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無神機関・決戦編
38話
「ん~、いやぁさ。うん、予想通りなんだけどさ……」
ボロ衣を纏った神人、ゼシは首裏に手を当てて半分呆れながら周囲を見渡す。
「こんだけいてさ。全滅ってさ……弱すぎだろ~?」
ゼシの周りには、武装そのものを砕かれた無神機関構成員、六武衆の姉弟、そして雹と蒼糸が横たわっていた。
立っているのはヒミコと止水、そして斑目と有山だ。斑目や有山は非戦闘職、ヒミコは未知数だが、戦えるのは止水しかいない。
その止水も、ボロボロだった。
「……これが、『穢れ』…か?」
斑目がポツリと呟くと、ゼシがニタリと笑って答える。
「そうだね。『穢れ』これはさ、なんでなくならないんだと思う?それこそ、神社勢力が揃ってここまで殲滅してんのにだよ?」
ゼシは両手でやれやれとポーズをとり、ベロを出して気だるげに答えた。
「『欲』だよ」
「……『欲』……?」
「まぁー君ら無神機関の連中に言っても大して理解しないと思うけどさ。オマエ達が『神』として祭り上げてる存在、そいつらがよ、なんで邪悪な、非道な『欲』を抱かないとか思ってたりする?」
ゼシはニィ……と口元を歪ませると続ける。
「『穢れ』ってのはさ『欲』なんだよ。神たちが抱いた邪悪な欲だ。それに飲まれちまえばもうおしまい。『穢れ』が神を飲み込んで、欲望のままに立ち振る舞うのさ。ハハっ…つまり、神がいる限り、穢れはなくならんよ?」
『穢れ』、それは神達が抱く『欲望』そのものだった。それも邪悪で非道な大罪的欲望の塊だった。
「とはいえ耐性があるやつもいるし、穢れをものともしない神もいるしで万能じゃねーんだよな。ま、それでもオマエラ殺すのは容易いけどね」
ゼシは話終わると、止水の前に高速移動し手のひらを掲げると、どろりとした波動が止水を襲う。
「ガッッ!?」
止水もゼシの前に倒れる。
「ハハっ、欲望ってのはすごいね。負のエネルギーってのはそれだけで強力な力になる。ハハっ、最高だね」
カクンッと首を落とすような姿勢で笑うゼシ。
「やれやれ、こんだけ手応え無いんじゃあ、こりゃかけておいた保険も意味がな……」
瞬間、ゼシは感じた。
まるで何重も何重も連なった力が1箇所に集まって行くような力の圧を。
「………へぇ…」
ゼシは遠目で笑う。力を放っているのは、最初に潰したフードの男だった。
時間は少しだけ巻きもどる。
谷透は封神剣に触れた瞬間。生きているのかを忘れていた。
流れ込んでくる。全て。幾星霜にも封じられた。敗北の記憶。
斬られた刺された殴られた貫かれた叩かれた抉られた溺れた焼かれた裂かれた撃たれた潰された落とされた叩きつけられた圧された
何度も
何度も何度も
死んで、死んで。
死んで死んで死んで。
死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで
死んだ。
記憶の中に流れ込んでくる。無数の死に様。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!」
意識が持ってかれる。振り切れる。
《耐えろ!そして堪えろ!意識を保て!なんでも良い!自分を繋ぎ止めろッ!》
目は霞む。激痛じゃない。そもそも外傷は負ってない。しかし頭に直接流し込まれる死因の数々。錯覚する。自らが死んだのかと。
武神が何かを叫んでいるが、もう聞こえ無い。封神剣から手が離れたら、それでおしまい。だが、意識すら危うい。
何か……何か何か何かっ!!
ふっと目をあげた。
なだれ込んでくる敗北の記憶、それに耐えながら、視線に映りこんだ。ほんの僅かな物体。
首から下げた、蒼い石が視線に止まる。
『……妖刀使いってさ、2種類いるんだよ』
『お前言ってたよな、家族が目の前で殺されるのを見たことがあるのかって』
『……俺達もさ、殺されてるんだ』
『もう、妖も妖刀使いも…誰も殺さないこと』
あるじゃないか。今までの記憶に。
封神剣を握る手に、自分でも驚く程の力が入る。
アイツと対峙した時と比べてどうだ?全く、どうって事は無い。あの状態のアイツとまた戦う方がまっぴらだ。
「…………ハッ!」
口角が上がり、乾いた笑いが漏れる。
「………あぁ、わかってる」
谷透の目に力がみなぎる。
「『約束』だ」
そして、そして。
ふと、頭に流れ込む濁流が止まった。
「………終わっ…た?」
目の前で腕を組んでいた武神の残留思念は大いに笑う。
《クハハッッ!見事!汝は試練を乗り越えた!汝はこれより、封神剣の真の使い手となる。使い方は、汝の記憶が教えてくれるだろう》
「……そうか……」
《さァ、戻れ。汝にはやるべき事があるのだろう?》
「……あぁ…」
周りを見ると、果てた刀剣は鈍色の煌びやかな輝きを取り戻し、天へと登るようへ次々と宙へ浮いていく。
「………」
谷透は封神剣を掲げて、武神に話しかける。
「なぁ、ずっと気になってたんだが、アンタ元々武神ってことは名前あったんだろ?最後に教えてくれ。なんて言うんだ?」
《ふぅむ……成程、よかろう我が名は____》
時間は戻り、谷透は目を覚ます。
「………ちっ、毎回毎回都合いい時に元の場所に戻しやがって」
立ち上がる。封神剣を引き抜く。
感じる、以前とは比べものにならない力の流れを。
「………」
谷透は封神剣の漆黒の刀身に触れ、言葉を放つ。
「『封神剣』……解放ッ!!」
封神剣の透き通るような漆黒の刀身は、谷透の言葉に応じるように、根元から輝き始める。
白金の輝きが、封神剣の根元から切っ先に向けて、徐々に広がっていく。
これが『封神剣』の本来の力
溢れんばかりの輝きを放つ封神剣を携え、谷透はゼシの前へと立ち塞がる。
「……よう……待たせたな」
「………へぇ……まさか『神代遺物』を、それも、よりにもよって『封神剣』を解放したか。人間業じゃないね」
どす黒く、どろりとしたオーラ…『穢れ』を纏うゼシ
白金に輝く、本来の力を取り戻した『封神剣』を携えた谷透
対峙する2人に、もはや言葉は要らなかった。
ボロ衣を纏った神人、ゼシは首裏に手を当てて半分呆れながら周囲を見渡す。
「こんだけいてさ。全滅ってさ……弱すぎだろ~?」
ゼシの周りには、武装そのものを砕かれた無神機関構成員、六武衆の姉弟、そして雹と蒼糸が横たわっていた。
立っているのはヒミコと止水、そして斑目と有山だ。斑目や有山は非戦闘職、ヒミコは未知数だが、戦えるのは止水しかいない。
その止水も、ボロボロだった。
「……これが、『穢れ』…か?」
斑目がポツリと呟くと、ゼシがニタリと笑って答える。
「そうだね。『穢れ』これはさ、なんでなくならないんだと思う?それこそ、神社勢力が揃ってここまで殲滅してんのにだよ?」
ゼシは両手でやれやれとポーズをとり、ベロを出して気だるげに答えた。
「『欲』だよ」
「……『欲』……?」
「まぁー君ら無神機関の連中に言っても大して理解しないと思うけどさ。オマエ達が『神』として祭り上げてる存在、そいつらがよ、なんで邪悪な、非道な『欲』を抱かないとか思ってたりする?」
ゼシはニィ……と口元を歪ませると続ける。
「『穢れ』ってのはさ『欲』なんだよ。神たちが抱いた邪悪な欲だ。それに飲まれちまえばもうおしまい。『穢れ』が神を飲み込んで、欲望のままに立ち振る舞うのさ。ハハっ…つまり、神がいる限り、穢れはなくならんよ?」
『穢れ』、それは神達が抱く『欲望』そのものだった。それも邪悪で非道な大罪的欲望の塊だった。
「とはいえ耐性があるやつもいるし、穢れをものともしない神もいるしで万能じゃねーんだよな。ま、それでもオマエラ殺すのは容易いけどね」
ゼシは話終わると、止水の前に高速移動し手のひらを掲げると、どろりとした波動が止水を襲う。
「ガッッ!?」
止水もゼシの前に倒れる。
「ハハっ、欲望ってのはすごいね。負のエネルギーってのはそれだけで強力な力になる。ハハっ、最高だね」
カクンッと首を落とすような姿勢で笑うゼシ。
「やれやれ、こんだけ手応え無いんじゃあ、こりゃかけておいた保険も意味がな……」
瞬間、ゼシは感じた。
まるで何重も何重も連なった力が1箇所に集まって行くような力の圧を。
「………へぇ…」
ゼシは遠目で笑う。力を放っているのは、最初に潰したフードの男だった。
時間は少しだけ巻きもどる。
谷透は封神剣に触れた瞬間。生きているのかを忘れていた。
流れ込んでくる。全て。幾星霜にも封じられた。敗北の記憶。
斬られた刺された殴られた貫かれた叩かれた抉られた溺れた焼かれた裂かれた撃たれた潰された落とされた叩きつけられた圧された
何度も
何度も何度も
死んで、死んで。
死んで死んで死んで。
死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで
死んだ。
記憶の中に流れ込んでくる。無数の死に様。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!」
意識が持ってかれる。振り切れる。
《耐えろ!そして堪えろ!意識を保て!なんでも良い!自分を繋ぎ止めろッ!》
目は霞む。激痛じゃない。そもそも外傷は負ってない。しかし頭に直接流し込まれる死因の数々。錯覚する。自らが死んだのかと。
武神が何かを叫んでいるが、もう聞こえ無い。封神剣から手が離れたら、それでおしまい。だが、意識すら危うい。
何か……何か何か何かっ!!
ふっと目をあげた。
なだれ込んでくる敗北の記憶、それに耐えながら、視線に映りこんだ。ほんの僅かな物体。
首から下げた、蒼い石が視線に止まる。
『……妖刀使いってさ、2種類いるんだよ』
『お前言ってたよな、家族が目の前で殺されるのを見たことがあるのかって』
『……俺達もさ、殺されてるんだ』
『もう、妖も妖刀使いも…誰も殺さないこと』
あるじゃないか。今までの記憶に。
封神剣を握る手に、自分でも驚く程の力が入る。
アイツと対峙した時と比べてどうだ?全く、どうって事は無い。あの状態のアイツとまた戦う方がまっぴらだ。
「…………ハッ!」
口角が上がり、乾いた笑いが漏れる。
「………あぁ、わかってる」
谷透の目に力がみなぎる。
「『約束』だ」
そして、そして。
ふと、頭に流れ込む濁流が止まった。
「………終わっ…た?」
目の前で腕を組んでいた武神の残留思念は大いに笑う。
《クハハッッ!見事!汝は試練を乗り越えた!汝はこれより、封神剣の真の使い手となる。使い方は、汝の記憶が教えてくれるだろう》
「……そうか……」
《さァ、戻れ。汝にはやるべき事があるのだろう?》
「……あぁ…」
周りを見ると、果てた刀剣は鈍色の煌びやかな輝きを取り戻し、天へと登るようへ次々と宙へ浮いていく。
「………」
谷透は封神剣を掲げて、武神に話しかける。
「なぁ、ずっと気になってたんだが、アンタ元々武神ってことは名前あったんだろ?最後に教えてくれ。なんて言うんだ?」
《ふぅむ……成程、よかろう我が名は____》
時間は戻り、谷透は目を覚ます。
「………ちっ、毎回毎回都合いい時に元の場所に戻しやがって」
立ち上がる。封神剣を引き抜く。
感じる、以前とは比べものにならない力の流れを。
「………」
谷透は封神剣の漆黒の刀身に触れ、言葉を放つ。
「『封神剣』……解放ッ!!」
封神剣の透き通るような漆黒の刀身は、谷透の言葉に応じるように、根元から輝き始める。
白金の輝きが、封神剣の根元から切っ先に向けて、徐々に広がっていく。
これが『封神剣』の本来の力
溢れんばかりの輝きを放つ封神剣を携え、谷透はゼシの前へと立ち塞がる。
「……よう……待たせたな」
「………へぇ……まさか『神代遺物』を、それも、よりにもよって『封神剣』を解放したか。人間業じゃないね」
どす黒く、どろりとしたオーラ…『穢れ』を纏うゼシ
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