狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ

《side 緋賀 永利》

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一条を見失った。あの神崎の異能に気を取られたスキに逃げられた。

また.....また俺はしくじったのか?

ただ突っ立っているだけで、なんの役にもたっていない。弥斗はどこかへ消え、一条は未だに生きているのかも不明。


「一条....」


一条はどこだ。アイツがいれば俺はまだ大丈夫....だから一条を探さなければ。


​───弥斗の目に俺は映ってなかったんだな


「っ」


滲むようにじわじわ侵食してくる負の感情。ソレを振り払うようにかぶりを振った。


​───弥斗も、一条も消えた


振り払えない。声は頭の中で木霊する。
フラつく。視界が歪んだ。


​───誰も居なくなった


「ぐぅ....!!」


息を、息をしろ。落ち着け。まずは一条を探すんだ。そうすれば……大丈夫......大丈夫??
何が大丈夫になるんだ?現状は変わらないのに?
人を殺して、真実に蓋をして、見知らぬ顔をして、耳を塞いで、他人を脅して、誘導して、殺して、殺して、嘆きを黙殺して、希望を踏み潰して、また殺して、また手を赤に染めて.....


咄嗟に口を覆う。
何かが喉元をせり上がってくる。胃がひっくり返ったような気持ち悪さに目眩がする。



「下を向くな」


崩れ落ちそうだった身体は、しかし誰かに腕を掴まれなんとか持ち直す。
耳鳴りがする。誰が俺に声をかけている?
身体が怠い。俺を掴んでいるのは誰だ?

顔をやっとのことで上げると、視界には見たくもない顔が映った。


「下を向くな。弱みを見せるな。しゃんと立て。そう教えただろ?」


永将だった。呆れたような目が俺を貫いている。その目が細まった。
永将の赤い瞳が失望の色に染まった。

たまらず目を逸らす。

――そんな目で俺を見るな!俺はお前の駒じゃない!

言いたい言葉は噛み締めた唇に塞がれ消えていった。


「こっちを見ろ」


その命令に反射的に身体が反応した。
あぁ、なんて情けない。こんな姿、一条に見せらんねぇな。今だけは一条に会いたくない。こんな姿を見たらあいつだって失望する。
.....弥斗に見捨てられ、一条にも見捨てられたら俺は、俺はっ.....


「ったく....さらに不安定になってるじゃねぇか。マジであいつは緋賀にとって害でしかねぇな。殺すべきだったか?....チッ、癪だが伝えておく。一条 燈弥は無事だ」


一条が無事.....?


「っ、何処にいる!!」

「まずは責務を果たせ。この混乱を収めろ」


クソっ!!
今の状況は!?
青い鳥籠.....神崎か。触れなきゃ無害な鳥籠だ。生徒と外部の客を誘導して――


やるべき事を考えていると、ふいに青い鳥籠が消え失せた。アイツが解除したのか?
.....それならそれでいい。怪我人を集めて保健委員に引き渡せばいいだけだ。とりあえず風紀委員を招集するか。


「永利」


この場から離れようとしたら呼び止められた。


「......なんだよ」

「年末は帰ってこいよ。集会がある」

「テメェが出ればいいだろ」

「今回は子息同士だそうだ」

「......」

「じゃあな永利」


永将の姿が完全に消えると、すぐにスマホを取りだし登坂に電話する。


『緋賀さん!?無事ですか!?今どこです?合流しましょう!俺は今グラウンドに.....』

「怪我人を保健室に連れていけ。連れていくのが困難な場合、神谷を連れてこい」

『はい!緋賀さんはどうし​────』


通話を切る。
本校舎に走りながら次いで一条に電話をかける。


​─────Prrrrrrrr

「.....」

​─────Prrrrrrrr


焦燥が身を焼く。


​─────Prrrrrrrr


早く、早く出てくれ。
声を聞かせてくれ。.....頼むっ


​─────Prrrrrrrr

















​─────おかけになった番号は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません。

​─────番号をお確かめの上、もう一度おかけ直しください








「.......あ?」


頬を伝う濡れた感触に足が止まる。
視界が滲んでいた。咄嗟に目元を拭えば指が濡れた。


「な、んだよ、これ......」


顔を隠すように手で覆い背を丸めれば、それは地面にポツポツと数滴落ちる。瞬きをする度に地面を色濃く染めていく。


なぜ、こんなものが流れているのか
なぜ、こんなにも胸が痛いのか

俺にはさっぱり分からない。


「......一条を探さねぇと」


それでも一条に会いたくて。




「っ、」



だが言葉とは裏腹に、俺の脚はその場から一歩も動けなかった。












《side   end》

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