神様の仰せのままに

幽零

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崩壊編

46話

ドクンッ……ドクンッ……


一ノ門の地下では、穢れの力を持ってして世界に挑んだ神の模造品の心臓が未だそれのみで脈をうっていた。


そこには、一ノ門の序列上位に位置する神守2人が核のみになったそれを守っている。


「いやぁ……それにしても…」

「あぁ……」

ゴクリ…と喉を鳴らしたのはどちらか。気圧される……ただのビー玉のようなものにだ。

「ここまで、脈みたいなものを感じるな」

「……うむ…」


……コツン……コツン……


足音が聞こえる。








日はまだ跨いでいないぐらいの時間、深夜と言うにはまだ早く、夜と言うには遅い時間に破狩は一ノ門大社にいた。二ヶ宮といっても、元六武衆である破狩は、一ノ門でもそこそこ顔が知られている。こんな時間でも特に怪しまれる事はない。


「執務室」と書かれた部屋をノックする。すると中から、美しい声が聞こえてくる。

「おや?どなたでしょうか」

「夜分遅くに失礼します。破狩です。神社の今後についてお話ししたく参りました」

少しして、ガチャリと扉が開く。そこには、昼間の姿となんら変わりなく将校のような服を着ている白獅子が現れた。

「破狩さんの方から私を訪問とは、珍しいですね」

「えぇ。実は、白獅子様とお話しするべき事かと思いまして。谷透さん達の事です」

「……成程、確かに大事な話かも知れませんね」


ばさりと白い外套を羽織ろうとして、そのまま椅子に掛けたあと、白獅子は破狩より前へと歩き出す。


「少し冷えますが、外で話しましょう。今夜は月が綺麗なようですから」

「えぇ」




莫大で広大な土地を持つ一ノ門は、山一つ切り開いて建てられたという伝説がある。そんな中、外が見える縁側のような通路を白獅子と破狩は歩いていた。

前を歩く白獅子に、破狩は言葉を投げる。

「……谷透さんが来てから…神社は変わりつつありますね」

「そうですね。彼らは、新しい風を神社の中に吹かせてくれている」

コツン…コツン…と足音が響く。

「……白獅子様、神社はいつから、ここまで格差や軋轢が生まれてしまったのでしょう……?」

破狩の問いに、白獅子は少し前を置いてから答える。

「……どうでしょうか。何処かで何か違えば、今は違ったかも知れません。ですが、今は谷透さん達がいます。彼らが神社から信頼を得て、立場を得て…そうして幾分か時が経てば…きっと、神社は今よりも素晴らしいものになると、私は信じています」

「……少し、時間がかかりそうなお話しですね」

「かも知れませんね。ですがその為ならば、私は彼らにいくらでも手を貸そうと思っています」

「……少々急な話かも知れませんが、宜しいですか?」

「構いません」

破狩が月を眺めながら続ける。

「神社がここまで格差を生じてしまったのは…一ノ門大社があらゆる力を独占していたからではないでしょうか?」

「……その通りだと、私は思います」

白獅子は少し悲しそうに話す。

「神主は変わられた。後継者争いに勝つため私を六武衆へと推薦し、共に戦場に立ち、視野を広げていかれた。しかし、ご自身のご子息がお生まれになってから、したたかさは失われ、その傲慢さが目立つようになりました……」

白獅子は遠い過去を思い出すように答える。

「だからこそ、私は谷透さんという新しい風に期待しているのです」

「えぇ、そこで白獅子様…私から提案があるのですが」

「……聞きましょう」

月を眺める白獅子の後ろに立ちながら、破狩は続ける。

「一ノ門の六武衆、その真の筆頭である貴方は言わば「一ノ門大社」という神社の圧倒的な象徴。その貴方にやって頂きたい事がございます………」

破狩は少し前に出て、続けた。





コツン……コツン……






「神社内の腐敗を断ち切る為、一ノ門の象徴である貴方には……」












…………………………ドスッ












「………死んで頂く事にしました」

「……ッッ!?」

白獅子の胸からは、白刃が飛び出していた。その持ち主は……



二ヶ宮神社神守 破狩



白獅子は距離をとり、すぐさま抜刀しようとするが……




……カランッ





「……!?」

刀を握る手に力が入らない。いつものように穏やかに笑う破狩は続ける。

「いやぁ、苦労しました。まさか貴方が『神人』だったなんて完全に予想外でしたから。ここまで少々手間取ってしまいました。傷の治りが遅いでしょう?『穢れ』の力です」

破狩の持つ刀には、禍々しい波紋が浮かんでいた。

「『神人』には『穢れ』が効きずらい……裏を返せば、その分穢れに飲まれるでもなくその肉体を保てるという事」

破狩は懐から何かを取り出した。それは……



……それはまるで、



「……それは…」

刺された胸を抑える白獅子は辛そうに言葉を絞り出す。

「なぜ…ゼシの核が……」

「大変でした…さすが白獅子さんの見繕った神守ですね。お得意の『一ノ門が~』が通用しませんでしたよ」






ゼシの核が封じられていた、一ノ門の地下には……

封印を破られ、持ち去られたゼシの核と。

残酷に切り捨てられている、一ノ門の神守がいるだけだった。






「この神社の体制を一度全て壊します。貴方のやり方では、遅すぎる」

破狩は、両手を広げると姿が変わる。

「知っていましたか?どうやらただの人間でも、『穢れ』をある程度の力に変換することは出来たみたいです」

「………『招雷刀』ッッ!!」

決死の思いで、白獅子は招雷刀を解放し稲妻を破狩に放つ。



……だが




バチィッッ!っと何かに弾かれる。破狩がもう片方の手に持っているのは、一本の槍だった。


「……それは…」

白獅子の言葉に、穏やかに破狩は答える。

「神代遺物『解魔槍カイマソウ』。人の身に『神代遺物』は重荷だと思っていましたが、『穢れ』を上手く扱えば、解放することが出来ました」

「……ッッ!!」

「さて、ではそろそろ……」


「破狩ィィィィッッッ!!」

そこへ、異変に気がついた四方が飛び出してくる。手裏剣を破狩めがけて一斉に投げるが…

「……邪魔しないで頂けますか?」

全て『穢れ』の力で弾かれる。


そして……


「……『解魔槍』…解放……」

途端に槍の先端から放たれた強烈な光線によって、四方は吹き飛ばされてしまった。




「……し、白獅子様ァァッッ!!!」




四方は為す術なく、宙へと舞った。

「……さて、邪魔が入りましたが、約束があるので急ぎましょう」

「……何をするつもりですか…」

破狩は解魔槍を肩にかけて、ゼシの核を取り出す。

「貴方は素晴らしい力を有した肉体を持っている。だが、それが私達にとって一番の障害だった……なら、


白獅子の強大な肉体にゼシの核を入れる。



「まぁ、核の状態でどれだけ貴方が耐え切れるかわかりませんが……いずれにせよ貴方は死にます」

ドスリと、解魔槍を白獅子の胸に突き立てる。すると、白獅子の体からコツン……と、白くうっすら虹色に輝く水晶のようなものが弾き出された。


「……核……だけを……」


「さて、今までお疲れ様でした…白獅子さん。私は私のやり方で、神社を変えます。どうぞ安らかに」

「………ッッ…」


どさり……と、白獅子は抜け殻のように倒れた。



………神社最強の神守は、ここに散った。



抜け殻のような白獅子の肉体と、解魔槍を手にした破狩は通路を転がっていく白獅子の……フヒトの核を眺める。


「まぁ、ゼシからは『核も壊せ』なんて言われていましたが……」


破狩はそのまま踵を返して歩き始めた。


「そこまでしてやる義理もないでしょう」

そうして、破狩は歩みを進める。





………そうして、絶望と混沌と穢れと……死の匂いで、辺りが満ちようとしていた。




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