167 / 401
第七章 夏休み☆
5
しおりを挟む風紀室から出て、懲罰棟への道を歩く。
その道中、懲罰棟での業務は何があるのかトサカ君に聞くと.....
「基本的には違反者達の更生と見張りだ」
と、返ってきた。
更生か....そんなことやってたんだ。全然知らなかった。
「でも、違反者を更生させるのって結構難しいんじゃないですか?人の心はそう簡単に変わりませんし」
「まぁ、普通の委員が担当ならそうだろうな」
「....委員長ですか」
「ああ。委員長が担当だから違反者達は驚く程更生される。以前委員長の指導姿を見たことあったけど、あれはもはや拷問だったな……マジ憧れる」
憧れるの??
拷問姿見て、憧れるって言葉出るの??
嘘でしょ?って思いながらトサカ君の表情を見たんだけど、まぁこれがキラキラとした目をして本気で言ってるんですよ……。
「そ、そうですか」
ちょっと心の距離ができた気がする。
「あ~.....それでトサカ君の業務は?見張りですか?」
「俺の今日の業務は快楽殺人鬼の牢移動だ。本当は見張りだけで終わるはずだったんだが、風紀室で燈弥と話していたおかっぱヘアーの先輩に言われてな。なんでも哀嶋副委員長の指示だそうだ」
「快楽殺人鬼って....懲罰棟に入ってたんですか」
「燈弥が入学するちょっと前くらいに捕縛された。そんで委員長でも更生できないらしいから、卒業までぶち込む方針になってる」
「それは可哀想に。青春の3年間を牢で過ごすなんて」
僕としては安心できるから嬉しい。どうかそのままぶち込まれてて欲しい。
「自業自得だ。あのイカレ野郎め」
「おや、嫌いなんです?」
「この学園でアイツを好きなやつはいねぇよ。戦闘狂といい、シリアルキラーといい、なんで委員長にちょっかいかけるんだ」
「委員長はモテモテですね。羨ましくないですけど。それで....トサカ君ひとりでできるんですか?その危険人物の移動」
「やるしかないだろ。はぁ、今日当番の紫蛇先輩が居てくれたら楽だったのに」
「紫蛇と交代した委員では役不足というわけですか」
「居ねぇ方がまだやり易い実力だ」
「うーん――僕、手伝いましょうか?」
「!?!?」
ちょっと?
どうしてそんな後ずさるんですかね?
しかも警戒するような眼差しまで向けて。
「な、なにが目的だ」
「失礼ですね。ただの親切心ですよ」
「燈弥に親切心?どんなに悲痛な顔で助けを求めても、笑顔で帰っていくあの燈弥が?」
そう言われると弱いなぁ。
「....どうせ懲罰棟内が見たいだけだろ」
「バレましたか」
噂に聞く異能使用不可空間というのを体験してみたい。本当に異能は使えないのか、使う抜け道はないのか。調べてみたい。
昇級試験で装着したあの腕輪は抜け道もクソもなく異能の使用はできなかった。まぁ、負荷をかけたらどうなるのか色々と試せなかったから完全に使用できないかは断定できてないんだけど....。
実験したかったが貴重品だからってすぐに回収されちゃったらしい。僕は熱で意識がなくて気づいたら外されていた。1年生全員に配るくらいなら1個くらいくれてもいいだろうに....。本当に貴重品なのか疑わしい。
ま、その話は置いといて。
懲罰棟はあの腕輪と同じ材料で建てられていると聞いた。中に入るチャンスがあるなら色々と試したい。シリアルキラーに会うなんて御免だからそれはトサカ君に任せて、僕は隅っこで研究を....と考えているんだけど。
「トサカ君の邪魔はしませんから。中を見学させてください」
「邪魔はしないって....手伝う気ゼロだろお前。それに懲罰棟に入るには緋賀さん――委員長の許可がねぇと....」
「風紀の副委員長が懲罰棟内部を知らないって結構問題じゃないですか?何かあったとき『勝手が判らなかったので対応出来ませんでした』じゃ、委員長の顔に泥を塗りますよ?」
「それはダメだ。案内する」
チョロいなぁ。
今の僕は生徒会だっていうのに....このチョロさ心配になる。
内心そう思っていると、前方から見覚えのある顔が歩いてくるのが見えた。
「文ちゃん!」
「ん、ああ。燈弥君か」
歩いてきたのは花束を手に持った文ちゃんだった。ピンク色の小さな花が集まった、見たことの無い花が10本ほど紙にくるまっている。死んだ瞳をしていなかったら文ちゃんの見た目と相まって、とても儚く見えただろう。
しかし綺麗なものを見たと気を良くしていた気持ちは、近づくにつれ鼻孔をつく臭いによって萎む。
なんだろう、この生乾き臭は.....
隣を見れば、トサカ君の顔も僕と同じように歪んでいた。眉間も寄っていて、なんだか威嚇してる鶏みたい.....そんな鶏見たことないけど。
「文ちゃん....その花は?」
「これ?.....ああごめんね、臭いよね」
「はぁ、確かにいい匂いとは言えませんが……誰かに差し上げるのですか?」
聞けば、ポッと赤く染まる頬。
なるほど、野暮な質問だったようだ。
「ああ、答えなくていいです。しかし、あげるにしては些か臭いがキツイのでは?」
「大丈夫大丈夫。どうせ外に置く花だから....っと、私は行くね。急いでるわけじゃないけど、早く行ってあげたいから」
「ラブラブじゃないですか。.....こちらこそ引き止めてすみません。いつか文ちゃんの大切な人のことを教えてくださいね」
「大切な人.....ふ、ふふ。くすぐったいなぁ。うん、いつか絶対に紹介するよ」
はぁ....恋する文ちゃんが可愛い。
こういうマトモな恋愛を見られるのは嬉しいなぁ。尊い。
僕は文ちゃんの背中が見えなくなるまで見送ると、トサカ君に待たせたことを謝りながら向き直る。
しかし、彼は依然と眉を寄せた――苦虫を噛み潰したような顔をしていた。歪められた茶色い瞳は文ちゃんが消えていった廊下先をじっと見ている。
「トサカ君?.....あの花の臭い、そんなにキツかったですか?」
「あ、いや.....なんでもねぇ。さっさと懲罰棟に行こうぜ」
「.....はい、そうですね」
なんだか気まづい雰囲気が漂う。流石にあんな顔を見て『なんでもない』と言われ納得出来るほど、僕は鈍感じゃない。
だからといってここでさらに突っ込んだ質問をしても面倒くさそうだから.....よし、話を変えよう。
「.....牢の移動をすると言ってましたが、鍵とかは持ってるんですか?平の風紀委員が管理しているとは思えないのですが」
「あ.....」
「え?」
「牢の鍵がねぇと開けることできねぇ....つまり牢移動もできねぇ」
「トサカ君、鍵は受け取ってないんですね?その態度からして」
「っ、ここで待っててくれ!風紀に行ってあのおかっぱ先輩に聞いてくる!!」
「行ってらっしゃい」
猛スピードで駆けていくトサカ君を眺めて、やっぱ風紀は大変だなぁと他人事のように思う僕はきっと薄情な人間なのかもしれない。
32
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる