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無神機関編
27話
一昔前なら、冷たい地下道で血なまぐさい香りを感じていただろう。
……それが、今こうして切り株に座ってそよ風を感じているようになったのは、やはりあの男が関係しているのだろうか?
そんな思考を巡らせていたのは、六武衆の1人、御影だった。黒い着物を着て、死人のような顔をしている。
そこへ1人の巫女が駆け寄ってきた。
「御影様、白獅子様から伝言でございます…はぁ…はぁ…」
林のかなり奥にいたので、だいぶ走らせてしまったようだ。巫女は息も絶え絶え、御影に言葉を伝える。
「なるべく速く二ヶ宮神社に向かうようにとのお達しです…はぁ…」
「………二ヶ宮ですか?随分いきなりなんですが?」
御影が尋ねると、息切れ巫女さんは続ける。
「はぁ…えぇ、そこに穢祓いの谷透修哉さんがいらっしゃるようで…はぁ…はぁ……詳細は…はぁ…そこで尋ねるとわかるとの事だそうです……はぁ…」
「そうですか、わかりました。では白獅子様に今から向かうと伝えて頂きたいんですが」
そう言うと、息切れ巫女さんは中腰で肩で呼吸をしながらもコクコクと頷いた。
御影はすぐに林から出て二ヶ宮に向かう。
(……しかし、あの男関連ですか…姉さんの耳に入らなければ良いですが……)
御影は新たに生まれた懸念に頭を抱えるのであった。
無神機関では一人の女性が、片手をさすっていた。手には包帯が巻かれており、地肌が全く露出していない。
女性はかつて妖と妖刀使いの戦闘に巻き込まれ家族を失い、天涯孤独となっていた。それに加えて……
「雹さん、冷気が漏れてます……」
「…あ、ゴメン」
女性は同じ隊の隊員に言われて気がつく。女性は異能力者だった。冷気の生成、それを応用した技術も身につけている。それもこれも全て妖や神から身を守るために身につけた技術だった。彼女は幼い頃、自身の異能力をうまく制限できなかった。それゆえ周りを巻き込むこともあったが、今は血が滲むような努力の末、穢れた神にまでその剣が届くまでになっていた。
……とはいえ、先ほどのように気を配っていないと、身体から冷気が漏れ出すことが今でもある。
彼女が無神機関に入ったのは正直成り行きで、組織がどうなろうと知ったことではないと言った考え方だった。そもそも彼女の家族や故郷を奪ったのは妖であり、神を討伐せんとする無神機関に入った事は見当違いも良いところなのだが、彼女自身妖も神も関係なく、ただ超常的な存在を倒せればそれで良いと考えていた。
(……彼は、今どこにいるのだろうか)
雹は悴む自身の片手をさすりながら、通路を歩く。氷のようなの瞳は僅かに下を向いていた。かつて襲われた記憶。今でこそ妖と妖刀使いが暴れていたと認識できるが、当時は常識の範疇に及ばないものが暴れているという認識だった。自分が理解できないものはただひたすらに怖い。異能力を制御できていない当時など、彼女が持てる武器など何一つとしてなかった。
……だから、彼に憧れた。
雹が今にも殺されるという瞬間、妖、そして妖刀使い。その二人を一蹴し、その場に君臨した男。今はもう朧げになってしまったが、黒いフードを目ぶかに被っていたことは覚えていた。
『……あ?生き残り?』
『あ…あの…ありが…』
『別にお前を助けた訳じゃない。こいつらを殺したかっただけだ。助かりたけりゃ勝手に助かれ』
『ど、どうすればいいの…?』
『……強くなれよ。弱いままなら殺されるか死ぬかだ』
今思えば決してこの男は優しくなかったのだろう。だが、彼の言った言葉が雹を突き動かしたのは事実であり、その言葉に従ってここまで上り詰めた。
(……いつか、あなたのように……)
雹は悴む片手をさすりながら、通路を歩いていた。
……それが、今こうして切り株に座ってそよ風を感じているようになったのは、やはりあの男が関係しているのだろうか?
そんな思考を巡らせていたのは、六武衆の1人、御影だった。黒い着物を着て、死人のような顔をしている。
そこへ1人の巫女が駆け寄ってきた。
「御影様、白獅子様から伝言でございます…はぁ…はぁ…」
林のかなり奥にいたので、だいぶ走らせてしまったようだ。巫女は息も絶え絶え、御影に言葉を伝える。
「なるべく速く二ヶ宮神社に向かうようにとのお達しです…はぁ…」
「………二ヶ宮ですか?随分いきなりなんですが?」
御影が尋ねると、息切れ巫女さんは続ける。
「はぁ…えぇ、そこに穢祓いの谷透修哉さんがいらっしゃるようで…はぁ…はぁ……詳細は…はぁ…そこで尋ねるとわかるとの事だそうです……はぁ…」
「そうですか、わかりました。では白獅子様に今から向かうと伝えて頂きたいんですが」
そう言うと、息切れ巫女さんは中腰で肩で呼吸をしながらもコクコクと頷いた。
御影はすぐに林から出て二ヶ宮に向かう。
(……しかし、あの男関連ですか…姉さんの耳に入らなければ良いですが……)
御影は新たに生まれた懸念に頭を抱えるのであった。
無神機関では一人の女性が、片手をさすっていた。手には包帯が巻かれており、地肌が全く露出していない。
女性はかつて妖と妖刀使いの戦闘に巻き込まれ家族を失い、天涯孤独となっていた。それに加えて……
「雹さん、冷気が漏れてます……」
「…あ、ゴメン」
女性は同じ隊の隊員に言われて気がつく。女性は異能力者だった。冷気の生成、それを応用した技術も身につけている。それもこれも全て妖や神から身を守るために身につけた技術だった。彼女は幼い頃、自身の異能力をうまく制限できなかった。それゆえ周りを巻き込むこともあったが、今は血が滲むような努力の末、穢れた神にまでその剣が届くまでになっていた。
……とはいえ、先ほどのように気を配っていないと、身体から冷気が漏れ出すことが今でもある。
彼女が無神機関に入ったのは正直成り行きで、組織がどうなろうと知ったことではないと言った考え方だった。そもそも彼女の家族や故郷を奪ったのは妖であり、神を討伐せんとする無神機関に入った事は見当違いも良いところなのだが、彼女自身妖も神も関係なく、ただ超常的な存在を倒せればそれで良いと考えていた。
(……彼は、今どこにいるのだろうか)
雹は悴む自身の片手をさすりながら、通路を歩く。氷のようなの瞳は僅かに下を向いていた。かつて襲われた記憶。今でこそ妖と妖刀使いが暴れていたと認識できるが、当時は常識の範疇に及ばないものが暴れているという認識だった。自分が理解できないものはただひたすらに怖い。異能力を制御できていない当時など、彼女が持てる武器など何一つとしてなかった。
……だから、彼に憧れた。
雹が今にも殺されるという瞬間、妖、そして妖刀使い。その二人を一蹴し、その場に君臨した男。今はもう朧げになってしまったが、黒いフードを目ぶかに被っていたことは覚えていた。
『……あ?生き残り?』
『あ…あの…ありが…』
『別にお前を助けた訳じゃない。こいつらを殺したかっただけだ。助かりたけりゃ勝手に助かれ』
『ど、どうすればいいの…?』
『……強くなれよ。弱いままなら殺されるか死ぬかだ』
今思えば決してこの男は優しくなかったのだろう。だが、彼の言った言葉が雹を突き動かしたのは事実であり、その言葉に従ってここまで上り詰めた。
(……いつか、あなたのように……)
雹は悴む片手をさすりながら、通路を歩いていた。
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