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穢神戦争編
80話
既に全員が満身創痍、これ以上何を為せるのだろう。
「ハハッ…ってあれ、仄もいるじゃあないか。一石二鳥だなぁー」
ケタケタ笑いながら、不可視の剣を取り出す燼人。今にも襲い掛かろうとする彼の前にフヌゥムの大鉈が向けられる。
「待て…これは此方の戦いだ。横槍を入れるな、なり損ないが」
「じゃあそっちからでも良いんだけどー?」
一触即発の空気を出しながらも、燼人はくるりと方向転換し、肩に乗る美しい顔をした女の首を掴む。
「シトド、鳴け」
「……ッ!?」
ほぼ奇襲のような形で、六武衆や仄たちに衝撃波が浴びせられる。体の内側から壊されるような、嫌な感触。
「ゲホッ…ゴホッ」
「……なり損ない、貴様…」
「おぉっと、怒らないでよ。もう充分頑張ったんでしょ?彼ら。いっそ楽にしてやった方が良いでしょうに」
軽口を叩く燼人の頬を岩石が掠める。
「……貴様が戦ったのでは無い。奮闘したのは彼らであり、貴様がそのような言葉をいう資格は無い」
「……やれやれ、じゃあさっさとやってくださいよ?俺は早く奪いたいので」
「貴様の事情など知ったことではない」
燼人はベロを出しつつおどけ、フヌゥムは再び六武衆たちに向かっていく。
誰もが思った、ここまでだろう。
誰もが目を閉じた。覚悟を決めていたのだ。
そして、フヌゥム達を含むその場の全員が止まる
何かがおかしい。先ほどまでとは何かが明確に違う。何が、一体何が……
そして気がついた。音が消えた。
一ノ門大社を覆っていた、阿鼻叫喚が消えた。そう……
穢神の声が聞こえない
ザクっと、
地べたを踏む音が、盤上に響く。
「……悪りぃな、皆」
ザクっザクっと。
「……遅くなっちまった」
妙に足音が響く。
「良く、耐えてくれたな」
声の源は、後ろだ。
「漸く……ここにいた穢神を片付け終わった。後は俺に……」
片手には、脊椎らしきものが繋がったままの穢神の頭蓋を持っていた。それを放り投げ、純白の外套を翻し、その男は現れた。
「白獅子に、任せろ」
白金に輝く封神剣を携え、覚悟溢れん眼光を持って言葉を発する。
六武衆、そして仄は安堵と尊敬の眼差しを向ける。
「六武衆筆頭『白獅子』、加勢する」
現六武衆の筆頭『白獅子』…もとい、谷透修哉が遂に現れた。
フヌゥムは戦慄した。一ノ門にいた穢神の数は計り知れず、下手をすれば百を超えていた筈だ。それを……
それを、あの男が?たった1人で……?全て引きつけて祓いきった!?!?
フヌゥムは不意に変な感覚に襲われる。ぞくりとした、何か冷たいものが脊椎をつたり、脳まで響くような感覚。
これを感じるのは2回目だ。
これは……
刃の武神に感じた、絶対的強者への本能的恐怖
巨岩の大鉈を持つ手に、冷や汗が浮かぶ。
「おいおい、増えたな~」
燼人は軽口を叩いてはいるが、隙を窺っていた。
「六武衆?だっけ?君はお仲間かな?でもちょっと遅かったんじゃないですか?」
三日月のように笑い、ジャックナイフを取り出す。
「皆さん殺されちゃいますよ?もう。こんなふうに……ねッッ!!」
燼人は、ジャックナイフを使い一気に谷透との距離を一気に縮める。
燼人のストックしている異能の一つ、『縮地』だ。
燼人はナイフを振りかぶる……
(この男が頭なら、ささっと殺っちゃえば士気も下がるでしょうね)
ひゅっとナイフが直線を描き……そして……
谷透の拳が、燼人の腹部に直撃した。
「ガハァッ!?……ゲボッ!?」
燼人は、膝から崩れ落ちる。その様子を見下しながら谷透は声を刺す。
「誰だよお前」
燼人は、焦った。『縮地』の速度に合わせて、カウンターされた。かつてない経験。
(やばいやばいやばい…足に、いや、全身に力が入らない…なんだこいつ!?なんなんだ!?)
問いかける谷透に、仄を守っていた猿谷がわざとらしく声を荒げる。
「仄様ッッ!!大丈夫ですか?あの男に刺された傷は開いていませんか!?あぁ、刺された場所は?大丈夫ですか?」
言葉が耳に届いたのだろう。谷透は仄に駆け寄ると、しゃがんで目線を合わせる。
「……まぁ、もう着いてくるのには何も言わんが…仄、刺されたって本当か?」
仄は安心しきった目で答える。
「はいー、あ、あの人は私の兄でですねー。どうやら異能力者を殺して異能を奪ってたらしいですー。生きていたとは知りませんでしたー」
「……そうか…傷は痛むか?」
「いいえー、その……ヒミコさんが……犠牲になって…」
察した谷透は仄の口を抑える。
「わかった、言わなくて良い……良く頑張ったな」
谷透は視線を猿谷に向ける。
「……正体は後で聞く…あの男は仄を刺したんだな?」
「はい、仄様は危ない状態にまでなりました…そして…」
「良い、それだけ分かれば充分だ」
谷透は蹲る燼人の前に立つと、凍えるような殺気を放つ。
蹲る燼人の顔を掴み、無理やり眼を合わさせる。
「………刺したんだな?」
「……ッッシトド!鳴ッ!」
指示が伝わる前に、谷透の腕がシトドの喉を掴み黙らせる。
「歯を食いしばれ。舌を噛むなよ」
直後、谷透の拳が燼人の顔面に直撃し、ノーバウンドで吹っ飛びながら、木々を2、3本貫いた。
「……が………かっ……」
燼人は白目を剥いて地べたを舐める。
「本当は殺したいところだが、後で聞くことがある。約束もあるしな」
呟いたあと、谷透はフヌゥムに向き直り、言葉を発する。
「お前は誰だ?」
「……四堕神が一柱、フヌゥム」
「そうか、俺は白獅子。アイツらの頭だ」
「……其方、この大社にいた穢神を全て祓ったのか?」
「……あぁ。それが目的だ。そして、終わったから今ここに居る」
「……ふ…」
「?」
フヌゥムは声を大にして笑う。
「ハハハハハハッッ!!なんと素晴らしい!このような逸材が人間にいたとは!」
フヌゥムは巨岩の大鉈を構え、言葉を投げる。
「是非死合いたい」
「…あぁ、最初からそのつもりだ」
そして、三度目の……
最後の衝突が始まる。
「ハハッ…ってあれ、仄もいるじゃあないか。一石二鳥だなぁー」
ケタケタ笑いながら、不可視の剣を取り出す燼人。今にも襲い掛かろうとする彼の前にフヌゥムの大鉈が向けられる。
「待て…これは此方の戦いだ。横槍を入れるな、なり損ないが」
「じゃあそっちからでも良いんだけどー?」
一触即発の空気を出しながらも、燼人はくるりと方向転換し、肩に乗る美しい顔をした女の首を掴む。
「シトド、鳴け」
「……ッ!?」
ほぼ奇襲のような形で、六武衆や仄たちに衝撃波が浴びせられる。体の内側から壊されるような、嫌な感触。
「ゲホッ…ゴホッ」
「……なり損ない、貴様…」
「おぉっと、怒らないでよ。もう充分頑張ったんでしょ?彼ら。いっそ楽にしてやった方が良いでしょうに」
軽口を叩く燼人の頬を岩石が掠める。
「……貴様が戦ったのでは無い。奮闘したのは彼らであり、貴様がそのような言葉をいう資格は無い」
「……やれやれ、じゃあさっさとやってくださいよ?俺は早く奪いたいので」
「貴様の事情など知ったことではない」
燼人はベロを出しつつおどけ、フヌゥムは再び六武衆たちに向かっていく。
誰もが思った、ここまでだろう。
誰もが目を閉じた。覚悟を決めていたのだ。
そして、フヌゥム達を含むその場の全員が止まる
何かがおかしい。先ほどまでとは何かが明確に違う。何が、一体何が……
そして気がついた。音が消えた。
一ノ門大社を覆っていた、阿鼻叫喚が消えた。そう……
穢神の声が聞こえない
ザクっと、
地べたを踏む音が、盤上に響く。
「……悪りぃな、皆」
ザクっザクっと。
「……遅くなっちまった」
妙に足音が響く。
「良く、耐えてくれたな」
声の源は、後ろだ。
「漸く……ここにいた穢神を片付け終わった。後は俺に……」
片手には、脊椎らしきものが繋がったままの穢神の頭蓋を持っていた。それを放り投げ、純白の外套を翻し、その男は現れた。
「白獅子に、任せろ」
白金に輝く封神剣を携え、覚悟溢れん眼光を持って言葉を発する。
六武衆、そして仄は安堵と尊敬の眼差しを向ける。
「六武衆筆頭『白獅子』、加勢する」
現六武衆の筆頭『白獅子』…もとい、谷透修哉が遂に現れた。
フヌゥムは戦慄した。一ノ門にいた穢神の数は計り知れず、下手をすれば百を超えていた筈だ。それを……
それを、あの男が?たった1人で……?全て引きつけて祓いきった!?!?
フヌゥムは不意に変な感覚に襲われる。ぞくりとした、何か冷たいものが脊椎をつたり、脳まで響くような感覚。
これを感じるのは2回目だ。
これは……
刃の武神に感じた、絶対的強者への本能的恐怖
巨岩の大鉈を持つ手に、冷や汗が浮かぶ。
「おいおい、増えたな~」
燼人は軽口を叩いてはいるが、隙を窺っていた。
「六武衆?だっけ?君はお仲間かな?でもちょっと遅かったんじゃないですか?」
三日月のように笑い、ジャックナイフを取り出す。
「皆さん殺されちゃいますよ?もう。こんなふうに……ねッッ!!」
燼人は、ジャックナイフを使い一気に谷透との距離を一気に縮める。
燼人のストックしている異能の一つ、『縮地』だ。
燼人はナイフを振りかぶる……
(この男が頭なら、ささっと殺っちゃえば士気も下がるでしょうね)
ひゅっとナイフが直線を描き……そして……
谷透の拳が、燼人の腹部に直撃した。
「ガハァッ!?……ゲボッ!?」
燼人は、膝から崩れ落ちる。その様子を見下しながら谷透は声を刺す。
「誰だよお前」
燼人は、焦った。『縮地』の速度に合わせて、カウンターされた。かつてない経験。
(やばいやばいやばい…足に、いや、全身に力が入らない…なんだこいつ!?なんなんだ!?)
問いかける谷透に、仄を守っていた猿谷がわざとらしく声を荒げる。
「仄様ッッ!!大丈夫ですか?あの男に刺された傷は開いていませんか!?あぁ、刺された場所は?大丈夫ですか?」
言葉が耳に届いたのだろう。谷透は仄に駆け寄ると、しゃがんで目線を合わせる。
「……まぁ、もう着いてくるのには何も言わんが…仄、刺されたって本当か?」
仄は安心しきった目で答える。
「はいー、あ、あの人は私の兄でですねー。どうやら異能力者を殺して異能を奪ってたらしいですー。生きていたとは知りませんでしたー」
「……そうか…傷は痛むか?」
「いいえー、その……ヒミコさんが……犠牲になって…」
察した谷透は仄の口を抑える。
「わかった、言わなくて良い……良く頑張ったな」
谷透は視線を猿谷に向ける。
「……正体は後で聞く…あの男は仄を刺したんだな?」
「はい、仄様は危ない状態にまでなりました…そして…」
「良い、それだけ分かれば充分だ」
谷透は蹲る燼人の前に立つと、凍えるような殺気を放つ。
蹲る燼人の顔を掴み、無理やり眼を合わさせる。
「………刺したんだな?」
「……ッッシトド!鳴ッ!」
指示が伝わる前に、谷透の腕がシトドの喉を掴み黙らせる。
「歯を食いしばれ。舌を噛むなよ」
直後、谷透の拳が燼人の顔面に直撃し、ノーバウンドで吹っ飛びながら、木々を2、3本貫いた。
「……が………かっ……」
燼人は白目を剥いて地べたを舐める。
「本当は殺したいところだが、後で聞くことがある。約束もあるしな」
呟いたあと、谷透はフヌゥムに向き直り、言葉を発する。
「お前は誰だ?」
「……四堕神が一柱、フヌゥム」
「そうか、俺は白獅子。アイツらの頭だ」
「……其方、この大社にいた穢神を全て祓ったのか?」
「……あぁ。それが目的だ。そして、終わったから今ここに居る」
「……ふ…」
「?」
フヌゥムは声を大にして笑う。
「ハハハハハハッッ!!なんと素晴らしい!このような逸材が人間にいたとは!」
フヌゥムは巨岩の大鉈を構え、言葉を投げる。
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「…あぁ、最初からそのつもりだ」
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最後の衝突が始まる。
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