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ミモザの恋が実る時
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なんだか興奮しているお姉さんの勢いに押され気味だ。
「買おう、それ、買おう、ぜったい。俺と出かけるときに着てきて欲しい」
何て瑞貴まで無責任に後押ししてきたぞ。瑞貴にしては、すごく、ぐいぐいくる。
(珍しいな。でも、一緒に出かける時にこのコーデか。いいかも)
プチプラ系の店だから今手持ちのお金で買えないこともないし、ここまで絶賛されたのなら買うしかなさそうだ。
「じゃあ、お揃いでこのキャップも……」
お姉さんが俺の頭にも瑞貴と同じ帽子をかぶせようとした。そしたら瑞貴が凄い早業で自分が被っていた方のキャップを俺にかぶせてきた。流石にぎょっする。
(なんか、こいつ今日おかしくない?)
「わっ! 急にぎゅうってかぶせるなよ」
「ああ、ごめん」
帽子を一度とると、瑞貴が優しい手つきで俺の髪の毛を撫ぜたり前髪を横に流したりして整えてくれた。
科学の実験でもしているみたいに真面目な表情がなんだかおもしろい。中学の頃もよくこれやられてたなあ。
友達からは「お前ら距離感バグってる。付き合ってんのか」ってからかわれたし、女子からは「桜場ばっか、大窪君に甘やかしてもらってずるい」ってやっかまれた。
そのたび俺は毎度心の中では(ほっとけ。小さい頃はむしろ俺が瑞貴のお世話してたんだよ。小学生の頃瑞貴はズボラでおっとりしたやつで、寝癖そのまんまで登校してきてたのを俺が直してあげてたんだからな!)って思ってたっけ。
俺たちはさ、その頃から全然変わっていない。そのまんま、だ。
ずっとこんな距離感。お互いが手に届く距離にいるのが普通で、なんも変わってない。
だけど瑞貴の背が伸びて格好よくなったら、やたら外野がうるさくなったのは面倒だったなあ。
距離が近いといえば、高校に入ったばかりの時、俺がネクタイがしめられなくって瑞貴に締め方を教えて貰ったことも思い出した。
あの時は正面からじゃなくて後ろからハグされるみたいな体勢で鏡を見ながら教えて貰った。
ネクタイと一緒に手も取られても、俺があんまり上手じゃないから、何度も何度も根気強く巻きなおして、瑞貴からなんかいい匂いがしてた。
多分瑞貴の家のラグジュアリーって感じの柔軟剤の香り。たまに頬に髪が当たってくすぐったくて俺が笑って逃げようとしたら、何笑ってるんだってぎゅうって抱き着かれた。
あの時もう瑞貴の方が五センチぐらい背が高くなってたから、背中に逞しくなった身体を感じて、低い声で「逃がさない」なんて囁かれたら、なんだか瑞貴すごく大人っぽくなったなあってドキドキしたっけ。
(ドキドキしたなあ、あの時も……)
なんて思ってから正気に返る。ああ、なんか俺も今日は変。色々思い出す。
お姉さんが瑞貴の肩越しに口元に手を当てて「うんうん分かるよ」、みたいな顔で頷いている。
なんだろう。お姉さんのその不思議な表情。
俺らの距離感、やっぱ変? それにしては優しい目つきでニコニコしてる。多分変だとは思われていないけど、明らかに男子高校生なのに、友達にお世話されてるのが微笑ましいとかそんな感じなのかな。
「おい、もういいって」
ちょっと流石に居心地悪くなって、ぎゅっと瑞貴の胸に手をついて身体を少し向こうに押して俺は唇を尖らせた。なんか恥ずかしいだろうが。
「キャップは……、俺はいっかな」
「そうか」
着替えに行って買い物袋を提げて瑞貴のところに戻った。
「手、だして」
何だか神妙な顔つき。
「なに?」
俺は勢いよく素直に右手を差しだした。
「逆がいいかも」
「え、ああ」
腕を変えたら手首に何やらまかれた。じっと瑞貴の次の動きを見つめてた。俯いてる瑞貴の長い睫毛、高い鼻梁、カッコイイなとか思ってたら、俺の手首にはいつの間にか目の前に鮮やかな赤いブレスレットがきらーんて感じに巻かれていた。
「え、これ……、今買ったの?」
「買おう、それ、買おう、ぜったい。俺と出かけるときに着てきて欲しい」
何て瑞貴まで無責任に後押ししてきたぞ。瑞貴にしては、すごく、ぐいぐいくる。
(珍しいな。でも、一緒に出かける時にこのコーデか。いいかも)
プチプラ系の店だから今手持ちのお金で買えないこともないし、ここまで絶賛されたのなら買うしかなさそうだ。
「じゃあ、お揃いでこのキャップも……」
お姉さんが俺の頭にも瑞貴と同じ帽子をかぶせようとした。そしたら瑞貴が凄い早業で自分が被っていた方のキャップを俺にかぶせてきた。流石にぎょっする。
(なんか、こいつ今日おかしくない?)
「わっ! 急にぎゅうってかぶせるなよ」
「ああ、ごめん」
帽子を一度とると、瑞貴が優しい手つきで俺の髪の毛を撫ぜたり前髪を横に流したりして整えてくれた。
科学の実験でもしているみたいに真面目な表情がなんだかおもしろい。中学の頃もよくこれやられてたなあ。
友達からは「お前ら距離感バグってる。付き合ってんのか」ってからかわれたし、女子からは「桜場ばっか、大窪君に甘やかしてもらってずるい」ってやっかまれた。
そのたび俺は毎度心の中では(ほっとけ。小さい頃はむしろ俺が瑞貴のお世話してたんだよ。小学生の頃瑞貴はズボラでおっとりしたやつで、寝癖そのまんまで登校してきてたのを俺が直してあげてたんだからな!)って思ってたっけ。
俺たちはさ、その頃から全然変わっていない。そのまんま、だ。
ずっとこんな距離感。お互いが手に届く距離にいるのが普通で、なんも変わってない。
だけど瑞貴の背が伸びて格好よくなったら、やたら外野がうるさくなったのは面倒だったなあ。
距離が近いといえば、高校に入ったばかりの時、俺がネクタイがしめられなくって瑞貴に締め方を教えて貰ったことも思い出した。
あの時は正面からじゃなくて後ろからハグされるみたいな体勢で鏡を見ながら教えて貰った。
ネクタイと一緒に手も取られても、俺があんまり上手じゃないから、何度も何度も根気強く巻きなおして、瑞貴からなんかいい匂いがしてた。
多分瑞貴の家のラグジュアリーって感じの柔軟剤の香り。たまに頬に髪が当たってくすぐったくて俺が笑って逃げようとしたら、何笑ってるんだってぎゅうって抱き着かれた。
あの時もう瑞貴の方が五センチぐらい背が高くなってたから、背中に逞しくなった身体を感じて、低い声で「逃がさない」なんて囁かれたら、なんだか瑞貴すごく大人っぽくなったなあってドキドキしたっけ。
(ドキドキしたなあ、あの時も……)
なんて思ってから正気に返る。ああ、なんか俺も今日は変。色々思い出す。
お姉さんが瑞貴の肩越しに口元に手を当てて「うんうん分かるよ」、みたいな顔で頷いている。
なんだろう。お姉さんのその不思議な表情。
俺らの距離感、やっぱ変? それにしては優しい目つきでニコニコしてる。多分変だとは思われていないけど、明らかに男子高校生なのに、友達にお世話されてるのが微笑ましいとかそんな感じなのかな。
「おい、もういいって」
ちょっと流石に居心地悪くなって、ぎゅっと瑞貴の胸に手をついて身体を少し向こうに押して俺は唇を尖らせた。なんか恥ずかしいだろうが。
「キャップは……、俺はいっかな」
「そうか」
着替えに行って買い物袋を提げて瑞貴のところに戻った。
「手、だして」
何だか神妙な顔つき。
「なに?」
俺は勢いよく素直に右手を差しだした。
「逆がいいかも」
「え、ああ」
腕を変えたら手首に何やらまかれた。じっと瑞貴の次の動きを見つめてた。俯いてる瑞貴の長い睫毛、高い鼻梁、カッコイイなとか思ってたら、俺の手首にはいつの間にか目の前に鮮やかな赤いブレスレットがきらーんて感じに巻かれていた。
「え、これ……、今買ったの?」
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