162 / 198
episode 5
解ける糸
しおりを挟む
いったいなんだというのだろう。
笑顔どころか目も合わせてくれなくて、全く会話ができないではないか。
「ねえ……」
「なに?」
「やっぱ、何かあったよね?」
「いや、別にないから」
覗き込んだ私と藤瀬くんの間に、ザっと大きな線が引かれたような気がする。
何か言わなければと焦ったけれど、このまま弾みもしない会話を探していたところできりがない。
こうなれば早く移動してしまうに限るというものだ。
「けっこう時間ギリギリになっちゃうね。みんな集まってるかも」
「俺が遅かったからな」
「……」
誰もそんなこと一言も言ってないじゃないか。
返答に困るようなことを自虐のように言うのは止めてほしい。
「本当はもう少し前に来てたんだけど」
「え?」
「茉莉香が男と楽し気に話してたし。あれ……永久だろ?」
いくら親友だったと言っても、十年以上も会っていなければ自信がないのだろう。
藤瀬くんは眉を寄せながら私に聞いてきた。
「そうだよ。気付いてたなら来てくれればよかったのに。田原くんも早く藤瀬くんに会いたがってたんだから」
明るくそう言った途端、藤瀬くんの顔があからさまに歪んだ。
私の何気ない一言は、どうやら藤瀬くんにとってお気に召す言葉ではなかったらしい。
笑顔どころか目も合わせてくれなくて、全く会話ができないではないか。
「ねえ……」
「なに?」
「やっぱ、何かあったよね?」
「いや、別にないから」
覗き込んだ私と藤瀬くんの間に、ザっと大きな線が引かれたような気がする。
何か言わなければと焦ったけれど、このまま弾みもしない会話を探していたところできりがない。
こうなれば早く移動してしまうに限るというものだ。
「けっこう時間ギリギリになっちゃうね。みんな集まってるかも」
「俺が遅かったからな」
「……」
誰もそんなこと一言も言ってないじゃないか。
返答に困るようなことを自虐のように言うのは止めてほしい。
「本当はもう少し前に来てたんだけど」
「え?」
「茉莉香が男と楽し気に話してたし。あれ……永久だろ?」
いくら親友だったと言っても、十年以上も会っていなければ自信がないのだろう。
藤瀬くんは眉を寄せながら私に聞いてきた。
「そうだよ。気付いてたなら来てくれればよかったのに。田原くんも早く藤瀬くんに会いたがってたんだから」
明るくそう言った途端、藤瀬くんの顔があからさまに歪んだ。
私の何気ない一言は、どうやら藤瀬くんにとってお気に召す言葉ではなかったらしい。
0
あなたにおすすめの小説
【実話】高1の夏休み、海の家のアルバイトはイケメンパラダイスでした☆
Rua*°
恋愛
高校1年の夏休みに、友達の彼氏の紹介で、海の家でアルバイトをすることになった筆者の実話体験談を、当時の日記を見返しながら事細かに綴っています。
高校生活では、『特別進学コースの選抜クラス』で、毎日勉強の日々で、クラスにイケメンもひとりもいない状態。ハイスペックイケメン好きの私は、これではモチベーションを保てなかった。
つまらなすぎる毎日から脱却を図り、部活動ではバスケ部マネージャーになってみたが、意地悪な先輩と反りが合わず、夏休み前に退部することに。
夏休みこそは、楽しく、イケメンに囲まれた、充実した高校生ライフを送ろう!そう誓った筆者は、海の家でバイトをする事に。
そこには女子は私1人。逆ハーレム状態。高校のミスターコンテスト優勝者のイケメンくんや、サーフ雑誌に載ってるイケメンくん、中学時代の憧れの男子と過ごしたひと夏の思い出を綴ります…。
バスケ部時代のお話はコチラ⬇
◇【実話】高1バスケ部マネ時代、個性的イケメンキャプテンにストーキングされたり集団で囲まれたり色々あったけどやっぱり退部を選択しました◇
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
陛下の溺愛するお嫁様
さらさ
恋愛
こちらは【悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される】の続編です。
前作を読んでいなくても楽しんで頂ける内容となっています。わからない事は前作をお読み頂ければ幸いです。
【内容】
皇帝の元に嫁ぐ事になった相変わらずおっとりなレイラと事件に巻き込まれるレイラを必死に守ろうとする皇帝のお話です。
※基本レイラ目線ですが、目線変わる時はサブタイトルにカッコ書きしています。レイラ目線よりクロード目線の方が多くなるかも知れません(^_^;)
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】
remo
恋愛
あなたにとっては遊びでも、私にとっては、…奇跡の夜だった。
地味で平凡で取り柄のない私に起きた一夜のキセキ。
水村ゆい、23歳、シングルマザー。
誰にも言えないけど、愛息子の父親は、
今人気絶頂バンドのボーカルなんです。
初めての恋。奇跡の恋。離れ離れの恋。不倫の恋。一途な恋。最後の恋。
待っている…
人生で、一度だけの恋。
【完結】ありがとうございました‼︎
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる