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第十四章 死を願うより生きる痛みを
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しおりを挟む先輩に明後日の約束を取り付けた後、僕はひとり自室に戻った。
しかし部屋に入るとそこには居るはずのない男達が2人。ソファに背を預けて我が物顔でくつろいでいた。
「君達から合鍵を貰わないとですね。寄越せ」
「そんな怒るなよ」
「君ら出禁」
外にへと続くドアを指さしながらサマ臣君と弟君に言い放つ。よくもまぁぬけぬけと僕の前に現れたね。言うまでもないと思うけど僕はキレてるよ?
「.....案外普通だな」
「だなぁ~」
僕の顔を見てどう判断したらそうなるのか。一応さっき泣いたぞ僕。
「出てけって言ってるんだけど.....はぁ、なに?僕の顔を確認しに来ただけなら鍵置いてとっとと帰ってよ」
「おいどうすんだよ雅臣。燈弥ちゃん全然弱ってないぜ」
「身内が死ぬくらいじゃ余裕ってか。さすがは燈弥」
2人の言葉にプツンと何かが切れた。
「弱ってるし余裕じゃないよ!!!!!好き勝手言いやがって巫山戯るなッッ!!君があのキャベツに協力しなければ!君があのクソ野郎を止めていればあんな事には────」
その先はグッと歯をかみ締めて耐える。こんな事言ってもこいつらにはなんにも響かない。ああもう.....せっかく気分転換したのに、また引き戻された。自己嫌悪に浸かっているような最悪の気分。
「お、なら慰めて――」
「いらない」
「じゃあ甘やかし――」
「要らない!出てけッ!!」
なぜ僕の神経を逆撫ですることを言うのか?
いや、わざと?何が狙い?....っ、胃がムカムカしてきた。
もう、どうでもいい。心乱されるのはたくさんだ。
両手にリッパーを握り持つ。
すると2人の顔つきが変わった。ひとりは楽しそうに笑顔輝かせ、もうひとりは引きつった焦り滲む表情で立ち上がった。
「と、燈弥ちゃ~ん。見てくれよこれ。おれっち両手火傷しちまったんだぜ。包帯ぐるぐるでチョー痛々しくね?」
「僕になんの関係が?」
下手くそに巻かれた包帯の隙間から赤く腫れ上がった皮膚が見え、同時に薬品の匂いが鼻をツンと突いた。....でも、だから?
弟君を真っ直ぐ見上げる。彼は口をモゴモゴ動かし「う~」やら「あ~」やら呻いている。その間、目は全く合わなかった。
僕は双剣の柄を力強く握る。サマ臣君はともかく弟君は一線を越えた。
(彼が居なければ僕は文ちゃんもチビちゃんも止めることができた。2人が死んだのは彼のせいでもある。だから迷うな、戸惑うな。刃を突き立てその命を絶て。じゃないと2人に顔向けできないだろう?)
頭の中で感情が捲し立てるように騒ぎ、その感情の奔流に僕は敢えて抵抗しなかった。
リッパー握る腕が微かに上がる。
「......ごめんなさい。この火傷に免じて許して?....だめ?」
誠意の欠片もないムスッとした横顔に『謝ったから許してよ』とでも言うようなふてぶてしい態度。こちらに顔を向けないのは僕の反応が怖いのが半分、自分はそこまで悪くないという反抗心が半分.....かな。
は、はは
────ガシャン....
手から双剣が滑り落ちた。
弟君を直視出来なくて、流れ落ちる涙を隠したくて、
僕はその場に蹲った。
弟君の謝り方が....あんまりにもチビちゃんに似ていて.....似すぎていて、懐かしさと喪失感に胸が締め付けられた。
僕は、この先もふとした瞬間にチビちゃん達を思い出してこうやって泣くのだろうか?そうだとしたら今すぐにでもこの喉を掻っ切って死にたい。だって、そんなの耐えられない。
辛くて、苦しくて、悲しくて、哀しくて、苦しくて、苦しくて苦しくて....
――あぁ、でもそれが僕が受けるべき罰だと言うなら.....死ねない。ユーベラス倒壊、一条 燈弥という人生のためにも。
罰を受け続けるために生きなければいけない。
「雅臣、おれっちかつてないほど心臓バクバクしてるんだけど。燈弥ちゃんが泣いたのもしかしておれっちのせい?」
「そりゃお前のせいだろ。そんなふざけた謝り方すれば誰だって泣く」
「えぇ.....この火傷だけじゃ足りなかった?」
頭上で交わされる的外れなやり取りに自然と口元が緩む。この双子はきっと喪失感なんてものや、罪の意識なんてものを感じることは一生ないんだろう。自分のせいで片割れが目の前で死んだとしても笑って拳を振るう姿が目に浮かぶ。
「.......もう、いいよ」
「えっ、許してくれんの!?」
ここで君を裂いても死体がひとつ増えるだけ。それに冷静に考えたらやはり大部分の原因は僕にある。.....八つ当たりをしてこの辛さと悲しみと苦しさを軽くするつもりは無い。
「ふぅ」と小さく息を吐き出してメガネの下の涙を拭う。まだじくじくと胸が痛むが構わず立ち上がった。星菜先輩の案件も、クソキャベツ野郎の報復もこの後控えている。くよくよするのは一旦ここで終わり。
「許す。だけどしばらく出禁ね。.....包帯巻き直してあげるから、終わったら鍵置いて出てって」
「ん」
ソファに座った弟君の隣に腰を下ろして差し出された手を取る。僕の出禁発言にごねることなく大人しく従う彼の姿に引き際はいいんだよなと苦く思う。
「どうしたの、この傷」
下手くそに巻かれていた包帯を解いていくと痛々しい火傷跡が現れた。さっき火傷に免じて許してって言ったから.....つまり自分で焼いたの?
その時、僕の背を押し潰すようにサマ臣君がもたれかかってきた。とっさのことで思わず弟君の手をギュッと握る。
「ぎっッッ!!!い''ぃ''っ、う''ぅぅ~」
「ごめん弟君!わざとじゃない。全然わざとじゃないからね。...ちょっとサマ臣君なんでこんな狭いところに――うわっ」
「火傷の理由?かっかっか!聞いてやるな燈弥。ただ自分が気持ちよくなるための自傷行為だ」
サマ臣君に場所を横取りされて仕方なく場所を移そうとしたら、サマ臣君の手に捕まって脚の上に座らされた。
腹に手が回りグッと距離が近くなる。.....もう慣れた体勢だ。
さして突っ込まず大人しく弟君の包帯を巻き直す。あ、そうそう....
「なんで自傷行為?」
「貸しを返すこと優先して颯希の思惑通りに事を進めちまったそのお詫び」
「うぅ~ごめんね燈弥ちゃん。颯希があそこまで燈弥ちゃんのことどうでもいいと思ってたなんて知らなかったんだよぉ」
「あのキャベツが執着してるのはこの見た目だからね..........キャベツ野郎の報復どんなのがいいと思う?案次第では2人の出禁無くしてもいいよ」
包帯を巻き終わったがサマ臣君の手が僕から離れないため、仕方なく妥協案を提示する。僕の出禁発言は弟君だけでなく傍観者だったサマ臣君も入っている。それを感じ取ったからこういう風に僕を拘束するような体勢をとったのだろう。
弟君に甘いのか、はたまた自分も出禁食らうのが納得いかないのか....どっちだろうね?
あぁ、もちろんいい案がなければ2人ともしばらく出禁だ。この件に関して妥協は一切しない。
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