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episode 1
入籍は突然に
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蒼空の言葉に頭が急速に回転するけれど、空回りしているのか、何を言われたのか意味がさっぱり分からない。
私は一体、蒼空に何を言われたの?
誰が誰とどうするって?
目を見開いたまま凝視していると、蒼空は私の両手を大きな手でぎゅっと包んでにっこりと微笑んだ。
「由華ちゃん、俺を助けて?たった今、協力してくれるって言ったばかりでしょ?」
確かにそう言ったけど……。
私にできることなら何でもすると言ったばかりだけれど……。
「俺の母親覚えてるでしょ?早くに父親と死別して、女手一つで本当に苦労しながら俺を育ててくれた。そのこともあって由華ちゃんはよく自分ちの晩御飯に俺を誘ってくれたよね」
蒼空の言葉で、私の中の古い記憶が一気に目を覚ます。
小さいけれどパワフルで、笑顔がとても可愛らしい蒼空のお母さんは、いつも蒼空と私に優しかった。
パートを掛け持ちしていて、なかなか蒼空との時間が取れないおばさんに代わって、私の母がよく蒼空の晩御飯の用意をしていた。
そんな間柄であったこともあって、おばさんは私を本当の娘のように可愛がってくれ、それは蒼空と疎遠になっても続いた。
「最近になって母さんに病気が見つかってさ……。だから俺は母さんを安心させるために、知り合いに薦められた相手と早く結婚することを決めたんだ。こんな理由で結婚しようとしてたなんて、相手にも失礼な話だよな……。彼女には本当に申し訳ないと思ってる」
結婚に対して後ろ向きに感じたのも、彼女に対するよそよそしさも、これが原因だったのか。
全てに合点がいった私は、なんと言葉を発してよいものか頭を回転させた。
確かにおばさんを大切に思うあまり、安心させるために結婚を急いだ蒼空の気持ちも、想像できなきことはないのだけれど。
しかしおばさんの病気のことと、私との結婚は全く別の話じゃないか。
そもそも花嫁に逃げられたからといって、手頃な幼馴染と結婚してしまおうなんて、考えが浅はか過ぎなんじゃないだろうか。
「このままじゃ信頼も仕事も失ってしまうかもしれない。母さんだってかなりのショックを受けてしまうし。もう俺の全部を救えるのは由香ちゃんしかいないんだ。何でもするって言ってくれた由華ちゃんの言葉に縋らせてほしい。お願いだよ。」
「そんなこと言われても……」
いつの間にか壁際まで追い込まれ、温かい手で頬を包まれると、自分の心まで蒼空に包まれてしまったような感覚になる。
「由華ちゃんのこと、本当に大切にするから。由華ちゃんが蕩けるような新婚生活にするから。だから由華ちゃん、もう一回言わせて?俺と結婚してください」
見つめた蒼空の瞳があまりにも優しすぎて。
まるで蒼空は本当に私のことが好きで、本気のプロポーズしているんじゃないか、という錯覚に陥ってしまいそうになる。
それくらいに蒼空の瞳と微笑みは愛情に満ち溢れているようだった。
だからだろうか。
「……ふり……だけなら……」
なんて言葉を口走ってしまったのは。
「ありがとう」と私を抱きしめた蒼空がしたり顔だったことに、私が気付くことはなかった。
私は一体、蒼空に何を言われたの?
誰が誰とどうするって?
目を見開いたまま凝視していると、蒼空は私の両手を大きな手でぎゅっと包んでにっこりと微笑んだ。
「由華ちゃん、俺を助けて?たった今、協力してくれるって言ったばかりでしょ?」
確かにそう言ったけど……。
私にできることなら何でもすると言ったばかりだけれど……。
「俺の母親覚えてるでしょ?早くに父親と死別して、女手一つで本当に苦労しながら俺を育ててくれた。そのこともあって由華ちゃんはよく自分ちの晩御飯に俺を誘ってくれたよね」
蒼空の言葉で、私の中の古い記憶が一気に目を覚ます。
小さいけれどパワフルで、笑顔がとても可愛らしい蒼空のお母さんは、いつも蒼空と私に優しかった。
パートを掛け持ちしていて、なかなか蒼空との時間が取れないおばさんに代わって、私の母がよく蒼空の晩御飯の用意をしていた。
そんな間柄であったこともあって、おばさんは私を本当の娘のように可愛がってくれ、それは蒼空と疎遠になっても続いた。
「最近になって母さんに病気が見つかってさ……。だから俺は母さんを安心させるために、知り合いに薦められた相手と早く結婚することを決めたんだ。こんな理由で結婚しようとしてたなんて、相手にも失礼な話だよな……。彼女には本当に申し訳ないと思ってる」
結婚に対して後ろ向きに感じたのも、彼女に対するよそよそしさも、これが原因だったのか。
全てに合点がいった私は、なんと言葉を発してよいものか頭を回転させた。
確かにおばさんを大切に思うあまり、安心させるために結婚を急いだ蒼空の気持ちも、想像できなきことはないのだけれど。
しかしおばさんの病気のことと、私との結婚は全く別の話じゃないか。
そもそも花嫁に逃げられたからといって、手頃な幼馴染と結婚してしまおうなんて、考えが浅はか過ぎなんじゃないだろうか。
「このままじゃ信頼も仕事も失ってしまうかもしれない。母さんだってかなりのショックを受けてしまうし。もう俺の全部を救えるのは由香ちゃんしかいないんだ。何でもするって言ってくれた由華ちゃんの言葉に縋らせてほしい。お願いだよ。」
「そんなこと言われても……」
いつの間にか壁際まで追い込まれ、温かい手で頬を包まれると、自分の心まで蒼空に包まれてしまったような感覚になる。
「由華ちゃんのこと、本当に大切にするから。由華ちゃんが蕩けるような新婚生活にするから。だから由華ちゃん、もう一回言わせて?俺と結婚してください」
見つめた蒼空の瞳があまりにも優しすぎて。
まるで蒼空は本当に私のことが好きで、本気のプロポーズしているんじゃないか、という錯覚に陥ってしまいそうになる。
それくらいに蒼空の瞳と微笑みは愛情に満ち溢れているようだった。
だからだろうか。
「……ふり……だけなら……」
なんて言葉を口走ってしまったのは。
「ありがとう」と私を抱きしめた蒼空がしたり顔だったことに、私が気付くことはなかった。
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