Perverse

伊吹美香

文字の大きさ
上 下
273 / 292
番外編

お片付けは後で……

しおりを挟む
だって一度は付き合おうと思って告白の返事をしたというのに。



それって、一度は上原くんのことを好きになったってことなんじゃないのかな?



こっそりそう思ったけれど、あまり口に出すと本当にキレちゃいそうなので、どっちつかずに笑って流した。



「楓と沙耶ちゃんはこれ持って先に行ってて。私は簡単なもの作ってくるから」



そう言って私は上手に飾った唐揚げとシーザーサラダ、オーブンから出したばかりのポテトチーズ焼きを託した。



「おつまみも買ってきたし、結菜も一緒に行こうよ」



「もうっ、往生際が悪いですね楓さんは。いいから行きますよっ」



沙耶ちゃんはミトンを付けてチーズ焼きを持ち、「後は持って来てくださいね」と言ってさっさとキッチンを出て行った。



「ちぇ……」



唇を尖らせた楓はしぶしぶ器を持ってテーブルに向かった。



私は冷蔵庫を開けると、昨夜から用意していたものを取り出して皿に盛りつけていく。



大したものは用意してなかったが、トマトの生ハム巻きや豆もやしのナムル、キュウリちくわにマグロのユッケと、それなりにテーブルを飾れるものはできたと思う。



柴垣くんの家はどうせ何もないだろうから、つまみをたくさん買ってくる、と上原くんが言っていたのを聞いて、だったらそのつまみは持って帰ってもらおうと息巻いてしまった。



旦那様が会社の人を連れてくるからと、嫁が精一杯もてなす気分が何となくわかる。



旦那様に恥をかかせたくないし、自分もいい嫁だと思ってもらいたいのだ。



……嫁じゃないけど。
しおりを挟む

処理中です...