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番外編 内緒のバイトとやきもちと
9
(嫉妬も自分でいられなくなるようなこの感覚も、俺の中だけで起こっていることだ。それを面に出して、卯乃を怖がらせちゃ駄目だ。卯乃も柔らかなウサギ。大切に包み込んで、守ってあげないと)
そうしている間に今度は卯乃が彼らの元にオムライスらしきものをもって現れた。
そしてちらり、と深森に視線を送る。一瞬だけ視線がかみ合った気がしたが、すぐに逸らされた。それに僅かに傷つく自分に驚く。
卯乃から目が逸らせない。見つめる深森に気が付いているのかいないのか、白い頬が桃色に染まっていて恥ずかしそうにしているのが妙にエロイ。
(今晩覚えてろよ、卯乃。一晩中、離してやらないからな)
卯乃はオムライスの乗った皿をテーブルの上に置くと、銀のトレイを小脇に抱えて両手の甲をくるりんと丸めた。そしてその場でちょっとだけ飛び上がる。ぷるんっと愛らしい口の形を見たら「ぴょん、ぴょん」といっているようで、あまりの可愛さに深森は心臓が射貫かれてしまった。
(こ、殺す気か)
卯乃の愛らしさは重々熟知していたはずだが、これは不意打ちすぎる。
だが恋人である自分だけでなく、男子高生に対してもその癒し効果は絶大だったようだ。明らかにメロメロという感じで卯乃を見上げている。けれど、ケチャップを手に取って何やら描こうとしている卯乃はそんなよこしまな視線に気づかない。深森だけがガラスの向こう側でやきもきしてしまう。
一つ目を書いた後、明らかにそわそわしていた卯乃の手元が狂い、ケチャップが前に座る少年の服に飛んでしまった。
卯乃はそれはもう可哀そうなほどに青い顔をして、おしぼりを手に取ると少年の服をめくって染みを拭い始めた。
明らかに少年が息を飲むのが分かった。卯乃のつむじを見下ろす顔に明らかに喜色が浮かぶ。深森は膝に置いた拳を握りしめる。
(あいつ、明らかに、卯乃に気があるだろ)
あろうことか卯乃の手を握ってきた。立ち上がって部屋を飛び出しかけた深森を、兎を抱っこしたまま友人が窘めてきた。
「おい、深森。人でも殺しそうな顔してるぞ。ちょっと落ち着け。向こう出ていくんならお前が抱っこしてた兎をちゃんとお姉さんに返してからいけ」
友人のもっともな意見にぐっと唸った深森は罪のない兎を抱き上げる。ブドウの粒のように黒々とした瞳がじっと深森を見つめてきた。
「ウサギが可愛いのは罪じゃないだろ。誰がどう見たって可愛いんだから」
どっちの? と聞かずとも友人はまたあの訳知り顔でニヤリとするばかりだ。ロップイヤーの兎は鼻をひくひくさせながらじっと深森に身体をゆだねてくれている。柔らかく温かな体温が伝わってきて荒ぶる心を押しとどめてくれる。
(はじめは男に嫌悪感があった卯乃が、男の俺を選んでくれたんだ。卯乃を信じよう)
ふと見たら高校生が席を立って店を出ていくところで、それを追いかけるように卯乃も店を飛び出していくところだった。
「でもまあ、可愛い子は誰でも欲しがる。そこは守んないとなあ?」
今度は煽り立ててくる友人に「お前、友達止めるからな」と凄んだ後、深森はウサギを彼に預けてふれあいルームから飛び出していった。
そうしている間に今度は卯乃が彼らの元にオムライスらしきものをもって現れた。
そしてちらり、と深森に視線を送る。一瞬だけ視線がかみ合った気がしたが、すぐに逸らされた。それに僅かに傷つく自分に驚く。
卯乃から目が逸らせない。見つめる深森に気が付いているのかいないのか、白い頬が桃色に染まっていて恥ずかしそうにしているのが妙にエロイ。
(今晩覚えてろよ、卯乃。一晩中、離してやらないからな)
卯乃はオムライスの乗った皿をテーブルの上に置くと、銀のトレイを小脇に抱えて両手の甲をくるりんと丸めた。そしてその場でちょっとだけ飛び上がる。ぷるんっと愛らしい口の形を見たら「ぴょん、ぴょん」といっているようで、あまりの可愛さに深森は心臓が射貫かれてしまった。
(こ、殺す気か)
卯乃の愛らしさは重々熟知していたはずだが、これは不意打ちすぎる。
だが恋人である自分だけでなく、男子高生に対してもその癒し効果は絶大だったようだ。明らかにメロメロという感じで卯乃を見上げている。けれど、ケチャップを手に取って何やら描こうとしている卯乃はそんなよこしまな視線に気づかない。深森だけがガラスの向こう側でやきもきしてしまう。
一つ目を書いた後、明らかにそわそわしていた卯乃の手元が狂い、ケチャップが前に座る少年の服に飛んでしまった。
卯乃はそれはもう可哀そうなほどに青い顔をして、おしぼりを手に取ると少年の服をめくって染みを拭い始めた。
明らかに少年が息を飲むのが分かった。卯乃のつむじを見下ろす顔に明らかに喜色が浮かぶ。深森は膝に置いた拳を握りしめる。
(あいつ、明らかに、卯乃に気があるだろ)
あろうことか卯乃の手を握ってきた。立ち上がって部屋を飛び出しかけた深森を、兎を抱っこしたまま友人が窘めてきた。
「おい、深森。人でも殺しそうな顔してるぞ。ちょっと落ち着け。向こう出ていくんならお前が抱っこしてた兎をちゃんとお姉さんに返してからいけ」
友人のもっともな意見にぐっと唸った深森は罪のない兎を抱き上げる。ブドウの粒のように黒々とした瞳がじっと深森を見つめてきた。
「ウサギが可愛いのは罪じゃないだろ。誰がどう見たって可愛いんだから」
どっちの? と聞かずとも友人はまたあの訳知り顔でニヤリとするばかりだ。ロップイヤーの兎は鼻をひくひくさせながらじっと深森に身体をゆだねてくれている。柔らかく温かな体温が伝わってきて荒ぶる心を押しとどめてくれる。
(はじめは男に嫌悪感があった卯乃が、男の俺を選んでくれたんだ。卯乃を信じよう)
ふと見たら高校生が席を立って店を出ていくところで、それを追いかけるように卯乃も店を飛び出していくところだった。
「でもまあ、可愛い子は誰でも欲しがる。そこは守んないとなあ?」
今度は煽り立ててくる友人に「お前、友達止めるからな」と凄んだ後、深森はウサギを彼に預けてふれあいルームから飛び出していった。
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