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覚悟
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怪奇専門探偵事務所の扉をふらつきながら開け、中に入るなりバタンと倒れる。
「んにゃ~厳彦ぉ~おつかれだにゃ~」
「……悪いな、油断していた」
「あ、いや。北河さんのせいでは…」
南雲に追いかけられ、北河が助けに現れ、終わったかと思いきや別の専門家が現れて南雲を助けて消えてしまう始末。駆け出しの霊能者兼探偵の厳彦にはさすがにハードな1日だった。
「あれ、どうしたのよ所長。顔色悪いわよ?寝不足?」
そこへ美しい髪を揺らし、ブランド物の服を着た花さんが現れる。
「あぁ……寝不足はいつもの事…今日はちょっと色々大変だったんだ…」
「あらそう。そういえばこの部屋一応掃除しておいたわよ。ベッドのシーツとか色々洗濯しておいたし、寝たら?」
厳彦は起き上がって花の手を握る。
「ありがとう……!!花さん……!!」
半分泣きながら感謝する厳彦。一方花の方は、こんなに喜ばれると思ってなかったのが、ちょっと赤くなっている。
「い、いや別にそこまで感謝される事じゃ無いし……」
「立てるか?東。俺が運ぼう」
北河に運ばれながら、東は自室へと移動する。
なんとなーく面白くない由々。こっちだってずっと一緒にいたしー…っとふくれっ面。
由々は元の肉体に戻り、軽くシャワーを浴びると部屋へと潜った。
いつもマイペースな由々がここまでテキパキ動くのは珍しいが、そのことを唯一知っている厳彦は既に自室だ。
………ちなみに、由々が入っていった部屋には「所長室」と書かれていた。
2人しかいなくなった事務所の机には、北河と花が向かいあって座っている。
「……お前…霊か」
北河が低く小さめの声量で花に問う。花は悪びれず答えた。
「えぇ、そうよ。『123代目トイレの花子さん』ま、名前ぐらいなら知ってんでしょ?」
「随分な大物がいたものだな…」
「それで?アンタさ、どうするの?」
花の問に北河は黙ってしまう。
「自分の依頼で弟子が死にかけて、結果として救えたけど、向こうにもオカルトの専門家がいた。所長もある程度対霊の力は備えてるんでしょうけど、正直その南雲とか言う奴に勝てるとは思えないわ」
「もちろんもう1人の専門家にもね」と付け加える。
「………そうだな。これは俺の落ち度かもしれんな」
北河は顔を俯かせ、いつもよりいっそう深いシワを眉間に浮かべた。
その顔を見て、花はため息をつきながら話す。
「はぁ…アンタさァ、人手が足りないとかなら、人を頼るとかしない訳?」
「………何だと?」
「だから、『手伝ってやる』って言ってんのよ。要は所長とあの子を守れば良いんでしょう?あの子たちに気付かれない範囲で。アンタは戦う、私は守る。そうやって役割を分ければ良いじゃないの。何でもかんでも1人でやろうとした奴は皆、結局最後、肝心な所で倒れるって相場は決まってんのよ」
北河は静かにその言葉を噛み締めていた。
面と向かって「手伝ってやる」と言われたのはいつぶりだろうか?そして、花の言葉にある人の言葉を思い出す。
『君は何でもかんでも一人でやろうとしてるね。ワシでも誰でも良い。人を頼るって事を覚えると良いよ』
覚悟を決めたように顔をあげる北河。その視線は真っ直ぐ、花の視線とぶつかる。
「頼めるか?」
「誰に言ってんのよ」
花は静かに笑うと、続ける。
「アンタの前にいるのは、この国で1番2番を争う有名人よ?」
「んにゃ~厳彦ぉ~おつかれだにゃ~」
「……悪いな、油断していた」
「あ、いや。北河さんのせいでは…」
南雲に追いかけられ、北河が助けに現れ、終わったかと思いきや別の専門家が現れて南雲を助けて消えてしまう始末。駆け出しの霊能者兼探偵の厳彦にはさすがにハードな1日だった。
「あれ、どうしたのよ所長。顔色悪いわよ?寝不足?」
そこへ美しい髪を揺らし、ブランド物の服を着た花さんが現れる。
「あぁ……寝不足はいつもの事…今日はちょっと色々大変だったんだ…」
「あらそう。そういえばこの部屋一応掃除しておいたわよ。ベッドのシーツとか色々洗濯しておいたし、寝たら?」
厳彦は起き上がって花の手を握る。
「ありがとう……!!花さん……!!」
半分泣きながら感謝する厳彦。一方花の方は、こんなに喜ばれると思ってなかったのが、ちょっと赤くなっている。
「い、いや別にそこまで感謝される事じゃ無いし……」
「立てるか?東。俺が運ぼう」
北河に運ばれながら、東は自室へと移動する。
なんとなーく面白くない由々。こっちだってずっと一緒にいたしー…っとふくれっ面。
由々は元の肉体に戻り、軽くシャワーを浴びると部屋へと潜った。
いつもマイペースな由々がここまでテキパキ動くのは珍しいが、そのことを唯一知っている厳彦は既に自室だ。
………ちなみに、由々が入っていった部屋には「所長室」と書かれていた。
2人しかいなくなった事務所の机には、北河と花が向かいあって座っている。
「……お前…霊か」
北河が低く小さめの声量で花に問う。花は悪びれず答えた。
「えぇ、そうよ。『123代目トイレの花子さん』ま、名前ぐらいなら知ってんでしょ?」
「随分な大物がいたものだな…」
「それで?アンタさ、どうするの?」
花の問に北河は黙ってしまう。
「自分の依頼で弟子が死にかけて、結果として救えたけど、向こうにもオカルトの専門家がいた。所長もある程度対霊の力は備えてるんでしょうけど、正直その南雲とか言う奴に勝てるとは思えないわ」
「もちろんもう1人の専門家にもね」と付け加える。
「………そうだな。これは俺の落ち度かもしれんな」
北河は顔を俯かせ、いつもよりいっそう深いシワを眉間に浮かべた。
その顔を見て、花はため息をつきながら話す。
「はぁ…アンタさァ、人手が足りないとかなら、人を頼るとかしない訳?」
「………何だと?」
「だから、『手伝ってやる』って言ってんのよ。要は所長とあの子を守れば良いんでしょう?あの子たちに気付かれない範囲で。アンタは戦う、私は守る。そうやって役割を分ければ良いじゃないの。何でもかんでも1人でやろうとした奴は皆、結局最後、肝心な所で倒れるって相場は決まってんのよ」
北河は静かにその言葉を噛み締めていた。
面と向かって「手伝ってやる」と言われたのはいつぶりだろうか?そして、花の言葉にある人の言葉を思い出す。
『君は何でもかんでも一人でやろうとしてるね。ワシでも誰でも良い。人を頼るって事を覚えると良いよ』
覚悟を決めたように顔をあげる北河。その視線は真っ直ぐ、花の視線とぶつかる。
「頼めるか?」
「誰に言ってんのよ」
花は静かに笑うと、続ける。
「アンタの前にいるのは、この国で1番2番を争う有名人よ?」
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