「怒んないでよ。僕は君に戻ってきて欲しくてこうしてリスクを背負ってまで神社ココにきてるんだぜ?」

「……もう戻る気はない」

満の声を無視して青年は続ける。

「今、組織は二分化しちゃってさ。派閥争いみたいになっちゃってんの。君が戻ってきてくれたら、いくらかマシなんだけどなぁ」

青年は空中で宙返りしながら、さらに続ける。

「このままだとさ、内部崩壊しかねないんだよね。最近変なのも増えたし、君が思ってる以上に、こっちはギリギリだ」

「……私には関係のない話だ」

満がそういうと、青年は「そっかー、そういう感じぃ?」と答え、腕を大きく振ると続けた。

「まぁ、戻りたくなったら迎えに来るよ。あ、『迷惑だ』って感じぃ?僕にとっては『親切』って感じぃ。んじゃね」

それだけいうと、シュッという音と共に青年の姿は消えた。一人になった満は再びため息をつきながら独り呟く。



「もう……私には関係ないだろう……」



月が静寂を際立たせていた。








人気の無い雑木林、青年は指を鳴らしながら歩いていた。

(ん~、やっぱり難しそうだなぁ…)

青年は満との会話の中で一つ嘘をついていた。組織が二分化して内部崩壊すると言ったが、正しくは一つの派閥がほぼ組織を乗っ取るような形になりかけている。

(……元幹部クラスの君がいれば、こっちもワンチャンスあったと思うんだけどなぁ)


……切り捨てておきながら、戻ってこいという方が、些か勝手ではあるが。


だがまぁ、黙って過ごすなんて事は絶対にノーだ。



青年は次なる策を考えながら、夜道を歩き続けた。









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