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episode 1
こじらせた初恋
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女の友情に感謝しながら、私と藤瀬くんは逸れないように距離を縮めて歩いた。
市内最大級といわれるこの花火大会は、毎年約六千発の花火が打ち上げられ、来場者数も三十万人という数の人が集まる。
そんな中では、いくら距離を縮めたところであっという間に姿を見失ってしまう。
「やだ……どこ行っちゃったの?」
藤瀬くんの背中が見えなくなってしまって、不安と寂しさで涙が込み上げてきた。
「藤瀬くんっ」
私が声を上げたのと、ぐっと腕を掴まれたのはほぼ同時だった。
「よかった。橘までいなくなったかと思った」
私の腕を捕まえてくれたのは、苦笑した藤瀬くんだった。
「これじゃ、俺達まで逸れるな」
そう言った藤瀬くんは、腕を掴んでいた手を放し、私の手を取ったのだ。
「橘は嫌かもしれないけど、これで歩こう」
真夏だし、人込みだし。
当然汗をかいているわけで。
それは身体だけではなく手のひらも同じこと。
しっとりとした手汗が恥ずかしかったけれど、それよりも藤瀬くんと手を繋げたことの方が嬉しかった。
「私は全然嫌じゃないよ。でももし知り合いに見られたりしたら、藤瀬くんの方が困るんじゃない?」
同じ学校の人に目撃されてしまったら、あることないこと噂されてしまうかもしれない。
藤瀬くんとの噂なら私はいつでも大歓迎だけど、藤瀬くんはそうじゃないはず。
私の言葉に同調されるのも手を離されるのも嫌なくせに、私はついつい余計な事を言ってしまった。
市内最大級といわれるこの花火大会は、毎年約六千発の花火が打ち上げられ、来場者数も三十万人という数の人が集まる。
そんな中では、いくら距離を縮めたところであっという間に姿を見失ってしまう。
「やだ……どこ行っちゃったの?」
藤瀬くんの背中が見えなくなってしまって、不安と寂しさで涙が込み上げてきた。
「藤瀬くんっ」
私が声を上げたのと、ぐっと腕を掴まれたのはほぼ同時だった。
「よかった。橘までいなくなったかと思った」
私の腕を捕まえてくれたのは、苦笑した藤瀬くんだった。
「これじゃ、俺達まで逸れるな」
そう言った藤瀬くんは、腕を掴んでいた手を放し、私の手を取ったのだ。
「橘は嫌かもしれないけど、これで歩こう」
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当然汗をかいているわけで。
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「私は全然嫌じゃないよ。でももし知り合いに見られたりしたら、藤瀬くんの方が困るんじゃない?」
同じ学校の人に目撃されてしまったら、あることないこと噂されてしまうかもしれない。
藤瀬くんとの噂なら私はいつでも大歓迎だけど、藤瀬くんはそうじゃないはず。
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