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無神機関編
28話
谷透が白獅子と連絡をとっている頃、三ツ谷神社では、紅葉が珍しく巻物を手に取って読んでいた。
「うーむ……」
「どうしました?紅葉様」
そこを通りがかった結が声をかける。
「いや何、することも無くて暇じゃし、シューヤは妾じゃなくて仄を連れて行ってしまうし、妾最近扱い雑じゃない!?」
紅葉がむきーと巻物を振り回しながら話していると、そのへ盾岩が通りかかった。
「む、なんだ紅葉、書物に向かうとは珍しいな」
「何、シューヤもいなくて暇じゃしのう。昔の文献でも漁ろうと思ったのじゃ」
ガサゴソと床に散らばる巻物を見て、盾岩はため息がてら話す。
「……片付けはしろよ」
「妾子供じゃないしー、しっかりするもーん」
「……ん?」
「お、どうした結よ」
怪訝な声を上げた結に紅葉が尋ねる。
「あ、いえ、なんかこの文献、昔私も読んだ記憶があって……」
「ぬ?どれだ」
盾岩が巨体を傾けながら、結が指さした巻物を覗き込む。
「ぬ、あぁなるほど。神主が見覚えあるのも頷ける。これは先代の三ツ谷神主が好んでよく読んでいた文献だからな」
「ほーう?どれどれ……」
紅葉が巻物を拾い上げるとその内容を読む。
人知れず産まれし神々の怨敵、『穢れ』
これなるが神を蝕まん刻
世に永遠なる夜が訪れん
されど世界は終わりを迎えず
武の神の極みに至りし者、顕現せし
彼の者、夜を終わらし
遂には、穢れを討ち滅ぼさん
「……永遠の夜……ですか…」
「む、兎角『穢れ』の勢力が広がった世界の事をそう記しているのではないか?」
「つまりなんじゃ?その『永遠の夜』とか言うやつになったら、都合の良いヒーローが現れるってことかの?」
「あのー…そもそも、『武の神の極みに至りし者』ってなんでしょう?」
結が話すと、盾岩が答えた。
「神主よ、我ら『武神』については知っているな?」
「え、えぇ。盾岩様のような神様方は『武神』と呼ばれる神の種族であり、戦に特化した力の強い神様で、各々が武器の名を冠していると聞きます」
「左様、それではその極みだが、端的に言おう。『全ての武神を束ねる王』のような存在の事だ」
「『全ての武神を束ねる王』……!?」
「左様、『武の神の極みに至りし者』、その領域に達したものを『極神』と呼んでいたらしい。だがおいそれと成れるものでは無い、そして我も未だに見たことすら無い上に、一ノ門の阿剣や二ヶ宮の槍丈、そして我ですらその資格は無い」
「資格…ですか…?」
「左様、いわば素質のようなものだ。その素質があるものはかつて2人いた」
「え!?ではその方をお頼りすれば……」
結がそう話すと、盾岩は重く首を振る。
「その一人は刃紗羅様……つまり紅葉の父に当たる神だ。知っているだろう。刃紗羅様は穢れた神の軍勢の前に立ちはだかり、紅葉を逃がしたのだ。行方不明とされているが……」
盾岩はそれ以上言葉を話さなかった。
重くなった空気をかき消すように、結は言葉を紡ぐ。
「あ、あの!刃紗羅様とは、その…お強かったのでしょうか!?」
結の言葉に盾岩が答える。
「あぁ、恐らく阿剣、槍丈、そして我の3人でかかっても恐らく勝てぬ。それほど強かった」
「何故そんなに?」
「ぬ、我ら武神は武器への信仰と畏怖から生まれる事が多い。当然神通力や力も冠した武器に近しいものになりやすい。そんな中、刃紗羅様が司ったモノは『刃』だ」
「『刃』……?」
「あぁ、『刃』だ。それはつまり刃物全てに対する信仰と畏怖が刃紗羅様の力なり得たのだ」
「……我が父ながら、とんでもない武神じゃったんじゃな……」
「あぁ……この国…いやこの世界の人類は石を刃物として使用していた時期もある。今も人の子らが使用している包丁などもあるだろう?」
「な、なるほど……幅が広いと言いますか…」
「簡単に説明すればその通りだ。それ故に、我らでは相手にならなかった」
「そ、そうなのですね……」
結が感心したように声を漏らすと、盾岩は思い出すように声を出した。
「……一人だけ、刃紗羅様と張り合えるヤツは居たがな……」
「え!?」
盾岩は続ける。
「言っただろう。『極神』になる素質のあるものは2人居たと」
そういうと盾岩は結に人差し指を立てながら問う。
「神主よ、この国で古来よりある武器はなんだ?」
「え、えーっと……あ、弓とか火縄銃でしょうか!?」
「ぬ、それも間違いでは無いが……もうひとつあるだろう。この国の人らが古来より使っているものが……」
首を傾げる結に向かって盾岩は言い放つ。
「『刀』だ」
「あぁ!『刀』ですか!……あれ?でも……」
結は指を顎に添えて、疑問を投げる。
「『刀の武神』様……って、いらっしゃいましたか?」
結の疑問に盾岩は顔を険しくして答える。
「……あぁ、かつてな。だが、その者は……強すぎたのだろうな」
珍しく神妙な顔をする盾岩は、とうとうと語り始めた。
かつて存在し、今も尚存在するかも知れなかった『刀の武神』の話を。
遥か昔、荒れ果てた地平より穢れた神が大軍をなして襲いかかってきた時があった。
当時は神社も存在したが、今よりも遥かに設備は弱く、武神自ら戦線に出る事もあった。
しかし、一度穢れに飲まれてしまえば武神とてどうなるかも分からない。神経質な程慎重に立ち回ってようやく戦える程だ。
故に、対処できるのは1柱に1体。だが、今回は大軍。とてもじゃないが太刀打ちできない。
………ただ1人を除いて。
その男は深い色をした瞳を持っていた。
その男は暇そうに欠伸をしていた。
その男は人に近い体をしていた。
『おい!刀谷!何をしている!早く別の神社に退避するぞ!』
通信用の陣から刃紗羅の声が響いてくる。あーあー、相変わらず真面目だねーホント。
『あのさぁ、こんだけの量いてさ、アンタら逃げれる訳?誰かが時間稼がないと行けないでしょうよ』
呑気な声とは裏腹に、目の前にはおぞましい程の穢れた神の大軍がこちらへと向かってくる。
『刀谷ッ!戻れ!穢れに飲まれるぞ!』
『ハッハッハッ!何言ってんのさ。知ってるだろう?それともわざとか?ハッハッハッ!』
刀谷と呼ばれた武神は豪快に笑いながら、深い深い瞳を開いて言葉を紡ぐ。
『オイラはどっちつかずさ。神でもあるし妖でもある。オイラが武神の使命に囚われないのも、オイラが普通の武神より強いのも、ソレのおかげって知ってるだろ?』
『それはそうだが今お前が出ては……』
『はーいはい。切るよー。もう目の前まで来てるしねー』
手元に出現させた刀で通信用の陣を貫く。陣は「ブツッ」と音を立てて崩れた。
『はぁ~やれやれ』
生み出した刀を肩にかけながら、刀谷はポツリとつぶやく。
『速く終わらせよう。雪華も待ってるし』
刀谷は一人、穢れた神の大軍へと向かって行った。
一方、退避の準備を続けていた神社では、刃紗羅が頭を抱えていた。
『刀谷……』
不安そうに阿剣が話しかける。
『どうされますか、刃紗羅様…刀谷様はたしかにお強い…ですが…』
阿剣の言葉に、刃紗羅は覚悟を決めた眼で答える。
『神守達は退避の準備を進めよ!随時北の神社へと引け!』
『我々はどうするんで?』
槍丈が訪ねると、刃紗羅は答える。
『……刀谷の覚悟を無駄には出来ん…』
刃紗羅は武神である自分たちは最後まで残り、ともかく拠点を移動する間、北上してくる穢れた神を迎え撃つという作戦を取った。
………しかし、最後の最後まで穢れた神は来なかった。
刃紗羅はほかの武神と、数人の神守を連れて通信が切れた場所へと向かう。
そこで目にした光景に、一同は絶句した。
無数の穢れた神の死体。そこらじゅうに刺さった刀。変形した地形。そして……
積み重なった神々の死体の上に。
刀谷は胡座をかいて座っていた。
『ん?おー?なんか久々なメンツだね』
刀谷はハッハッハッと笑うが、その顔には疲れが見えた。刀谷は胡座のまま、肘をついて話し始める。
『いやー流石に疲れたかなー……ハッハッハ…』
刀谷は、千を超える穢れた神をたった一人で全て迎え撃っていた。
「ひ、1人で!?」
「あぁ、規格外も良いところだ」
「ん?おい盾岩。じゃあそやつに連絡を取れば良いのではないか?」
紅葉の言葉に、首を横に振る盾岩。
「いや、今は行方は分からないが、妖に堕ちてしまったらしい」
「え??」
「……なるほどのう…」
結だけ話についていけていない事を察した盾岩が、丁寧に説明する。
「神主。元はこの世界には大きく分けて『神』と『妖』というふたつの種類の人外がいる。そして、稀にこのどっちの属性も持って産まれる者がいるのだ。それをどっちつかずと言う。このどっちつかずは、神通力も妖術も使えるが、いつかは神に昇華するか妖に堕ちるか選ぶ時が来る」
「な、なるほど……どっちつかず様は強いのですか?」
「まぁ神と妖の両側面を持つ存在だ。大体どっちつかずは強い……だが、あの方は強すぎたのだ。神としての力はあの刃紗羅様にも匹敵する『武神』、妖としての側面も「刀」に関連するものだ。はっきり言ってあの方が『極神』になると言っても何ら不思議ではないほど、強大だった」
盾岩がいった言葉に結が反応する。
「そんな方も、運命には逆らえないのですね……」
三ツ谷としての運命。少女が背負うものとしては重すぎる。
そんな結の顔を横目で見た紅葉は、わざとらしくジタバタと暴れだした。
「あーあー妾お腹すいたのじゃー!あ、結!なにか作ってくれ!ほれいくぞー!」
「え、えぇ!?ちょっと唐突ではありませんか!?」
服の裾を引っ張られ食堂へと消えていく2人、部屋を出ていく最後、紅葉は盾岩へ視線を飛ばした。
(片付け頼むんじゃー)
「………む」
……紅葉なりに気を使ったのだろうが、早速片付けを押し付けて来るとは。刃紗羅様とはえらく違う性格だ。
そんな事を考えながら、盾岩は床に散らばった巻物を片付けるのだった。
「うーむ……」
「どうしました?紅葉様」
そこを通りがかった結が声をかける。
「いや何、することも無くて暇じゃし、シューヤは妾じゃなくて仄を連れて行ってしまうし、妾最近扱い雑じゃない!?」
紅葉がむきーと巻物を振り回しながら話していると、そのへ盾岩が通りかかった。
「む、なんだ紅葉、書物に向かうとは珍しいな」
「何、シューヤもいなくて暇じゃしのう。昔の文献でも漁ろうと思ったのじゃ」
ガサゴソと床に散らばる巻物を見て、盾岩はため息がてら話す。
「……片付けはしろよ」
「妾子供じゃないしー、しっかりするもーん」
「……ん?」
「お、どうした結よ」
怪訝な声を上げた結に紅葉が尋ねる。
「あ、いえ、なんかこの文献、昔私も読んだ記憶があって……」
「ぬ?どれだ」
盾岩が巨体を傾けながら、結が指さした巻物を覗き込む。
「ぬ、あぁなるほど。神主が見覚えあるのも頷ける。これは先代の三ツ谷神主が好んでよく読んでいた文献だからな」
「ほーう?どれどれ……」
紅葉が巻物を拾い上げるとその内容を読む。
人知れず産まれし神々の怨敵、『穢れ』
これなるが神を蝕まん刻
世に永遠なる夜が訪れん
されど世界は終わりを迎えず
武の神の極みに至りし者、顕現せし
彼の者、夜を終わらし
遂には、穢れを討ち滅ぼさん
「……永遠の夜……ですか…」
「む、兎角『穢れ』の勢力が広がった世界の事をそう記しているのではないか?」
「つまりなんじゃ?その『永遠の夜』とか言うやつになったら、都合の良いヒーローが現れるってことかの?」
「あのー…そもそも、『武の神の極みに至りし者』ってなんでしょう?」
結が話すと、盾岩が答えた。
「神主よ、我ら『武神』については知っているな?」
「え、えぇ。盾岩様のような神様方は『武神』と呼ばれる神の種族であり、戦に特化した力の強い神様で、各々が武器の名を冠していると聞きます」
「左様、それではその極みだが、端的に言おう。『全ての武神を束ねる王』のような存在の事だ」
「『全ての武神を束ねる王』……!?」
「左様、『武の神の極みに至りし者』、その領域に達したものを『極神』と呼んでいたらしい。だがおいそれと成れるものでは無い、そして我も未だに見たことすら無い上に、一ノ門の阿剣や二ヶ宮の槍丈、そして我ですらその資格は無い」
「資格…ですか…?」
「左様、いわば素質のようなものだ。その素質があるものはかつて2人いた」
「え!?ではその方をお頼りすれば……」
結がそう話すと、盾岩は重く首を振る。
「その一人は刃紗羅様……つまり紅葉の父に当たる神だ。知っているだろう。刃紗羅様は穢れた神の軍勢の前に立ちはだかり、紅葉を逃がしたのだ。行方不明とされているが……」
盾岩はそれ以上言葉を話さなかった。
重くなった空気をかき消すように、結は言葉を紡ぐ。
「あ、あの!刃紗羅様とは、その…お強かったのでしょうか!?」
結の言葉に盾岩が答える。
「あぁ、恐らく阿剣、槍丈、そして我の3人でかかっても恐らく勝てぬ。それほど強かった」
「何故そんなに?」
「ぬ、我ら武神は武器への信仰と畏怖から生まれる事が多い。当然神通力や力も冠した武器に近しいものになりやすい。そんな中、刃紗羅様が司ったモノは『刃』だ」
「『刃』……?」
「あぁ、『刃』だ。それはつまり刃物全てに対する信仰と畏怖が刃紗羅様の力なり得たのだ」
「……我が父ながら、とんでもない武神じゃったんじゃな……」
「あぁ……この国…いやこの世界の人類は石を刃物として使用していた時期もある。今も人の子らが使用している包丁などもあるだろう?」
「な、なるほど……幅が広いと言いますか…」
「簡単に説明すればその通りだ。それ故に、我らでは相手にならなかった」
「そ、そうなのですね……」
結が感心したように声を漏らすと、盾岩は思い出すように声を出した。
「……一人だけ、刃紗羅様と張り合えるヤツは居たがな……」
「え!?」
盾岩は続ける。
「言っただろう。『極神』になる素質のあるものは2人居たと」
そういうと盾岩は結に人差し指を立てながら問う。
「神主よ、この国で古来よりある武器はなんだ?」
「え、えーっと……あ、弓とか火縄銃でしょうか!?」
「ぬ、それも間違いでは無いが……もうひとつあるだろう。この国の人らが古来より使っているものが……」
首を傾げる結に向かって盾岩は言い放つ。
「『刀』だ」
「あぁ!『刀』ですか!……あれ?でも……」
結は指を顎に添えて、疑問を投げる。
「『刀の武神』様……って、いらっしゃいましたか?」
結の疑問に盾岩は顔を険しくして答える。
「……あぁ、かつてな。だが、その者は……強すぎたのだろうな」
珍しく神妙な顔をする盾岩は、とうとうと語り始めた。
かつて存在し、今も尚存在するかも知れなかった『刀の武神』の話を。
遥か昔、荒れ果てた地平より穢れた神が大軍をなして襲いかかってきた時があった。
当時は神社も存在したが、今よりも遥かに設備は弱く、武神自ら戦線に出る事もあった。
しかし、一度穢れに飲まれてしまえば武神とてどうなるかも分からない。神経質な程慎重に立ち回ってようやく戦える程だ。
故に、対処できるのは1柱に1体。だが、今回は大軍。とてもじゃないが太刀打ちできない。
………ただ1人を除いて。
その男は深い色をした瞳を持っていた。
その男は暇そうに欠伸をしていた。
その男は人に近い体をしていた。
『おい!刀谷!何をしている!早く別の神社に退避するぞ!』
通信用の陣から刃紗羅の声が響いてくる。あーあー、相変わらず真面目だねーホント。
『あのさぁ、こんだけの量いてさ、アンタら逃げれる訳?誰かが時間稼がないと行けないでしょうよ』
呑気な声とは裏腹に、目の前にはおぞましい程の穢れた神の大軍がこちらへと向かってくる。
『刀谷ッ!戻れ!穢れに飲まれるぞ!』
『ハッハッハッ!何言ってんのさ。知ってるだろう?それともわざとか?ハッハッハッ!』
刀谷と呼ばれた武神は豪快に笑いながら、深い深い瞳を開いて言葉を紡ぐ。
『オイラはどっちつかずさ。神でもあるし妖でもある。オイラが武神の使命に囚われないのも、オイラが普通の武神より強いのも、ソレのおかげって知ってるだろ?』
『それはそうだが今お前が出ては……』
『はーいはい。切るよー。もう目の前まで来てるしねー』
手元に出現させた刀で通信用の陣を貫く。陣は「ブツッ」と音を立てて崩れた。
『はぁ~やれやれ』
生み出した刀を肩にかけながら、刀谷はポツリとつぶやく。
『速く終わらせよう。雪華も待ってるし』
刀谷は一人、穢れた神の大軍へと向かって行った。
一方、退避の準備を続けていた神社では、刃紗羅が頭を抱えていた。
『刀谷……』
不安そうに阿剣が話しかける。
『どうされますか、刃紗羅様…刀谷様はたしかにお強い…ですが…』
阿剣の言葉に、刃紗羅は覚悟を決めた眼で答える。
『神守達は退避の準備を進めよ!随時北の神社へと引け!』
『我々はどうするんで?』
槍丈が訪ねると、刃紗羅は答える。
『……刀谷の覚悟を無駄には出来ん…』
刃紗羅は武神である自分たちは最後まで残り、ともかく拠点を移動する間、北上してくる穢れた神を迎え撃つという作戦を取った。
………しかし、最後の最後まで穢れた神は来なかった。
刃紗羅はほかの武神と、数人の神守を連れて通信が切れた場所へと向かう。
そこで目にした光景に、一同は絶句した。
無数の穢れた神の死体。そこらじゅうに刺さった刀。変形した地形。そして……
積み重なった神々の死体の上に。
刀谷は胡座をかいて座っていた。
『ん?おー?なんか久々なメンツだね』
刀谷はハッハッハッと笑うが、その顔には疲れが見えた。刀谷は胡座のまま、肘をついて話し始める。
『いやー流石に疲れたかなー……ハッハッハ…』
刀谷は、千を超える穢れた神をたった一人で全て迎え撃っていた。
「ひ、1人で!?」
「あぁ、規格外も良いところだ」
「ん?おい盾岩。じゃあそやつに連絡を取れば良いのではないか?」
紅葉の言葉に、首を横に振る盾岩。
「いや、今は行方は分からないが、妖に堕ちてしまったらしい」
「え??」
「……なるほどのう…」
結だけ話についていけていない事を察した盾岩が、丁寧に説明する。
「神主。元はこの世界には大きく分けて『神』と『妖』というふたつの種類の人外がいる。そして、稀にこのどっちの属性も持って産まれる者がいるのだ。それをどっちつかずと言う。このどっちつかずは、神通力も妖術も使えるが、いつかは神に昇華するか妖に堕ちるか選ぶ時が来る」
「な、なるほど……どっちつかず様は強いのですか?」
「まぁ神と妖の両側面を持つ存在だ。大体どっちつかずは強い……だが、あの方は強すぎたのだ。神としての力はあの刃紗羅様にも匹敵する『武神』、妖としての側面も「刀」に関連するものだ。はっきり言ってあの方が『極神』になると言っても何ら不思議ではないほど、強大だった」
盾岩がいった言葉に結が反応する。
「そんな方も、運命には逆らえないのですね……」
三ツ谷としての運命。少女が背負うものとしては重すぎる。
そんな結の顔を横目で見た紅葉は、わざとらしくジタバタと暴れだした。
「あーあー妾お腹すいたのじゃー!あ、結!なにか作ってくれ!ほれいくぞー!」
「え、えぇ!?ちょっと唐突ではありませんか!?」
服の裾を引っ張られ食堂へと消えていく2人、部屋を出ていく最後、紅葉は盾岩へ視線を飛ばした。
(片付け頼むんじゃー)
「………む」
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そんな事を考えながら、盾岩は床に散らばった巻物を片付けるのだった。
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