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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ
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しおりを挟む「おーい、家庭科室に練習しに行こーぜ燈弥!」
家庭科室という言葉に思わずお腹に手を当てる。
脳裏によぎるのは胃がもたれる程の物量。うっ、思い出しただけで胃が重くなる。
「あの、ちょっと今日はお休みしません?こう毎日あんな物を摂取してたら身体を壊しそうです」
「高校生の身体はそう簡単に壊れねぇよ?燈弥ってたまに変なこと言うよな」
「瀧ちゃーん.....助けてください」
助けを求めれば大きく揺れる身体。瀧ちゃんは嫌そうな顔を隠しもせず、僕に憐れみの視線を向けた。
「悪いが俺は料理担当じゃないからな。湊都の面倒は自分が見ると言っただろう?大人しく家庭科室へ行くしかないんじゃないか?.....頑張れ」
「宮野君、担当代わりません?」
「代わってあげたいのはやまやまなんだけど、学祭委員長に頼まれた美コン設営手配がねぇ....手が空いてないんだぁ」
「うっ、美コン.....燈弥!!早く家庭科室行くぞ!!このストレスを発散しねぇと!」
「宮野君~~~!?」
兎君の前で美コンは禁句でしょ!?
あっ、その笑みはワザとだな!?全くいい性格してるよ君は。
「はぁ、しょうがないですね。ケーキ君呼びますか」
料理といえば彼しか適任はいない。というか僕じゃなくてケーキ君を誘えばいいのに。なんで兎君はなんでもかんでも僕を指名するんだ。
まぁ、嬉しいけど....。
――兎君への僕の態度は変わらない。たとえ彼が同郷の人間だとしても、僕が彼にしてやれることは何も無いから。でも彼が彼らしく生活できるようできる限り手助けはしたいと思う。
彼が僕の生き方を阻まなければ……ね。
「ちぇー、なんでお化け屋敷じゃなくて喫茶店なんだよぉ。学祭の定番と言えばお化け屋敷じゃないのか?」
「ほら、驚いた拍子に異能を放つ生徒がいるかもしれないじゃないですか。平和に終わらすなら喫茶店が1番ですよ。かくいう僕は喫茶店に一票入れました」
「うわ、俺そこまで考えてなかった。確かにこの世界なら驚いた拍子に異能ブッパとか有り得るよな」
ほら''この世界''とか言わない。もうちょい危機感持とうよ兎君。ここに僕しかいないから良かったものを。
「またやってんのかよ....」
「将翔!!遅いぞ!」
ケーキ君合流。ここからは彼が兎君を指導してくれる。僕は味見役。
作るのは....ガトーショコラ、ワッフル、オムライス、たこ焼き。この四種類。
これらはクラスで何がいいか案を出し合っての結果だ。たこ焼きの場違い感が凄い.....。まぁケーキ君が言うにはガトーショコラも冷蔵庫保存で4~5日持つから作り置きができるし、ワッフルとオムライス、たこ焼きは簡単に作れるからいいチョイスだと。
「湊都は壊滅的に料理下手だな」
焼成中なのかオーブンの前でじっとガトーショコラを見詰めている兎君を置いて、ケーキ君が僕の傍にやってくる。
モッチー先生、御影先生、兎君と僕の4人で行ったたこ焼きパーティーでは、兎君は一切作るのに手を出してなかった。だから彼が料理下手なのを知ったのはつい最近。
「ま、湊都の不器用さを考えたら然もありなんってとこだが。で?なんでアイツは調理係を選んだんだよ」
「美コンで大勢の目に晒されるから、接客で消耗したくないそうです」
「あいつの性格的に接客より調理の方が消耗するだろ」
「それは言わぬが花というやつですよ」
「.....ん?そういえば風紀委員は見回りじゃなかったっけか。調理係なんてやってる暇あんの?」
「僕は見回りですよ。でも平の方達はシフト制なので、ずっと見回りってことはないです。それに....委員長が言うには理事長のコネで外部から警備を雇うとかなんとか」
「へぇ。燈弥も大変だな」
「まぁ見回りといっていますが、普通に楽しむつもりですよ僕は」
「お、なら絶対に俺のクラス来いよ」
「確かCクラスは....お化け屋敷でしたね。絶対嫌です。行きたくない。というか大丈夫なんです?危険では?」
「.....それは誰もが思ったことだ。お化け屋敷やって負傷者出した学祭もあったらしいし」
「なら尚更だめでしょう」
「萩野がゴリ押ししたんだよ」
「益々行きたくないですね」
ツギハギ顔がニヤニヤと癪に障る笑みを浮かべているのが容易に想像出来る。生徒会で滅多にクラスに顔出さないくせに、こういう時だけ出しゃばるのどうかと僕は思う。どうせ厄介事しか起こさないんだから大人しくしててくれないかな.....。
「Cクラスの皆さんは反対しなかったんですか?」
「燈弥....アイツ性格は壊滅的だが顔はいいんだ。結構な信者いるぞ」
「彼のどこに信じる要素が??疑う要素しかないでしょう!」
「とっくに根は回ってたってことだ。.....俺のクラスに来るの楽しみにしてるからな」
「.....ケーキ君ノリノリですね」
「はっはっは」
誰かー、タチの悪い愉快犯がここに居ますぅ
捕縛して懲罰棟にぶち込んでくださーい
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