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穢神戦争編
69話
「ん~、どうすれば良いのでしょうかー」
ブカブカパーカーを着た仄は、森林の中で迷子になっていた。
「ん~、あ……」
仄は見つけてしまった。いや、見つかってしまったという方が妥当かも知れない。
そこに、合掌しながら這いずる穢神がいた。その目はギョロリとこちらを見る。
「おわー、おっかないのですー」
ただし目があれば仄は襲われない。彼女の異能力『鏡合わせ』によるものだ。
「……んあ」
仄はつい変な声が出てしまった。理由は簡単、めちゃめちゃ穢神がそこにいたからだ。
「て、撤退なのですー!」
スタコラさっさと逃げるが、流石に追いつかれてしまいそうだ。
「えぇい、仕方ないのですー」
仄は首にぶら下げた、とあるものを口に加える。四方が谷透に渡していた、あの笛だ。
『笛です?』
『あぁ、四方から貰ったがお前が持っておけ。俺がいつもお前のそばに居れるとは限らないからな』
『わかったのですー』
こんな笛を吹いて、今の状況が解決するのだろうか。そんな疑念は仄にはなかった。簡単だ、あの人が言った事なのだから、信じる以外の選択肢がない。
小さな唇に乗せて、笛を吹く。木製の薬指くらいの長さの笛が、甲高い音を立てる。
ざわり……ざわり……
ひゅうと風が吹いた気がした。気がつけば、ゆらりと面をつけた人間が、仄を囲むように立っていた。シュババっと即座に仄の周囲に集まり膝をつく人たち。忍者のような仕草だが、着ている服はかなり普通だ。
「我ら枯葉里の衆。馳せ参じました」
一人が紡いだ言葉に別の人間がリレーして話す。
「我ら約束に従い、笛の主を守りたもう」
「我ら枯葉里、今君主を得たり」
「この時を待つが如く幾星霜」
「只今より、貴方様の剣となり盾となり」
「道具となりますれば」
普通の格好をしているのに、それぞれが変な面をつけているから、どこぞの過激派集団のような印象を受ける。そんな事を考えていると、一人の、ジャケットを着て、猿のような面をつけた男が立ち上がり他の人たちに無言で仕草をすると、他の面をつけた者たちは、迫る穢神に向かっていく。
その様子を見届けた後、猿面の男は言葉を発する。
「言葉を紡ぐことをお許し下さい。私は猿谷。枯葉里の衆筆頭代理でございます」
「え~っと、貴方たちは何者なのですー?」
仄が話すと、猿谷と名乗った男は、穢神に立ち向かう仲間の方を指差しながら応える。
「我らは枯葉里の衆。歴史に名を残さない、忍者でございます」
「ふむ~?忍者さん達なのに普通の格好なのですー?」
「忍者は忍ぶ者でありますれば。背景に溶け込むこともまた、潜伏の一つでございます」
「ほむぅ~。ところで、この笛はなんだったのです?」
仄が薬指程度の長さの木製の笛を見せると、猿谷は続ける。
「それは我が里で最も重要な道具でございます。我ら枯葉里は、里長が亡くなった後、後継がおらず低迷しておりました。時代も我らを必要とせず、緩やかに滅びに向かっていく中、我らの筆頭がその笛を持ち出しました。そして、『新たな君主を見つけてくる。この笛を吹いた者が次の我らの主だ。里は捨てよ、合図がなるまで、紛れて過ごせ』と言い残し里を去りました」
「話長いのですー」
仄の言葉に猿谷はものすごい勢いで膝をつき頭を下げる。
「申し訳ありません。端的に申し上げますと、その笛を吹いた方に我らは忠誠を誓うという約束があるのです」
「なるほど~?谷透さんと無神機関の関係みたいな者ですかねー?」
「……存じ上げない名前が出ましたが、主従という関係で言えば正しいかと」
猿谷はそういうと、いまだに戦っている他の仲間達に向けて声を飛ばす。
「いつまでそうしている。さっさと片付けろ」
「「「御意」」」
軽く話していた間、襲ってきた複数の穢神は、まるで蟻にたかられる死体のようになっていた。
「我ら忍者は所詮道具、そして集団です。多数を揃えて初めて個として機能する」
猿谷が再び無言で指示を出すと、四方に散り、索敵範囲を広げながら忍者達は陣形を組む。
「では、新たな主、どこに行かれるので?」
「一ノ門なのですー」
道中話してみたが、どうやら枯葉里の衆は、猿谷を頭目として、眞雉、戌亥という二人が補佐としており、その後に他の忍者たちがいるらしい。
「ところで仄様、忍者と呼ばれるものについてはどのような見解で?」
高い女性の声で、鳥のようなお面をつけた眞雉が仄に話しかける。
「ん~、手裏剣とか投げる人ですかねー」
「んまぁ、間違いではないのですがな」
低い男性の声、体格がよく猪のような面をつけた戌亥が答える。
「我らは確かに手裏剣などを使いますが、一番は諜報活動なのです」
「それも今となっては不要になり、我らも衰退の一途を辿っていたのですがね」
そこでふと仄は思い出したように尋ねる。
「忍者って言う事はー、忍法みたいなのは使えるのですー?」
仄の言葉に猿谷が丁寧に返す。
「忍法にも分類…というか属性のようなものがありまして、火、水、土などのそれぞれの属性がございます。基本的に、忍者は1人につき、ひとつの属性しか扱えません」
「そうなんですかー」
仄の相槌の後、猿谷、眞雉、戌亥の3人はバッと周囲を警戒し始める。
「どうしましたー?」
仄の言葉に猿谷が答える。
「……警戒に当たらせていた者の連絡が切れました」
猿谷は再び無言で指示を出し、忍者の陣形が縮まる。
「仄様、気を緩めずに」
猿谷が言葉を紡ぐと、後ろで警戒していた忍者の一人が、突然飛んできた何かに貫かれて倒れた。
「警戒」
猿谷が一つ言葉を発しただけで、さらに陣形が縮まる。意地でも仄を守ると言う意思を感じる。
「……ん?異能力者じゃあないのか、君ら」
ふわりと、白濁色のコートが揺れる。
意識の間を縫ってきたように、声の主はすでに陣形の真ん中にいた。
「………え?」
真ん中にいた仄は、珍しく呆気に取られた顔をしていた。
「やぁ、生きてたんだね。久しぶりだなぁ」
穏やかに紡がれる声。糸のような目に、雰囲気が谷透にどこか似ている。襟付きのシャツの上から、膝裏まである白濁色のコートを羽織っている。腰には作業ベルトのようなものを巻きつけていた。
「………燼人…お兄ぃ?」
「いやぁ、仄が囲まれているものだからさ…襲われてるのかと思ってさ」
燼人と呼ばれた男は、頭をかきながら笑う。
「……ちゃんと生きてたんだね」
「お兄ぃ…どうして生きてるのですー?」
「あぁ、仄を逃がした後…必死でさ…なんとか生き残ってねぇ」
「……」
猿谷は、一瞬眞雉と戌亥と目配せをした。油断するなと。
そして、その一瞬が致命的だった。
「……え…」
仄の口から、血が垂れていた。
「いやぁ、良かったよ。死んでたら奪えないしさ」
糸のような目を薄く薄く開いて、三日月のように笑う燼人。
仄の身体は、見えない何かに貫かれているように不気味に曲がっていた。
それを引き抜いた燼人は、やれやれと立ち上がる。
そして、その瞬間を見ていた、枯葉里の衆以外の人物が一人。
「…仄…?」
ヒミコが、追いついた。
「………ッッ」
枯葉里の衆が感じたのは、一瞬の焦りと後悔。次が殺意。
猿谷はヒミコに向かい、それ以外は燼人に向かう。
「ははぁ…俺は一人なのに、そんな来られたら困りますよ」
猿谷以外の衆の者が全員向かってきているというのに、なおも軽口を叩く余裕のある燼人。三日月のように笑う男は、不敵に微笑み続ける。
猿谷は、得体の知れない女に向かって袖からクナイを取り出すと、顔面に向けて刺し殺そうと構える。
「待って」
ヒミコの言葉に、猿谷はビタリと止まる。
「……あの子を刺したのは貴方たちかしら?」
ヒミコの威圧的な質問に、負けずに殺気を放ちながら猿谷は答える。
「……刺したのはあっちの男です」
「…貴方たちは仄の味方かしら?」
「我々は仄様の道具です」
「それが聞ければ十分よ」
そういうと、ヒミコは仄の様子を確認する。
「仄様に何を…」
「黙ってて」
ヒミコは仄を抱き上げると、丁寧に観察する。
(…腹部の出血と、心肺の損傷…咄嗟に身を捻って回避した…?この子もすごいわね)
「……まだ、なんとかなるかも知れない」
「本当か?」
「あの中の誰かに仄を抱き上げ続けさせて、雑菌とかが入るとやり辛いわ」
するとほぼノータイムで猿谷が口笛を吹き、燼人に向かっていた一人が素早く戦線を離脱し、仄抱き上げる。
「じゃあ、初め……」
「させると思う?」
目と鼻の先に、ナイフの切先を向けた燼人が立っていた。
「「………ッッ!?」」
ヒミコはバッと距離をとり、猿谷は反射的に燼人の持っていたジャックナイフをクナイで受け止めた。
「流石、忍者みたいなだけはあるね。反応速度が良い」
燼人が軽口を叩いている隙に、背後から別の忍者が襲いかかるが、燼人は一瞬で5メートルほど距離をとった。
「やだなぁ、多勢に無勢じゃあないか。手加減してよ」
そういうと再び一瞬でヒミコの前に現れる。
(……チィッ…)
ヒミコは持っていた懐刀を取り出し、燼人のジャックナイフを受け止める。
(…私も戦うしかないみたいね……)
ヒミコの持っている懐刀は、生前の白獅子から渡されていたものだ。
『これを』
『……何?これ』
『いえ、ヒミコさん。貴女が前線に立つ時は少ないと思いますが、その時、きっと私は側に居れない時だと思います。持っていてください。何、お守りのようなものですよ』
「……ほんっと、どこまで見通しているのかしら!!」
言葉と共に燼人のナイフを弾き、距離をとる。
「貴方たち、手伝いなさい。じゃないと仄は助けられないわ」
その一言で、猿谷はパパッとハンドサインを出し、陣形を組み直した。
「作戦会議は終わりました?まぁ、待ちますからお好きに」
「舐めてんじゃないわよ……」
正直、仄の回復の為に神通力を割いているので、どこまでやれるかは分からない。ただし、目の前のあの脅威を排除しないことにはあの子の回復に集中できない。
理由はよく分からないが、神社にいたあの忍者君によく似た雰囲気の集団が味方してくれている。
神人の力、見せてやろうじゃないの。
ブカブカパーカーを着た仄は、森林の中で迷子になっていた。
「ん~、あ……」
仄は見つけてしまった。いや、見つかってしまったという方が妥当かも知れない。
そこに、合掌しながら這いずる穢神がいた。その目はギョロリとこちらを見る。
「おわー、おっかないのですー」
ただし目があれば仄は襲われない。彼女の異能力『鏡合わせ』によるものだ。
「……んあ」
仄はつい変な声が出てしまった。理由は簡単、めちゃめちゃ穢神がそこにいたからだ。
「て、撤退なのですー!」
スタコラさっさと逃げるが、流石に追いつかれてしまいそうだ。
「えぇい、仕方ないのですー」
仄は首にぶら下げた、とあるものを口に加える。四方が谷透に渡していた、あの笛だ。
『笛です?』
『あぁ、四方から貰ったがお前が持っておけ。俺がいつもお前のそばに居れるとは限らないからな』
『わかったのですー』
こんな笛を吹いて、今の状況が解決するのだろうか。そんな疑念は仄にはなかった。簡単だ、あの人が言った事なのだから、信じる以外の選択肢がない。
小さな唇に乗せて、笛を吹く。木製の薬指くらいの長さの笛が、甲高い音を立てる。
ざわり……ざわり……
ひゅうと風が吹いた気がした。気がつけば、ゆらりと面をつけた人間が、仄を囲むように立っていた。シュババっと即座に仄の周囲に集まり膝をつく人たち。忍者のような仕草だが、着ている服はかなり普通だ。
「我ら枯葉里の衆。馳せ参じました」
一人が紡いだ言葉に別の人間がリレーして話す。
「我ら約束に従い、笛の主を守りたもう」
「我ら枯葉里、今君主を得たり」
「この時を待つが如く幾星霜」
「只今より、貴方様の剣となり盾となり」
「道具となりますれば」
普通の格好をしているのに、それぞれが変な面をつけているから、どこぞの過激派集団のような印象を受ける。そんな事を考えていると、一人の、ジャケットを着て、猿のような面をつけた男が立ち上がり他の人たちに無言で仕草をすると、他の面をつけた者たちは、迫る穢神に向かっていく。
その様子を見届けた後、猿面の男は言葉を発する。
「言葉を紡ぐことをお許し下さい。私は猿谷。枯葉里の衆筆頭代理でございます」
「え~っと、貴方たちは何者なのですー?」
仄が話すと、猿谷と名乗った男は、穢神に立ち向かう仲間の方を指差しながら応える。
「我らは枯葉里の衆。歴史に名を残さない、忍者でございます」
「ふむ~?忍者さん達なのに普通の格好なのですー?」
「忍者は忍ぶ者でありますれば。背景に溶け込むこともまた、潜伏の一つでございます」
「ほむぅ~。ところで、この笛はなんだったのです?」
仄が薬指程度の長さの木製の笛を見せると、猿谷は続ける。
「それは我が里で最も重要な道具でございます。我ら枯葉里は、里長が亡くなった後、後継がおらず低迷しておりました。時代も我らを必要とせず、緩やかに滅びに向かっていく中、我らの筆頭がその笛を持ち出しました。そして、『新たな君主を見つけてくる。この笛を吹いた者が次の我らの主だ。里は捨てよ、合図がなるまで、紛れて過ごせ』と言い残し里を去りました」
「話長いのですー」
仄の言葉に猿谷はものすごい勢いで膝をつき頭を下げる。
「申し訳ありません。端的に申し上げますと、その笛を吹いた方に我らは忠誠を誓うという約束があるのです」
「なるほど~?谷透さんと無神機関の関係みたいな者ですかねー?」
「……存じ上げない名前が出ましたが、主従という関係で言えば正しいかと」
猿谷はそういうと、いまだに戦っている他の仲間達に向けて声を飛ばす。
「いつまでそうしている。さっさと片付けろ」
「「「御意」」」
軽く話していた間、襲ってきた複数の穢神は、まるで蟻にたかられる死体のようになっていた。
「我ら忍者は所詮道具、そして集団です。多数を揃えて初めて個として機能する」
猿谷が再び無言で指示を出すと、四方に散り、索敵範囲を広げながら忍者達は陣形を組む。
「では、新たな主、どこに行かれるので?」
「一ノ門なのですー」
道中話してみたが、どうやら枯葉里の衆は、猿谷を頭目として、眞雉、戌亥という二人が補佐としており、その後に他の忍者たちがいるらしい。
「ところで仄様、忍者と呼ばれるものについてはどのような見解で?」
高い女性の声で、鳥のようなお面をつけた眞雉が仄に話しかける。
「ん~、手裏剣とか投げる人ですかねー」
「んまぁ、間違いではないのですがな」
低い男性の声、体格がよく猪のような面をつけた戌亥が答える。
「我らは確かに手裏剣などを使いますが、一番は諜報活動なのです」
「それも今となっては不要になり、我らも衰退の一途を辿っていたのですがね」
そこでふと仄は思い出したように尋ねる。
「忍者って言う事はー、忍法みたいなのは使えるのですー?」
仄の言葉に猿谷が丁寧に返す。
「忍法にも分類…というか属性のようなものがありまして、火、水、土などのそれぞれの属性がございます。基本的に、忍者は1人につき、ひとつの属性しか扱えません」
「そうなんですかー」
仄の相槌の後、猿谷、眞雉、戌亥の3人はバッと周囲を警戒し始める。
「どうしましたー?」
仄の言葉に猿谷が答える。
「……警戒に当たらせていた者の連絡が切れました」
猿谷は再び無言で指示を出し、忍者の陣形が縮まる。
「仄様、気を緩めずに」
猿谷が言葉を紡ぐと、後ろで警戒していた忍者の一人が、突然飛んできた何かに貫かれて倒れた。
「警戒」
猿谷が一つ言葉を発しただけで、さらに陣形が縮まる。意地でも仄を守ると言う意思を感じる。
「……ん?異能力者じゃあないのか、君ら」
ふわりと、白濁色のコートが揺れる。
意識の間を縫ってきたように、声の主はすでに陣形の真ん中にいた。
「………え?」
真ん中にいた仄は、珍しく呆気に取られた顔をしていた。
「やぁ、生きてたんだね。久しぶりだなぁ」
穏やかに紡がれる声。糸のような目に、雰囲気が谷透にどこか似ている。襟付きのシャツの上から、膝裏まである白濁色のコートを羽織っている。腰には作業ベルトのようなものを巻きつけていた。
「………燼人…お兄ぃ?」
「いやぁ、仄が囲まれているものだからさ…襲われてるのかと思ってさ」
燼人と呼ばれた男は、頭をかきながら笑う。
「……ちゃんと生きてたんだね」
「お兄ぃ…どうして生きてるのですー?」
「あぁ、仄を逃がした後…必死でさ…なんとか生き残ってねぇ」
「……」
猿谷は、一瞬眞雉と戌亥と目配せをした。油断するなと。
そして、その一瞬が致命的だった。
「……え…」
仄の口から、血が垂れていた。
「いやぁ、良かったよ。死んでたら奪えないしさ」
糸のような目を薄く薄く開いて、三日月のように笑う燼人。
仄の身体は、見えない何かに貫かれているように不気味に曲がっていた。
それを引き抜いた燼人は、やれやれと立ち上がる。
そして、その瞬間を見ていた、枯葉里の衆以外の人物が一人。
「…仄…?」
ヒミコが、追いついた。
「………ッッ」
枯葉里の衆が感じたのは、一瞬の焦りと後悔。次が殺意。
猿谷はヒミコに向かい、それ以外は燼人に向かう。
「ははぁ…俺は一人なのに、そんな来られたら困りますよ」
猿谷以外の衆の者が全員向かってきているというのに、なおも軽口を叩く余裕のある燼人。三日月のように笑う男は、不敵に微笑み続ける。
猿谷は、得体の知れない女に向かって袖からクナイを取り出すと、顔面に向けて刺し殺そうと構える。
「待って」
ヒミコの言葉に、猿谷はビタリと止まる。
「……あの子を刺したのは貴方たちかしら?」
ヒミコの威圧的な質問に、負けずに殺気を放ちながら猿谷は答える。
「……刺したのはあっちの男です」
「…貴方たちは仄の味方かしら?」
「我々は仄様の道具です」
「それが聞ければ十分よ」
そういうと、ヒミコは仄の様子を確認する。
「仄様に何を…」
「黙ってて」
ヒミコは仄を抱き上げると、丁寧に観察する。
(…腹部の出血と、心肺の損傷…咄嗟に身を捻って回避した…?この子もすごいわね)
「……まだ、なんとかなるかも知れない」
「本当か?」
「あの中の誰かに仄を抱き上げ続けさせて、雑菌とかが入るとやり辛いわ」
するとほぼノータイムで猿谷が口笛を吹き、燼人に向かっていた一人が素早く戦線を離脱し、仄抱き上げる。
「じゃあ、初め……」
「させると思う?」
目と鼻の先に、ナイフの切先を向けた燼人が立っていた。
「「………ッッ!?」」
ヒミコはバッと距離をとり、猿谷は反射的に燼人の持っていたジャックナイフをクナイで受け止めた。
「流石、忍者みたいなだけはあるね。反応速度が良い」
燼人が軽口を叩いている隙に、背後から別の忍者が襲いかかるが、燼人は一瞬で5メートルほど距離をとった。
「やだなぁ、多勢に無勢じゃあないか。手加減してよ」
そういうと再び一瞬でヒミコの前に現れる。
(……チィッ…)
ヒミコは持っていた懐刀を取り出し、燼人のジャックナイフを受け止める。
(…私も戦うしかないみたいね……)
ヒミコの持っている懐刀は、生前の白獅子から渡されていたものだ。
『これを』
『……何?これ』
『いえ、ヒミコさん。貴女が前線に立つ時は少ないと思いますが、その時、きっと私は側に居れない時だと思います。持っていてください。何、お守りのようなものですよ』
「……ほんっと、どこまで見通しているのかしら!!」
言葉と共に燼人のナイフを弾き、距離をとる。
「貴方たち、手伝いなさい。じゃないと仄は助けられないわ」
その一言で、猿谷はパパッとハンドサインを出し、陣形を組み直した。
「作戦会議は終わりました?まぁ、待ちますからお好きに」
「舐めてんじゃないわよ……」
正直、仄の回復の為に神通力を割いているので、どこまでやれるかは分からない。ただし、目の前のあの脅威を排除しないことにはあの子の回復に集中できない。
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