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無神機関編
24話
「今戻りましたよーっとぃ」
半袖シャツにジーンズの青年が、指を鳴らしながら部屋に入る。
「おぉ、蒼糸。どうだ?満は?」
「あー…やっぱダメそうって感じぃ」
「そうか…仕方がないな。組織が切り捨てておいて、戻ってこいというのが無理な話だ」
「んで、どうしましょうか有山さん」
「我々にできることはもうほとんど……」
有山と呼ばれた男は、拳を握り締めて続ける。
「あとは総括に話を通すぐらいしかできないが……」
「その総括への取り次ぎも、あの第一補佐が取り仕切ってる…って感じねぇ」
彼らは神を殺す組織、『無神機関』の構成員だ。神社とは別に結成された組織は、非合法であるが故に神社に睨まれぬように神を殺していた。しかし、突如として組織内に現れたある男が組織を肥大化させ、今や神社にも目をつけられるほど力をつけていた。
有山はかつて『無神機関』の総括第一補佐という地位にいたが、それもあの男に奪われ、現在は第二補佐という地位についている。しかし、第一補佐のもたらした技術や戦力の恩恵は大きく、今や数少ない仲間しか彼のいうことを聞かないのが現状だった。
「……『シダマ』というあの男…只者ではない…只者ではないが、何者なのかが掴めん」
「まぁ~、総括も何も言ってない感じぃですし。僕ら本格的に見捨てられたんですかね」
「総括にもお考えがあると思いたいが……」
有山はなんとかして、現状を打破する術を模索し始めた。
白衣をきた男が、一人の少女の前に立っていた。
「ケヒッ、こいつはァやっぱり素晴らしいなぁ」
男の目の前にいる少女は、人間とは思えないほど白く、それでいて美しい。しかし、少女は磔のように固定され、その小さい体にいくつもの管が刺さっていた。その管は無数の機械機器と接続され、その前を似たような白衣をきた研究者達が慌ただしく動いていた。
「神を殺す研究だってねぇ…ケヒッ、なかなか生きててもこんな研究はしないだろうよ」
「おい……」
「ケヒッ、このデータを元に弾丸を製作……うん、うんうん。実に素晴らしいものだ」
「おいって……」
「科学にて神を殺す研究ッ!こんな研究はどこを探しても見つかるまい!!」
「……そろそろ殺すぞ」
「あぁ!?なんだ!?私の研究の邪魔を…ってあぁ、なんだね、第一補佐直属の構成員クン」
「私は女性だ。クンは失礼だと思わないか?このパイナポーヘッド」
「髪を切りに行く暇がないのだよ!!それでなんのようだね。雹」
雹と呼ばれた女性は、長めの髪を揺らしながら答える。
「あぁ、そうそう。第一補佐が呼んでいた。それを伝えにきた。以上だパイナポーヘッド」
「変なあだ名をつけるのはやめたまえ!!私には斑目という名前があるのだよ!」
「あっそ、興味ない。それじゃ」
そういうと雹は颯爽とその場からいなくなる。
「……ぬぅ…」
「あ、あの主任。第一補佐がお呼びなら、すぐに向かった方が良いのでは?」
「そうだな。そうするとしよう。お前達は引き続きコレの研究を頼むぞ」
「わかりました」
「うむ」
若い研究員に其の場を任せ、第一補佐のいる部屋へと向かう。
斑目はただの研究者だ。人道だの倫理観などを度外視すれば、間違いなく教科書に載るレベルの秀才だ。彼はただの人間だ。異能力者でもなければ、神社の神守達のような力も持っていない。だが、彼には人より間違いなくリミットが外れているところがある。研究欲だ。それがどんな研究でも構わないが、彼はただ単に没頭できる時間が何よりも好きだった。彼自身研究に対する拘泥はしない。それが世界偉業レベルの研究でも、彼は飽きればあっさり捨てる。
だが、科学を持って神を殺す研究などはどこを探しても無い。そのため斑目自身はこの研究を珍しく気に入っていた。
仰々しい扉をノックする。
「第一補佐、お呼びでしょうか?斑目です」
「……お、きたか、きたね。入りなよ」
扉を開ける。そこには椅子に座りながらも、足を放った体勢でそこに座る男がいた。
「なんの御用でしょうか。第一補佐」
「うん、うん。用はようだよね、そうだよぅ」
前髪をいじりながら男は答える。
「研究はどんなかんじ?よぅくなってる?」
「はい、例の検体から血液を採取、それを規定の弾丸に注入、調整することにより、神と分類されるものを殺害するに至りました。検体が『神通力』と呼ばれる力を含んでいる事は本当のようです。検体の調整もある為、弾丸の大量生産には至っておりません」
斑目がそう言うと、第一補佐と呼ばれた男 は愉快そうに話す。
「いいさ、いいのさ、いいんだってさ。大事なのは「神を殺せた」って言う事実なのさ。ふひっ、いいなぁ、いいねぇ、素晴らしいねぇ」
「はい……しかし、ひとつ問題が」
「何だい?何だね、何がある?」
「えぇ、我々の製作した弾丸は神を殺すまでに至りました。えぇ、ですが。少しやりすぎたようでして」
斑目がこめかみをかきながら続ける。
「神社の連中に睨まれているようです。最早『無神機関』は第一補佐が中心となっていますし、第一補佐が総括になるまで時間はかからないと思いますが……今神社の勢力に介入されては、少々厄介かと…」
そう言うと、男はニヒィッと笑うと答える。
「良いよ良いのさ。神社は上下関係があってすぐには動けないらしいし」
「ははぁ……総括はなんと?」
「いやね、僕らが成果を上げていれば別に何も言ってこないようだよー」
「そうですか。では、そろそろ私は研究に戻ります」
「はいはーい。ハイハイハイ。バイバーい」
斑目が居なくなると、男は部屋にある隠し通路を開く。人1人通るのに充分な広さ通路を通ると、別の部屋の本棚が開き、そこに通じた。
「やァ、お元気そうで。総括」
「……私になんのようだ、シダマ」
そこには、患者のような服を着せられ、片目を包帯で巻いた男がいた。
「いやね、こうして確認しておかないと、総括に自殺でもされたら困る困るのオオマルなんでね」
「お前の部下の見張りをこんだけ立てて、私の武器も奪ってこの部屋に軟禁しておいて良く言うな」
「まぁー総括が戦闘狂で助かりましたよ、本当にほんと。まさか組織の頭自ら戦場に出るなんて。おかげで囲んでこうして捕らえられましたですけどね、ですですけどね」
「……何を企んでいるか知らんが…あまり無神機関を舐めるなよ」
「おぉ怖。べっつにー私はただ神を倒そうとしてるのにぃ~」
「ほざけ」
「ンヒィッ!んじゃまた何日か後か何ヶ月後にぃ~…死なないでねぇー?」
そう言うと、シダマは部屋から去っていった。
「……………」
部屋を見回せば、シダマの部下らしい人間が3~4人はいる。武器は取り上げられ、このような格好にされては何も出来ない。
自分が表立って異を唱えれば、現状は打破できるが、第一補佐という立場を利用してシダマにこうも軟禁されては何もできない。組織のほぼ9割を掌握してるシダマに異を唱えることが出来る人材はほぼいないだろう。
……出来たとしても、有山辺りぐらいだろうが…
「…………」
総括と呼ばれた男は、空洞になった片目を撫でながらため息をついた。
半袖シャツにジーンズの青年が、指を鳴らしながら部屋に入る。
「おぉ、蒼糸。どうだ?満は?」
「あー…やっぱダメそうって感じぃ」
「そうか…仕方がないな。組織が切り捨てておいて、戻ってこいというのが無理な話だ」
「んで、どうしましょうか有山さん」
「我々にできることはもうほとんど……」
有山と呼ばれた男は、拳を握り締めて続ける。
「あとは総括に話を通すぐらいしかできないが……」
「その総括への取り次ぎも、あの第一補佐が取り仕切ってる…って感じねぇ」
彼らは神を殺す組織、『無神機関』の構成員だ。神社とは別に結成された組織は、非合法であるが故に神社に睨まれぬように神を殺していた。しかし、突如として組織内に現れたある男が組織を肥大化させ、今や神社にも目をつけられるほど力をつけていた。
有山はかつて『無神機関』の総括第一補佐という地位にいたが、それもあの男に奪われ、現在は第二補佐という地位についている。しかし、第一補佐のもたらした技術や戦力の恩恵は大きく、今や数少ない仲間しか彼のいうことを聞かないのが現状だった。
「……『シダマ』というあの男…只者ではない…只者ではないが、何者なのかが掴めん」
「まぁ~、総括も何も言ってない感じぃですし。僕ら本格的に見捨てられたんですかね」
「総括にもお考えがあると思いたいが……」
有山はなんとかして、現状を打破する術を模索し始めた。
白衣をきた男が、一人の少女の前に立っていた。
「ケヒッ、こいつはァやっぱり素晴らしいなぁ」
男の目の前にいる少女は、人間とは思えないほど白く、それでいて美しい。しかし、少女は磔のように固定され、その小さい体にいくつもの管が刺さっていた。その管は無数の機械機器と接続され、その前を似たような白衣をきた研究者達が慌ただしく動いていた。
「神を殺す研究だってねぇ…ケヒッ、なかなか生きててもこんな研究はしないだろうよ」
「おい……」
「ケヒッ、このデータを元に弾丸を製作……うん、うんうん。実に素晴らしいものだ」
「おいって……」
「科学にて神を殺す研究ッ!こんな研究はどこを探しても見つかるまい!!」
「……そろそろ殺すぞ」
「あぁ!?なんだ!?私の研究の邪魔を…ってあぁ、なんだね、第一補佐直属の構成員クン」
「私は女性だ。クンは失礼だと思わないか?このパイナポーヘッド」
「髪を切りに行く暇がないのだよ!!それでなんのようだね。雹」
雹と呼ばれた女性は、長めの髪を揺らしながら答える。
「あぁ、そうそう。第一補佐が呼んでいた。それを伝えにきた。以上だパイナポーヘッド」
「変なあだ名をつけるのはやめたまえ!!私には斑目という名前があるのだよ!」
「あっそ、興味ない。それじゃ」
そういうと雹は颯爽とその場からいなくなる。
「……ぬぅ…」
「あ、あの主任。第一補佐がお呼びなら、すぐに向かった方が良いのでは?」
「そうだな。そうするとしよう。お前達は引き続きコレの研究を頼むぞ」
「わかりました」
「うむ」
若い研究員に其の場を任せ、第一補佐のいる部屋へと向かう。
斑目はただの研究者だ。人道だの倫理観などを度外視すれば、間違いなく教科書に載るレベルの秀才だ。彼はただの人間だ。異能力者でもなければ、神社の神守達のような力も持っていない。だが、彼には人より間違いなくリミットが外れているところがある。研究欲だ。それがどんな研究でも構わないが、彼はただ単に没頭できる時間が何よりも好きだった。彼自身研究に対する拘泥はしない。それが世界偉業レベルの研究でも、彼は飽きればあっさり捨てる。
だが、科学を持って神を殺す研究などはどこを探しても無い。そのため斑目自身はこの研究を珍しく気に入っていた。
仰々しい扉をノックする。
「第一補佐、お呼びでしょうか?斑目です」
「……お、きたか、きたね。入りなよ」
扉を開ける。そこには椅子に座りながらも、足を放った体勢でそこに座る男がいた。
「なんの御用でしょうか。第一補佐」
「うん、うん。用はようだよね、そうだよぅ」
前髪をいじりながら男は答える。
「研究はどんなかんじ?よぅくなってる?」
「はい、例の検体から血液を採取、それを規定の弾丸に注入、調整することにより、神と分類されるものを殺害するに至りました。検体が『神通力』と呼ばれる力を含んでいる事は本当のようです。検体の調整もある為、弾丸の大量生産には至っておりません」
斑目がそう言うと、第一補佐と呼ばれた男 は愉快そうに話す。
「いいさ、いいのさ、いいんだってさ。大事なのは「神を殺せた」って言う事実なのさ。ふひっ、いいなぁ、いいねぇ、素晴らしいねぇ」
「はい……しかし、ひとつ問題が」
「何だい?何だね、何がある?」
「えぇ、我々の製作した弾丸は神を殺すまでに至りました。えぇ、ですが。少しやりすぎたようでして」
斑目がこめかみをかきながら続ける。
「神社の連中に睨まれているようです。最早『無神機関』は第一補佐が中心となっていますし、第一補佐が総括になるまで時間はかからないと思いますが……今神社の勢力に介入されては、少々厄介かと…」
そう言うと、男はニヒィッと笑うと答える。
「良いよ良いのさ。神社は上下関係があってすぐには動けないらしいし」
「ははぁ……総括はなんと?」
「いやね、僕らが成果を上げていれば別に何も言ってこないようだよー」
「そうですか。では、そろそろ私は研究に戻ります」
「はいはーい。ハイハイハイ。バイバーい」
斑目が居なくなると、男は部屋にある隠し通路を開く。人1人通るのに充分な広さ通路を通ると、別の部屋の本棚が開き、そこに通じた。
「やァ、お元気そうで。総括」
「……私になんのようだ、シダマ」
そこには、患者のような服を着せられ、片目を包帯で巻いた男がいた。
「いやね、こうして確認しておかないと、総括に自殺でもされたら困る困るのオオマルなんでね」
「お前の部下の見張りをこんだけ立てて、私の武器も奪ってこの部屋に軟禁しておいて良く言うな」
「まぁー総括が戦闘狂で助かりましたよ、本当にほんと。まさか組織の頭自ら戦場に出るなんて。おかげで囲んでこうして捕らえられましたですけどね、ですですけどね」
「……何を企んでいるか知らんが…あまり無神機関を舐めるなよ」
「おぉ怖。べっつにー私はただ神を倒そうとしてるのにぃ~」
「ほざけ」
「ンヒィッ!んじゃまた何日か後か何ヶ月後にぃ~…死なないでねぇー?」
そう言うと、シダマは部屋から去っていった。
「……………」
部屋を見回せば、シダマの部下らしい人間が3~4人はいる。武器は取り上げられ、このような格好にされては何も出来ない。
自分が表立って異を唱えれば、現状は打破できるが、第一補佐という立場を利用してシダマにこうも軟禁されては何もできない。組織のほぼ9割を掌握してるシダマに異を唱えることが出来る人材はほぼいないだろう。
……出来たとしても、有山辺りぐらいだろうが…
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