Perverse

伊吹美香

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episode 8

甘い未来へ

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「俺、お前より仕事できるし」



確かに柴垣くんに一度も営業成績で勝てたことはない。



「すっかりお前のこと溺愛しちまってるけど、ちゃんとお前を怒れるし」



私の悪いところをちゃんと把握してくれていて、駄目なところは駄目だとしっかり諭してくれる。



「甘やかすときは徹底的に甘やかすけど、突き落とすときは突き落とせるし」



普段は思い切り私のことを甘やかしてくれる彼だけど、自分でやらねばならないことは絶対に甘やかさない。



柴垣くんはちゃんと私を見て、向かい合ってくれているんだ。



「だから俺は、お前に溺れて駄目になんてならねぇよ」



そう言って私の頬を撫でる柴垣くんを見つめていると、私は少し不安になった。



「私のほうが……柴垣くんに溺れて駄目になっちゃいそうで怖い……」



いつでもどこでもなんにでも、私の活力は柴垣くん。



充電が足りなくなっちゃったら、私の方がダメな女になっちゃうかもしれない。



「もしそうなったら」



「なったら?」



「責任もってお前の全部を引き受けるから、問題ねぇよ」



ふわりと笑った柴垣くんの顔を見て、私は思わず涙が溢れそうになり、慌てて彼の胸に顔を埋めた。



「そのときは……よろしくお願いします」



本当にそう願って漏らした言葉は、「はい、お任せください」とあっさり了承された。



ああ、どうしてここは会社の給湯室なんだろう。



「なんで今から仕事なんだろうな。夜までおあずけなんて、拷問に等しい」



私の気持ちを代弁してくれた柴垣くんを見上げて、私は笑顔で囁いた。



「……夜にたくさん……溺れてね?」





                 ~END~
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