Perverse

伊吹美香

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episode 2

溢れる想い

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私の意志なんて完全に無視した強引なキス。



なのに。



何の力も入ってない形だけの抵抗以外、私に柴垣くんを拒むことなんてできるはずもない。



だって私は柴垣くんが好きなんだもの。



そっと舌でなぞられた唇を開きはじめたところで。



バッと身体と唇が離れたのは、柴垣くんが私の両肩を掴んで引き離したから。



俯き私から距離を取る柴垣くんの表情は見えない。



なんと言ったらいいのか、少し荒い息以外、私の口から漏れるものはない。



すると柴垣くんは私を睨み付けるように視線を合わせた。



「お前は『みんなの三崎さん』で『高嶺の花』にみられてんだから。こういうことも覚悟して送られろって言ってんだよ」



違う。



私は柴垣くんを想ってる、ただの女だ。



そう言ったのはあなたのはずなのに。



それ以上何も言わずに柴垣くんは私に背を向けた。



「…早く帰れ」



その背中に問いかけたいことはたくさんあったけれど、今は何も答えてくれない気がして。



「……おやすみなさい…」



そう一言だけ呟くと足早にマンションの中へと駆け出した。



エレベーターに乗る前に入口を確認すると、柴垣くんはまだ背を向けたまま。



こんな時でも私がエレベーターに乗るまで居てくれる優しさに私は胸がいっぱいになって、1人で眠れぬ夜を過ごしたのだ。
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