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無神機関編
33話
御影が自分の装備を見つけてくるまで、自室で大人しくしていた止水総括は、床下から謎の揺れを感じる。
「……なんかぶつかりあってるのか?…」
その床下、両手を広げ亜空間から巨大な腕を召喚する真陽と、それらを斬ったり凍らせたりして対抗する雹の姿があった。
「……そんなのでも六武衆…か、見たことない異能力だ」
雹がそう言うと、真陽が無表情のまま答える。
「しぶといですね。まぁ谷透様の御手を穢した罪は万死に値します。許すつもりはサラサラございません」
雹は次々召喚される腕を対処していたが、一方的な攻撃に為す術なく、遂に腕によって腹部を抑え込まれるように壁に叩きつけられる。
「ゲハッ!……」
肺の空気を押し出し、そのままズルズルと床に重心が向かっていく。
「……なんだよ、その力…」
真陽はカツカツと足音を鳴らしながら近づいて行く。
「そうですね。冥土の土産に聞かせてあげましょう」
真陽がクイッと手をあげると、亜空間の穴が出現する。
「私の力は異能力ではありません。元々の特異体質のようなもの。私は私と対になっている存在が殺めた命をそのまま術式に組み込み転換できます。つまり、『対』なる存在が命を奪えば奪う程、私は限りなく術式を発動できます。私の力をよく知るものはこう呼んでました……『死者の園』と』
『死者の園』
真陽の家の血縁者に受け継がれる特異体質。対のような存在と力を共有し、対が命を奪えばその命を力の源として扱える。
真陽の対とは当然御影の事であるが、さてここでひとつ思い出して欲しい。
彼女らの一家を惨殺したのは、御影では無かったか。
暗い廊下、止水の装備を探して研究室を探している御影。足元には死体が4つ。
「……やれやれ、研究室ってのはどこにあるんですか」
場面は戻って雹と真陽の階層へ。
雹は壁によっかかったまま、抜刀すら出来なくなっていた。左手に巻き付けた包帯も全て取れる……
その手は、青黒く変色していた。
「……その手…」
真陽が若干たじろぎながら問うと、雹は左手を胸の前に持ち上げて話す。
「……驚いたか六武衆?これは私がまだ幼かった頃、あの方に助けられ、強くなろうと努力した成果さ。結果じゃない、成果だ。異能力『冷気精製』、左手から冷気が絶えず精製される能力だ。これを幼い時の私は扱えなかった。ある時、能力そのものが暴発した。この色を見ろ。まぁもうわかると思うが、私の左手は壊死してる」
雹が絶えずさすっていた左手はとうの昔に壊死していた。
「だが何故腐り落ちてないのだと思う?私の能力さ。私は私の腕を冷凍保存のような状態で保っている」
そのままでは腐り落ちる自身の左手を、冷凍保存しながら彼女は生きていた。狂気の沙汰である。
「だが、そう悪くない。今日はあの方に会えた。だから私はあの人の隣を目指す。こんな組織、もはやどうでも良い」
「……残念ですが、谷透様の隣は私と決まっているのです。それに初夜だってもう……」
両手を頬に当ててそれっぽくしているが、真陽が思い出しているのは、一方的に谷透を襲った、夜這い未遂である。
その事に対して、雹は一言。
「死ね。ただ死ね」
刀に異能力を流したのか、雹の刀が青白く輝く。大気の水蒸気を凍らせているのか、刀からは水滴が垂れ落ちている。
対して、真陽は亜空間を転換する。
「その言葉、そのままお返しします」
両者2度目の激突だった。
一方、そんな彼女達の心を掴んで話さない愛しの彼、谷透 修哉は……
「……研究室?」
谷透は、研究室にたどり着いていた。
………無言でそっと扉を開くと、そこにはパイナップルのように髪の毛を束ねた白衣の男が多数の研究員に指示を出していた。
「………なんだこのパイナポーヘッド」
「いきなり何だね!!私には斑目という名前があるのだよ!あの直属と同じようなことを言う貴様は何者なんだ!!」
「侵入者の谷透 修哉だ宜しくね。って訳で……」
谷透は目の前に配置されていた、多数のチューブに接続された少女を見て、頭に仄がよぎる。
「……テメェら全員半殺し」
「何だねいきなりヴァっ!?」
1人も逃がさず、殺さない程度に痛めつけられた研究員たちは全員正座で座らせられていた。
谷透は管に繋がれた少女をさして斑目に問う。
「これは何だ」
「そ、それは『シント』と言う検体で、そいつの血を抽出し、弾丸に込めることで神を殺せる弾丸を作成していた……」
(弾丸……あぁ、これが問題の弾丸か、なら…)
谷透は封神剣でチューブのようなものを全て切り崩し、磔のような状態になっていた少女は、そのまま前へ倒れるように解放される。
「おっとぉ…」
谷透はそっと『シント』と呼ばれた少女を抱き寄せる。白く、純な輝きを放つ少女はゆっくりとその瞳を開いた。この世のものとは思えないほど美しい瞳。光の角度によって、瞳はその色を輝きを変える。
「………」
「お、気がついたか?」
少女はゆっくりと顔を動かし、谷透の顔を捉える。
「貴方、誰なの?」
見た目の割にはかなり大人の女性のような色っぽい声だった。
「……谷透だ。お前、ここに繋がれてたんだぜ」
「……助けてくれたの?」
「あ?……あー…、一応そうなる…のか?」
「そっか」
谷透の注意が少女に向いている時、パイナポーヘッドこと斑目は目の前の光景を疑っていた。
(バカな…あの検体は仮死状態だと第一補佐は言っていたはず……二度と目が覚めぬからと……まさか…私は騙されていたのか……?)
前提としてあった条件が脳裏で崩れていく。なぜ、第一補佐は嘘をついていたのか。ここまで疑いのヒビが入ってしまえば、あとは賢い斑目のことだ。自ずと答えに辿り着く。
「私は……だ、騙されていたのか……いや!しかし総括は何も言っていないとッッ!!」
叫んだ斑目のすぐ後ろで、死体から発せられたような声が響く。
「その総括、第一補佐とかいうやつに監禁されてるんですが?」
「ッッ!?!?」
振り返ると、そこには黒い和服に死人のような顔をした男が立っていた。
「お、御影、無事だったか」
「貴方も無事だったんですか……あれ、姉さんの姿が見当たらないんですが?」
「あ~…ちょいとそれは後で話す」
谷透と御影が会話をしている間、斑目は音を超える速度で思考を回していた。彼は変人であるが、頭は良いのだ。
「僕はその総括の装備がここにあるって聞いたんですが。谷透さんは見ませんでしたか?」
「いや、俺もついさっきここに来たばっかりでな」
「……その割にはその子、随分懐いているように見えるんですが」
「おい、お前たち……」
御影と谷透が話していると、斑目がなにか箱のようなものを持って来る。
「これは…第一補佐が総括はもう要らないと言っていた、そう言って私に渡してきた物だ。お前たちの言い方だと、この組織は組織として成り立っていない」
箱を御影に強引に渡すと、斑目はその場にいた研究員達に対して、叫ぶ。
「諸君っ!研究はこれより廃棄っ!これより我々は訳あって寝返るッ!!これより敵は……」
斑目は拳を握る。
「これより、敵は……『シダマ第一補佐』だ!」
「おぉっと…急展開」
「……ま、騙されていたの知れば、だいたいこんなもんだと思うんですが」
流れが、変わり始めた。
「……なんかぶつかりあってるのか?…」
その床下、両手を広げ亜空間から巨大な腕を召喚する真陽と、それらを斬ったり凍らせたりして対抗する雹の姿があった。
「……そんなのでも六武衆…か、見たことない異能力だ」
雹がそう言うと、真陽が無表情のまま答える。
「しぶといですね。まぁ谷透様の御手を穢した罪は万死に値します。許すつもりはサラサラございません」
雹は次々召喚される腕を対処していたが、一方的な攻撃に為す術なく、遂に腕によって腹部を抑え込まれるように壁に叩きつけられる。
「ゲハッ!……」
肺の空気を押し出し、そのままズルズルと床に重心が向かっていく。
「……なんだよ、その力…」
真陽はカツカツと足音を鳴らしながら近づいて行く。
「そうですね。冥土の土産に聞かせてあげましょう」
真陽がクイッと手をあげると、亜空間の穴が出現する。
「私の力は異能力ではありません。元々の特異体質のようなもの。私は私と対になっている存在が殺めた命をそのまま術式に組み込み転換できます。つまり、『対』なる存在が命を奪えば奪う程、私は限りなく術式を発動できます。私の力をよく知るものはこう呼んでました……『死者の園』と』
『死者の園』
真陽の家の血縁者に受け継がれる特異体質。対のような存在と力を共有し、対が命を奪えばその命を力の源として扱える。
真陽の対とは当然御影の事であるが、さてここでひとつ思い出して欲しい。
彼女らの一家を惨殺したのは、御影では無かったか。
暗い廊下、止水の装備を探して研究室を探している御影。足元には死体が4つ。
「……やれやれ、研究室ってのはどこにあるんですか」
場面は戻って雹と真陽の階層へ。
雹は壁によっかかったまま、抜刀すら出来なくなっていた。左手に巻き付けた包帯も全て取れる……
その手は、青黒く変色していた。
「……その手…」
真陽が若干たじろぎながら問うと、雹は左手を胸の前に持ち上げて話す。
「……驚いたか六武衆?これは私がまだ幼かった頃、あの方に助けられ、強くなろうと努力した成果さ。結果じゃない、成果だ。異能力『冷気精製』、左手から冷気が絶えず精製される能力だ。これを幼い時の私は扱えなかった。ある時、能力そのものが暴発した。この色を見ろ。まぁもうわかると思うが、私の左手は壊死してる」
雹が絶えずさすっていた左手はとうの昔に壊死していた。
「だが何故腐り落ちてないのだと思う?私の能力さ。私は私の腕を冷凍保存のような状態で保っている」
そのままでは腐り落ちる自身の左手を、冷凍保存しながら彼女は生きていた。狂気の沙汰である。
「だが、そう悪くない。今日はあの方に会えた。だから私はあの人の隣を目指す。こんな組織、もはやどうでも良い」
「……残念ですが、谷透様の隣は私と決まっているのです。それに初夜だってもう……」
両手を頬に当ててそれっぽくしているが、真陽が思い出しているのは、一方的に谷透を襲った、夜這い未遂である。
その事に対して、雹は一言。
「死ね。ただ死ね」
刀に異能力を流したのか、雹の刀が青白く輝く。大気の水蒸気を凍らせているのか、刀からは水滴が垂れ落ちている。
対して、真陽は亜空間を転換する。
「その言葉、そのままお返しします」
両者2度目の激突だった。
一方、そんな彼女達の心を掴んで話さない愛しの彼、谷透 修哉は……
「……研究室?」
谷透は、研究室にたどり着いていた。
………無言でそっと扉を開くと、そこにはパイナップルのように髪の毛を束ねた白衣の男が多数の研究員に指示を出していた。
「………なんだこのパイナポーヘッド」
「いきなり何だね!!私には斑目という名前があるのだよ!あの直属と同じようなことを言う貴様は何者なんだ!!」
「侵入者の谷透 修哉だ宜しくね。って訳で……」
谷透は目の前に配置されていた、多数のチューブに接続された少女を見て、頭に仄がよぎる。
「……テメェら全員半殺し」
「何だねいきなりヴァっ!?」
1人も逃がさず、殺さない程度に痛めつけられた研究員たちは全員正座で座らせられていた。
谷透は管に繋がれた少女をさして斑目に問う。
「これは何だ」
「そ、それは『シント』と言う検体で、そいつの血を抽出し、弾丸に込めることで神を殺せる弾丸を作成していた……」
(弾丸……あぁ、これが問題の弾丸か、なら…)
谷透は封神剣でチューブのようなものを全て切り崩し、磔のような状態になっていた少女は、そのまま前へ倒れるように解放される。
「おっとぉ…」
谷透はそっと『シント』と呼ばれた少女を抱き寄せる。白く、純な輝きを放つ少女はゆっくりとその瞳を開いた。この世のものとは思えないほど美しい瞳。光の角度によって、瞳はその色を輝きを変える。
「………」
「お、気がついたか?」
少女はゆっくりと顔を動かし、谷透の顔を捉える。
「貴方、誰なの?」
見た目の割にはかなり大人の女性のような色っぽい声だった。
「……谷透だ。お前、ここに繋がれてたんだぜ」
「……助けてくれたの?」
「あ?……あー…、一応そうなる…のか?」
「そっか」
谷透の注意が少女に向いている時、パイナポーヘッドこと斑目は目の前の光景を疑っていた。
(バカな…あの検体は仮死状態だと第一補佐は言っていたはず……二度と目が覚めぬからと……まさか…私は騙されていたのか……?)
前提としてあった条件が脳裏で崩れていく。なぜ、第一補佐は嘘をついていたのか。ここまで疑いのヒビが入ってしまえば、あとは賢い斑目のことだ。自ずと答えに辿り着く。
「私は……だ、騙されていたのか……いや!しかし総括は何も言っていないとッッ!!」
叫んだ斑目のすぐ後ろで、死体から発せられたような声が響く。
「その総括、第一補佐とかいうやつに監禁されてるんですが?」
「ッッ!?!?」
振り返ると、そこには黒い和服に死人のような顔をした男が立っていた。
「お、御影、無事だったか」
「貴方も無事だったんですか……あれ、姉さんの姿が見当たらないんですが?」
「あ~…ちょいとそれは後で話す」
谷透と御影が会話をしている間、斑目は音を超える速度で思考を回していた。彼は変人であるが、頭は良いのだ。
「僕はその総括の装備がここにあるって聞いたんですが。谷透さんは見ませんでしたか?」
「いや、俺もついさっきここに来たばっかりでな」
「……その割にはその子、随分懐いているように見えるんですが」
「おい、お前たち……」
御影と谷透が話していると、斑目がなにか箱のようなものを持って来る。
「これは…第一補佐が総括はもう要らないと言っていた、そう言って私に渡してきた物だ。お前たちの言い方だと、この組織は組織として成り立っていない」
箱を御影に強引に渡すと、斑目はその場にいた研究員達に対して、叫ぶ。
「諸君っ!研究はこれより廃棄っ!これより我々は訳あって寝返るッ!!これより敵は……」
斑目は拳を握る。
「これより、敵は……『シダマ第一補佐』だ!」
「おぉっと…急展開」
「……ま、騙されていたの知れば、だいたいこんなもんだと思うんですが」
流れが、変わり始めた。
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