9 / 13
⑨一見穏やか獲物は逃さん狼さんと被毛にコンプレックスがある白狐さんの恋話
しおりを挟む
哀しみに胸を押しつぶされそうになりながら、僕は閉店間際の美容室に駆け込んだ。
「これ。誰にやられたの?」
コートの下に隠した尻尾があまりに哀れだったのだろう。狼獣人のお兄さんが押し殺した低い声を出す。
「彼氏……」
呟いたら涙がぽろっと膝上に零れ落ちた。
僕の彼氏は一見愛くるしい兎獣人だ。一応肉食ルーツの狐獣人だが気弱な僕と違い、威勢が良くて強引なところがある。でも大型獣人からは言い寄られて面倒だというので僕は定期的に僕の尻尾の被毛で毛玉を作りお守りと称し渡していた。
『激レアな白狐の毛玉、周りでも欲しい人多いんだよね。お願い』
愛らしい顔つきで被毛玉をもっとよこせとお願いされた。彼以外にあげるつもりはなかったけど、困って人の為ならと、ついいい顔をしてしまった。
だけど大学で白い被毛の毛玉が高値で出回ってると友達に聞き、問い詰めたら『誰かの助けになるなら、それでいいじゃんお前だって嫌って言わなかっただろ』そんな風に吐き捨てられた。
価値観の違いは薄々感じていたけどこれが決定的になった。
別れ話を切り出したら逆上され『じゃあ、尻尾毛よこすなら、別れてやってもいい』そういわれて哀しくて、もうどうでもよくなって頷いた。
すると相手も泣きながら鋏でじょきじょきっと尻尾の毛をめちゃくちゃに切られた。
僕はコートで隠しながら彼の家を飛び出し、この店まで何とかたどり着いた。
「艶々ふさふさの美尻尾だったのに……」
「いつも大神さんに手入れしてもらっていたのに、ごめんなさい」
「それは大丈夫。でもこれはひどすぎるね。尻尾をこんなにされて、怖かったよね?」
情けないけど、僕は震えながら頷いた。
大神さんが痛ましそうな目でこちらを見つめてくる。
彼は身体は大きい灰色狼の獣人だが、柔和な語り口調と丁寧な仕事ぶりが好感が持てる。気遣いのできる、とても優しい人だ。
『狼って怖がられがちだから。口調はちょっと柔らかくしてるんだ』
前にのんびり口調で犬歯を少しだけ見せて笑う。美しい琥珀色の瞳に宿る光は、真っすぐに覗き込むと確かにちょっと怖いけどいつも穏やかで
不思議な包容力のある人だ。
「ねえ、雪弥君。俺に獣型の姿、見せられる?」
「え……」
普通、恋人や家族というごく親しい人にしか獣になった姿を見せることはない。ドキっと戸惑い自分の腕を抱きしめる。大神さんは慌てた声を出した。
「被毛の様子が一番よくわかるのは、獣の姿だから。君が良ければ、俺の家で手入れをさせて欲しいんだ。こんな状態になった君を放っておけないよ」
大神さんの美容室は高校時代から憧れの場所だった。アルバイト代を握りしめて初めて足を踏み入れた時、緊張と期待で胸が躍った。それまで目立つ被毛が嫌でくすんだ色になっても構わないと、手入れを放棄し身をかがめて生きてきた。
でもそんな自分を変えてみたいと思ったのは、SNSで流れてきたビフォーアフター動画だった。美容院のカットで劇的に変化した人の笑顔が印象的で、その施術をした人が大神さんだった。『綺麗な色の被毛なんだから堂々と胸を張りなさい』と髪も尻尾も艶やかに整え、勇気づけてくれた恩人だ。
「大神さんになら……。お任せ、したいです」
その後はあっという間に店じまいをした大神さんの部屋まで連れて行ってもらった。美容室が入っている雑居ビルの最上階が自宅だった。
彼氏の部屋からコートと財布、携帯電話だけ持って着の身着のまま来た。情けないが、今になって足ががたがたと震えてきた。
「これを飲んで、ゆっくりでいいから」
温かなカモミールティーを差し出す彼の気遣いが嬉しく、静かに飲んだら少し心が落ち着いてきた。「狐の姿になります」意を決して獣の姿になると告げると、大神さんが正面からぎゅっと抱きしめてくれた。着やせするのか押し付けられた胸に逞しい筋肉の充溢を感じる。
広い胸の温かさにまた涙が零れた。僕は涙を見られまいと、彼の腕の中でするすると縮み、身体の被毛の豊かさに比べて醜い尻尾をした狐の姿になった。
「きゅーん」
情けない鳴き声を上げ、僕は丸く身を縮める。だけど彼には違ったようだ。
「雪弥くん、君はなんて、綺麗なんだろう。神々しいほどだ」
抱き上げられ耳のすぐそばで、感極まった彼の声が聞こえる。
「初めて会った時から、俺が君の事、気になっていたって言ったら、嫌かい?」
「きゅー、ぎょわ」
憧れの人からの甘い囁きに、変な声が出てしまった。
そこからはなんかいい香りのトリートメントで全身を揉みしだかれてトロトロになったところで恥ずかしくも前が兆してしまう。
あまりの事に慌てふためいて人型になって逃げようとしたら、後ろから抱きかかえられてちゅっと首筋に甘噛みをされた。人の身体でも犬歯が発達しているから、艶めかしい痛みがぞくっと走る。
「気持ちよくなっちゃった? そっちも、触ってもいい?」
あれよあれよという間に温かく大きな掌ですりあげられて、身を震わせる。嫌じゃないから身体の力を抜いて、僕はそのまま彼に身を任した。頭がぼーっとなって、このまま優しさに甘えるのが良いのか、彼を哀しみから逃れる薬にしているのではと考えたら胸が切なくて、でもあまりにも心地よくて。
大きな温かい大きな掌に吐き出したら愛おしそうにぎゅっとハグされた。
「好きだ。雪弥君。神秘的な白い被毛も、礼儀正しくて優しい性格も、はにかんだ笑顔も大好きだ。だけど高校生の君に手を出すのはって思っているうちに、君に恋人ができた。君が幸せならばそれでいいって諦めていたんだ。
でも君の事を大切にできない人に君を任せてはおけない」
初めてのカットの時、緊張でおどおどしていた自分に、鏡越しに優しく微笑んでくれた彼。人気のお店の憧れの美容師さん。
(大神さん、僕の事……)
想いの深さと情の強さに心がぎゅうっと押し流されて、彼の待つ岸辺に打ち上げられた。
その後彼と恋人同士になった。兎の元カレは『あの時は頭に血が上った。ごめん』といってへらへらと家を訪ねてきた。
でもちょうど一緒にいた大神さんが聞いたことのない怖ーい声で「帰れ」と一喝したらすごすごと帰っていった。
「雪弥君。ああいう、可愛い系が好きなんだね、俺、大きくて年上でごめん」
ちょっとしょんぼりと落ち込んだ大神さんも可愛い。背伸びして彼のシルバーブロンドの髪をわしゃわしゃしてから長身に飛びつくように抱き着いた。
「穏やかで心も身体も大きな貴方が大好きですよ」と。 おわり。
一見穏やか狙った獲物を逃がさない狼さんと被毛にコンプレックスがある白狐さんの恋話
こちらのお話は次の⑩と繋がっております。雪弥の元カレ視点です。
世界観(大学が一緒)のお話はkindleアンソロジーの
「甘えんぼウサちゃんの一生のお願い」と同じ獣人世界です。
https://amzn.asia/d/djSmeL0
「これ。誰にやられたの?」
コートの下に隠した尻尾があまりに哀れだったのだろう。狼獣人のお兄さんが押し殺した低い声を出す。
「彼氏……」
呟いたら涙がぽろっと膝上に零れ落ちた。
僕の彼氏は一見愛くるしい兎獣人だ。一応肉食ルーツの狐獣人だが気弱な僕と違い、威勢が良くて強引なところがある。でも大型獣人からは言い寄られて面倒だというので僕は定期的に僕の尻尾の被毛で毛玉を作りお守りと称し渡していた。
『激レアな白狐の毛玉、周りでも欲しい人多いんだよね。お願い』
愛らしい顔つきで被毛玉をもっとよこせとお願いされた。彼以外にあげるつもりはなかったけど、困って人の為ならと、ついいい顔をしてしまった。
だけど大学で白い被毛の毛玉が高値で出回ってると友達に聞き、問い詰めたら『誰かの助けになるなら、それでいいじゃんお前だって嫌って言わなかっただろ』そんな風に吐き捨てられた。
価値観の違いは薄々感じていたけどこれが決定的になった。
別れ話を切り出したら逆上され『じゃあ、尻尾毛よこすなら、別れてやってもいい』そういわれて哀しくて、もうどうでもよくなって頷いた。
すると相手も泣きながら鋏でじょきじょきっと尻尾の毛をめちゃくちゃに切られた。
僕はコートで隠しながら彼の家を飛び出し、この店まで何とかたどり着いた。
「艶々ふさふさの美尻尾だったのに……」
「いつも大神さんに手入れしてもらっていたのに、ごめんなさい」
「それは大丈夫。でもこれはひどすぎるね。尻尾をこんなにされて、怖かったよね?」
情けないけど、僕は震えながら頷いた。
大神さんが痛ましそうな目でこちらを見つめてくる。
彼は身体は大きい灰色狼の獣人だが、柔和な語り口調と丁寧な仕事ぶりが好感が持てる。気遣いのできる、とても優しい人だ。
『狼って怖がられがちだから。口調はちょっと柔らかくしてるんだ』
前にのんびり口調で犬歯を少しだけ見せて笑う。美しい琥珀色の瞳に宿る光は、真っすぐに覗き込むと確かにちょっと怖いけどいつも穏やかで
不思議な包容力のある人だ。
「ねえ、雪弥君。俺に獣型の姿、見せられる?」
「え……」
普通、恋人や家族というごく親しい人にしか獣になった姿を見せることはない。ドキっと戸惑い自分の腕を抱きしめる。大神さんは慌てた声を出した。
「被毛の様子が一番よくわかるのは、獣の姿だから。君が良ければ、俺の家で手入れをさせて欲しいんだ。こんな状態になった君を放っておけないよ」
大神さんの美容室は高校時代から憧れの場所だった。アルバイト代を握りしめて初めて足を踏み入れた時、緊張と期待で胸が躍った。それまで目立つ被毛が嫌でくすんだ色になっても構わないと、手入れを放棄し身をかがめて生きてきた。
でもそんな自分を変えてみたいと思ったのは、SNSで流れてきたビフォーアフター動画だった。美容院のカットで劇的に変化した人の笑顔が印象的で、その施術をした人が大神さんだった。『綺麗な色の被毛なんだから堂々と胸を張りなさい』と髪も尻尾も艶やかに整え、勇気づけてくれた恩人だ。
「大神さんになら……。お任せ、したいです」
その後はあっという間に店じまいをした大神さんの部屋まで連れて行ってもらった。美容室が入っている雑居ビルの最上階が自宅だった。
彼氏の部屋からコートと財布、携帯電話だけ持って着の身着のまま来た。情けないが、今になって足ががたがたと震えてきた。
「これを飲んで、ゆっくりでいいから」
温かなカモミールティーを差し出す彼の気遣いが嬉しく、静かに飲んだら少し心が落ち着いてきた。「狐の姿になります」意を決して獣の姿になると告げると、大神さんが正面からぎゅっと抱きしめてくれた。着やせするのか押し付けられた胸に逞しい筋肉の充溢を感じる。
広い胸の温かさにまた涙が零れた。僕は涙を見られまいと、彼の腕の中でするすると縮み、身体の被毛の豊かさに比べて醜い尻尾をした狐の姿になった。
「きゅーん」
情けない鳴き声を上げ、僕は丸く身を縮める。だけど彼には違ったようだ。
「雪弥くん、君はなんて、綺麗なんだろう。神々しいほどだ」
抱き上げられ耳のすぐそばで、感極まった彼の声が聞こえる。
「初めて会った時から、俺が君の事、気になっていたって言ったら、嫌かい?」
「きゅー、ぎょわ」
憧れの人からの甘い囁きに、変な声が出てしまった。
そこからはなんかいい香りのトリートメントで全身を揉みしだかれてトロトロになったところで恥ずかしくも前が兆してしまう。
あまりの事に慌てふためいて人型になって逃げようとしたら、後ろから抱きかかえられてちゅっと首筋に甘噛みをされた。人の身体でも犬歯が発達しているから、艶めかしい痛みがぞくっと走る。
「気持ちよくなっちゃった? そっちも、触ってもいい?」
あれよあれよという間に温かく大きな掌ですりあげられて、身を震わせる。嫌じゃないから身体の力を抜いて、僕はそのまま彼に身を任した。頭がぼーっとなって、このまま優しさに甘えるのが良いのか、彼を哀しみから逃れる薬にしているのではと考えたら胸が切なくて、でもあまりにも心地よくて。
大きな温かい大きな掌に吐き出したら愛おしそうにぎゅっとハグされた。
「好きだ。雪弥君。神秘的な白い被毛も、礼儀正しくて優しい性格も、はにかんだ笑顔も大好きだ。だけど高校生の君に手を出すのはって思っているうちに、君に恋人ができた。君が幸せならばそれでいいって諦めていたんだ。
でも君の事を大切にできない人に君を任せてはおけない」
初めてのカットの時、緊張でおどおどしていた自分に、鏡越しに優しく微笑んでくれた彼。人気のお店の憧れの美容師さん。
(大神さん、僕の事……)
想いの深さと情の強さに心がぎゅうっと押し流されて、彼の待つ岸辺に打ち上げられた。
その後彼と恋人同士になった。兎の元カレは『あの時は頭に血が上った。ごめん』といってへらへらと家を訪ねてきた。
でもちょうど一緒にいた大神さんが聞いたことのない怖ーい声で「帰れ」と一喝したらすごすごと帰っていった。
「雪弥君。ああいう、可愛い系が好きなんだね、俺、大きくて年上でごめん」
ちょっとしょんぼりと落ち込んだ大神さんも可愛い。背伸びして彼のシルバーブロンドの髪をわしゃわしゃしてから長身に飛びつくように抱き着いた。
「穏やかで心も身体も大きな貴方が大好きですよ」と。 おわり。
一見穏やか狙った獲物を逃がさない狼さんと被毛にコンプレックスがある白狐さんの恋話
こちらのお話は次の⑩と繋がっております。雪弥の元カレ視点です。
世界観(大学が一緒)のお話はkindleアンソロジーの
「甘えんぼウサちゃんの一生のお願い」と同じ獣人世界です。
https://amzn.asia/d/djSmeL0
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる