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「上花会に出る気満々の癖に、相手がいない人なんて聞いたことがない。通りで俺と衣装を揃えようなんて意味わかんないこというと思ったよ。姉さん色んな人からひっきりなしに遊びに誘われてたよな? あいつらの中から申し込む奴いなかったのか?」
「それは全部断ったわ。遊びに行くには愉快な人がいいかもしれないけど、シュファの相手に見た目で勝てるような人はそういないもの。だから、ユーディア。よく聞きなさい。エドゥアルドが私を上花会のパートナーに誘うようにしむけてちょうだい」
「はあ? なんで俺が」
聞く耳すら持ちたくなくて踵を返そうとしたら、姉が爪を立ててぎりぎりと腕を掴んできた。
「待ちなさい」
いつかは彼の名前が出るとは思っていたが、いよいよ気乗りがしなくなった。ユーディアは姉の手を振り払って彼女を睨みつけた。
「……シュファに対抗するためだけに、エドと上花会に出たいのかよ」
「エドゥアルドったら未だに私にパートナーの申し込みをしないのよ。お祖父様が決めて下さった私の婚約者なのに」
まるで親友が一方的に悪いような言われ方だ。ユーディアの頬はかっと熱くなり、姉とよく似た形の眉をぴくりと動かした。
「婚約者かもしれないけど、エドと姉さんが親しくしていたことなんて、この数年一度でもあったか?」
「エドゥアルドは難しい話しかしないから退屈だけど、見た目は誰が見たって素敵だって思うでしょ。褐色の肌も逞しい背丈も黒髪も凛々しくて美しいもの」
「はー。そうかよ」
(姉さんは全然分かってない。エドの逞しさはお飾りじゃない。どんな荒地の人々も飢えから救うって目標を持って、植物の品種改良魔法を実地に出向いて調査して鍛えられているんだ。それを見た目がどうこうとか、本当に馬鹿馬鹿しい)
そう怒鳴りつけてやりたかったが、ぐっと堪えた。
「エドは質実剛健、武芸に優れた南部の一族出身で、今は植物学一直線だ。自分から女の子を誘うような性格じゃないだろ。そんなにいうならリリーが自分から誘えばいいのに」
「はあ? なんで第二百二十二期生で一番の美女である私が誘わないといけないのよ」
「リリーが遊び歩いて不誠実なことしてるから。エドはとっくに誰かべつの娘、誘ってるかもよ?」
親友と疎遠になるほどに。他の誰かに夢中なのかもしれない。
ずっと抱いていた疑念はユーディア自身、面白くない気持ちになって飲み込んだ。
だがその当てこすりも厚顔な姉には効かないようだ。
「ふん。エドゥアルドはまだ誰も誘ってないわ。石付きの鍵持ちの美形が誰を選ぶかは皆が注目してるから分かるのよ。一応、あんたもその端っこにいるみたいだけど。そんなちっぽけな石でも一応は石づき鍵だものね」
通常魔法使いの試験に受かったとして、初めは銀の鍵を手にするだけだが、上位の成績かつ、何かしら特殊な魔法を身に着けたものには魔石の付いた鍵が付与される。自分ではなく地味な弟が石付きの鍵を与えられてから、妬ましいのかリリールーのユーディアへの当たりは益々きつくなった。
姉がいちいち誰かと張り合って自分の方が上だと見せつけようとするのは、心の底で自分に自信が持てていない証拠だろう。小さな頃から強引で我儘ではあったけど、ここまでねじ曲がってはいなかった。満たされていないのが顔にでているからどうしてもシュファより見劣りする。
だが姉がどうしてこんな風になったのかユーディアには何となく分かるので余計に彼女を哀れに思った。
「それは全部断ったわ。遊びに行くには愉快な人がいいかもしれないけど、シュファの相手に見た目で勝てるような人はそういないもの。だから、ユーディア。よく聞きなさい。エドゥアルドが私を上花会のパートナーに誘うようにしむけてちょうだい」
「はあ? なんで俺が」
聞く耳すら持ちたくなくて踵を返そうとしたら、姉が爪を立ててぎりぎりと腕を掴んできた。
「待ちなさい」
いつかは彼の名前が出るとは思っていたが、いよいよ気乗りがしなくなった。ユーディアは姉の手を振り払って彼女を睨みつけた。
「……シュファに対抗するためだけに、エドと上花会に出たいのかよ」
「エドゥアルドったら未だに私にパートナーの申し込みをしないのよ。お祖父様が決めて下さった私の婚約者なのに」
まるで親友が一方的に悪いような言われ方だ。ユーディアの頬はかっと熱くなり、姉とよく似た形の眉をぴくりと動かした。
「婚約者かもしれないけど、エドと姉さんが親しくしていたことなんて、この数年一度でもあったか?」
「エドゥアルドは難しい話しかしないから退屈だけど、見た目は誰が見たって素敵だって思うでしょ。褐色の肌も逞しい背丈も黒髪も凛々しくて美しいもの」
「はー。そうかよ」
(姉さんは全然分かってない。エドの逞しさはお飾りじゃない。どんな荒地の人々も飢えから救うって目標を持って、植物の品種改良魔法を実地に出向いて調査して鍛えられているんだ。それを見た目がどうこうとか、本当に馬鹿馬鹿しい)
そう怒鳴りつけてやりたかったが、ぐっと堪えた。
「エドは質実剛健、武芸に優れた南部の一族出身で、今は植物学一直線だ。自分から女の子を誘うような性格じゃないだろ。そんなにいうならリリーが自分から誘えばいいのに」
「はあ? なんで第二百二十二期生で一番の美女である私が誘わないといけないのよ」
「リリーが遊び歩いて不誠実なことしてるから。エドはとっくに誰かべつの娘、誘ってるかもよ?」
親友と疎遠になるほどに。他の誰かに夢中なのかもしれない。
ずっと抱いていた疑念はユーディア自身、面白くない気持ちになって飲み込んだ。
だがその当てこすりも厚顔な姉には効かないようだ。
「ふん。エドゥアルドはまだ誰も誘ってないわ。石付きの鍵持ちの美形が誰を選ぶかは皆が注目してるから分かるのよ。一応、あんたもその端っこにいるみたいだけど。そんなちっぽけな石でも一応は石づき鍵だものね」
通常魔法使いの試験に受かったとして、初めは銀の鍵を手にするだけだが、上位の成績かつ、何かしら特殊な魔法を身に着けたものには魔石の付いた鍵が付与される。自分ではなく地味な弟が石付きの鍵を与えられてから、妬ましいのかリリールーのユーディアへの当たりは益々きつくなった。
姉がいちいち誰かと張り合って自分の方が上だと見せつけようとするのは、心の底で自分に自信が持てていない証拠だろう。小さな頃から強引で我儘ではあったけど、ここまでねじ曲がってはいなかった。満たされていないのが顔にでているからどうしてもシュファより見劣りする。
だが姉がどうしてこんな風になったのかユーディアには何となく分かるので余計に彼女を哀れに思った。
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