Perverse

episode 4

宣戦布告

ゆっくりと一歩下がった竹下さんの笑顔を見て、胃がムカムカした。



この人はなんて目をして笑うんだろう。



深い黒がどこまでも冷たくて、笑顔にはとても不似合いな鋭さ。



こんな目で見つめられたら何も言えなくなる。



ただ一言。



「そんな真似…しないわ」



邪魔するなんて、そんな卑怯な真似はしない。



それだけはきちんと伝えておきたくて、私は後ろ手に拳を握りしめて竹下さんの視線を受け止めた。



それが気に入らなかったのか、一瞬だけ作られた笑顔が崩れたけれど、



「じゃ、お疲れ様でしたぁ」



より明るめに作り直して竹下さんは私達の前を立ち去って行った。



私は津田さんに悟られないように、細く長く息を吐く。



とんでもない緊張感で、本当ならばヘタリ込みたいほどだ。



「大丈夫？」



「はい…」



「竹下さんだよね？最近柴垣の所によく来てる子」



「そうです。噂が気になったみたいですね」



「でも、あの言い方は攻撃的すぎだよ」



その後に津田さんがかけてくれた優しい言葉も私の耳には入って来ず。



「今日はもう帰ります。不愉快な思いをさせてすみませんでした」



「俺は大丈夫だよ。三崎さんが気にすることじゃない」



津田さんはそう言って笑ってくれたけれど私は申し訳ない。



竹下さんが向かった駅には行きたくなくて、私はその場でタクシーを拾って家に帰った