神様の仰せのままに

幽零

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崩壊編

45話

「いやぁ……なんつーかこう……感慨深い…って言うのか?」

谷透は数日しか空けていなかったはずの三ツ谷神社を見て、そうもらした。

……背中に仄を、右腕に雹を抱えながら。


「雹…もう離れてくれ…」

「………やだ……さむっ…」

「むぎゅー」

「仄……首、首締まるから…っ」

上空にはワイヤーをピンと張って、その上に蒼糸がたっていた。

「いやぁー谷透さん大人気って感じぃ」

「はぁ…まぁなんでも良いが……この歳になるも長期遠征も堪えるな…」

「研究ばかりしているからでは無いのか斑目」

「そういうお前も息が上がっているぞ有山」



三ツ谷を出てった時は仄と2人だったのに、気がついたら十数人引き連れてんだから、そりゃーもう驚かれる。

……誰に?三ツ谷の面々に。



「シューヤ!これは一体どういう…」

「紅葉…お前は一ノ門から連絡が来ていただろう……ともあれ、帰ったか、谷透、仄。ご苦労だったな」

「紅葉様…盾岩様は私と神主…そして紅葉様にこの事を言っていたと思いますが…」

「へ?なんだとぉーう??」


風切、盾岩は連絡が来ていたようだが、それ以外の三ツ谷の神守と巫女は何処か落ち着かない様子だった。


「ともあれ、長旅ご苦労だった。谷透、仄。ひとまずは休むと良い………なるべく早く食堂に行ってやれ。また結が1人で十数人分食事を用意している……」

「おーおー、神主様は相変わらずだなぁ?」

谷透は皮肉めいた言葉を発するが、その顔は素直に助かるという表情だった。





谷透と無神機関(私兵団)がゾロゾロと食堂へと入っていく中、風切はその背中を見て、ため息をつく。




「あの野蛮人…向こうでもだったみたいだが……随分と差がついたな」

風切はハッとすると、思考を掻き消すように首を左右に振った。










食堂では、三ツ谷の現神主である結が神主の装束ではなく、白衣にエプロン、髪を縛り上げて、しゃもじ片手に奔走していた。

「たくさん食べて下さいねー!」

「か、神主ッ!私めがやります!神主はお休みください!」

「お代わりですか?はいどうぞー!」

「神主ィィィッッ!!」


谷透と仄、雹に蒼糸に有山、斑目…その他構成員の生き残り数十名。全員が食卓につき、茶碗片手にワイのワイの。それら全てに対応しようとする結にそれを必死で止めようとする巫女と神守。


元々彼女……三ツ谷 結は、父親の跡を継いで神主になった少女である。彼女にとって、誰かの上に立つのでは無く、誰かと並んで立ち、皆を助けるような立場が肌にあっているようだ。


「みなさーん!たくさん食べて下さいねー!!!」


神主をしているより、1人の女給として動いてる結は、いつもより生き生きとしていた。





夜も更け、谷透は部屋へと向かった。

ここに着いてから一ノ門に行ったり、二ヶ宮に行ったりと、忙しなかったので、三ツ谷に腰を下ろすのは、結構新鮮だったりする。


盾岩が色々と手を回してくれていたようで、谷透の部屋を空けておいてくれたようだ。



扉を閉めて、封神剣を腰から外して立てかける。フードを脱ぎインナーになると、横になった。


……この剣を持ってから、色々振り回されている気がする。そもそもあの神(?)みたいなやつの名前も聞く前にこちらに戻されてしまった。


「まだ謎は多いが、とりあえず寝るか……やれやれ……」 


布団に横になる。


いやー、本当に疲れた。




むにゅ。





……………………………………あ?




布団をめくる。そこには……



「んぁ?あー、谷透さーん」

「…………」


谷透は大いに戸惑う。仄がここに居ることでは無い。「何故いる?」より「居てくれた」という感情が先に出た事に対してだ。


「あー…まーその…なんだ」

谷透は少々唸ったあと…


「寝るか」

「はいー」


これが普通になった。なってしまった。彼は良い事なのか悪い事判断がつかない。

だが……あえて別の視点で見るとして、布団の中で、仄からでは無く谷透が仄を抱き寄せていた事実があるとして。

それはきっと、第三者から見れば良い事なのだろう。





少し時間は戻って、夕暮れの二ヶ宮神社は谷透と無神機関がいなくなり、静けさを取り戻していた。


「ふむ…」


そんな中、破狩は腰に下げた刀の調子を確かめながら、神社の外へと向かう。それを満が呼び止めた。

「あれ?破狩さん?こんな時間に何処へ?」

破狩は振り返ると、笑顔で答えた。

「あぁ、満さん。また一ノ門に呼ばれていましてね…これから向かう所です」

「え……しかし、今から行ったら着くのは夜中なのでは……」

「……まぁ、仕方が無いでしょう。満さん」

「はい、何でしょうか」

「私が居なくなっても、二ヶ宮神社を頼みますよ」

「……?はい、勿論です」

言い残すと、夕暮れに消えていくように破狩は一ノ門へと向かっていった。





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