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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ
《side 1-A》
しおりを挟む湊都はやっと落ち着いた注文に汗を拭う。いきなりたこ焼きの大量注文が入った時は死ぬかと思った。
「仁美まじシバく.....」
風紀の仲間を恨みながらも顔はどこか満足げ。それは誰よりも手際よく綺麗な形のたこ焼きを作れるようになったから。味?味は芙幸が絶賛していたため心配していない。
「数を作れば不器用な湊都でも上手になるんだねぇ。救いのある不器用で良かった良かった」
「救いのない不器用が居るのか....??」
芙幸はそっと目を逸らした。それが答えらしい。
「それにしても、手伝ってもらって悪いな。芙幸担当入ってないのに」
「いいのいいの。どうせ暇だったし。燈弥君と回るよか湊都と一緒に居た方がいい」
「なんで!?と、燈弥のことが嫌いなのか!?」
「なんでそういう考えになるのw燈弥君と一緒にいると古参組ばかり寄ってくるじゃん。湊都の嫌いなあの双子とか」
「アっ.....」
「んふふふ~。......燈弥君最近マジやばい」
「まぁ燈弥なら大丈夫っていう謎の安心感があるから心配はしてないけど」
「湊都は巻き込まれないようにね」
「......芙幸の弟ってどんなの?そんな過保護になるくらい怪我が多かったのか?」
薄々気になっていた。湊都に似ているという''芙幸の弟''という存在に。度々芙幸の口から''弟''という単語が出てくるが、その時の芙幸はとても優しい表情で......湊都を通してその弟を見ているんじゃないかと思うくらい遠い目をしている。
「怪我か......ん~......どうだったっけ?あ!でも潰れたね!!うん潰れた。んふっ、ふふふっ、ぺしゃんこだ。ぐちゃぁっと。べしゃぁっと。苦しかったろうなぁ。痛かったろうなぁ。悲しかったろうなぁ。寂しかったろうなぁ。んふ、んふふふふっ」
「な、もっ、もういいから!」
急に異様な雰囲気を纏った芙幸に湊都は慌てて会話をやめさせた。内容も内容だが湊都は話している時の芙幸の目にゾッとした。いつもの弟を思うような優しい光はなく、愛憎の混じった暗い瞳。
その暗い瞳は弟に向けているのだろうか?
芙幸の言葉からは弟が惨たらしく死んだということしか読み取れなかった。
「もういいの~?.....ふふっ、久しぶりに思い出したぁ.....ふふっ、ふう''ぅ''.....ぐすっ」
「!?!?」
湊都はギョッとする。芙幸がいつものように笑ったため安堵したが、次の瞬間には目から大粒の涙を流し始めたのだ。
あわあわと芙幸の背をさする。それが引き金になったのか、芙幸は本格的に泣き始めてしまった。
「ごめん!嫌なこと思い出させちまった.....ほんとごめん!!」
ぎゅーっと芙幸を抱きしめ落ち着かせようとする。万人に効くその対処法はもちろん芙幸にも効果があった。幼子のように泣いていた芙幸の嗚咽は次第に小さくなる。
虚ろな表情。焦点のあっていない瞳。
.....泣き止んでも芙幸の様子はおかしいままだった。
「芙幸?おーい......ダメだ、反応しねぇ。くそっ!何やってんだ俺....」
学園祭という楽しい行事中なのに友人を泣かせるなんて。湊都は自身の迂闊さに歯噛みした。芙幸が家族関係の話を避けていたのを知っていたのに、それをつつくなんて....数分前の自身を殴り飛ばしてやりたい。
そう悔いていると近くから視線を感じた。
顔を向ければ、いつの間にか焦点のあった目でこちらを見詰める芙幸が居た。
――湊都を見詰めるその瞳は依然として暗い。
「.....釣り好きの父。不器用ながらも料理が大好きな母。可愛くて優しい弟。湖にピクニックに行った。次の日も幸せがずっと続くと思ってた」
「芙幸っ、もういいから!!止めろ!」
「でも、でも潰された。全部ぜーんぶ潰された。僕の幸せは殺されたんだ」
「芙幸!!」
抱き締めようとしたが拒まれる。逆に目をそらすなというように芙幸は湊都の肩に手を置いた。
湊都は泣きたくなった。それはあまりにも....あまりにも自身を見つめる芙幸の表情が悲しみに満ちていたから。
「憎い。憎い憎い憎い。殺したい。惨たらしく殺したい。殺したいと思って当たり前だよね。復讐したいと思って当たり前だよね」
「そんなの死んだ家族は────」
「────ああ!!もうこんな時間!?湊都~、自由時間だよお。他のクラス周りに行こ!!」
「へっ?ぁ、っちょ!?はぁ!?!?」
言い募ろうとしたが、ガラリと変わった芙幸の態度に言葉は続かず湊都は目を白黒させる。さっきまでの不安定さが嘘みたいな''いつもの芙幸''。その姿を不気味に思うも、芙幸のいつもの様子に話を蒸し返さない方がいいだろうと湊都は判断し、口を閉じる。
「あ、そうそう........湊都は僕の目の前で死なないでね。....置いてかれるのはもう嫌だから」
「っ!?!?」
作ったように吊り上がる口元に、再び変貌する暗い瞳。
向けられた顔に湊都は息を飲んだ。
《side end》
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