イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛

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イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が、俺

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「バスケはやめたって言っただろ」
「なにもバスケやめることなかったのになあ。続けりゃよかったのに。こいつ、中学までキャプテンもしてたんだよ。勿体ないと思わない?」
「……」

 同意を求める兄貴と北門は俺をそっちのけで、頭越しに目線が合ってるみたいだ。なんとなくカチンとくるけど仕方ない。

「こいつは、委員会の後輩」

 兄貴は「委員会?」と呟いて怪訝そうな顔をして、また俺の頭にぽすっと大きな掌を置いた。手がデカすぎて頭の上にグローブでも置かれてるみたいだ。昔からの癖みたいに、兄貴はこうやっていまでも俺を小さな弟扱いしてくる。

「ああ、駅前清掃活動がどうとかいってたか。雨の中、君までずぶ濡れになるほど巻き込んだのかな? こいつは一生懸命になると周りが見えなくなるから。こんな頼りにならない先輩でごめんな」

 兄貴の掌の中、俺は頭をぐわんぐわんと前後に揺さぶられた。兄貴なりのフォローなのかもしれないが、顔が熱くなって、俺は身体の横で拳をぎゅっと握って下を向いた。

(兄貴の言うことは、いつだって間違いない。北門がこんなに濡れてんの俺のせいだし。昨日から頭ん中、ずっとこいつのことでいっぱいで、傘なんて持っていかなくていいや、いっそ濡れたら頭が冷えるかななんて、馬鹿みたいに思ってた。自分の感情に振り回されて、結果的に北門を巻き込んでる……)

「……分かってる。俺の責任だ」
「先輩は頼りなくなんかありません」
 ぴしゃり。北門がそう断言して、項垂れてた俺を兄貴から奪うみたいに力づくで引き寄せた。北門の肩に勢いで額が当たった。俺はほとんど腕の中に囲われるみたいな状態で、兄貴に背を向ける。

「先輩は雨天中止の連絡を見ずに、間違ってきた人がいないか確認に来てくれました。清掃活動も善意で参加してました。濡れたのは俺自身の責任です」
 
「北門のせいじゃない、俺が悪いから!」

 腕の中から見上げる。北門の唇はいつもより赤みが薄れてた。濡れた髪をかきあげた北門の長い指を俺ははしっと掴んだ。しっとりと、冷たい。

「こいつ、すごく冷えてるから。うちでシャワー浴びさせる。兄貴の服かして。俺のじゃ小さいからさ。じゃあ、いってらっしゃい!」
「あ、ああ」
 兄貴を横に押しのけながら北門を引っ張って家の中に引き入れた。
 強引に扉を閉めて、まだ心臓がどきどきしてる。兄貴に向かってあんな風に北門が啖呵を切ってくれたことに驚いて、でも内心すごく嬉しくて、感情がもう本当に上がったり下がったり忙しすぎる。
 雨に濡れたはずなのに、身体がかっかと熱くなってきた気がした。

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