Perverse

伊吹美香

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episode 7

私達の答え

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会社に戻ると2課の営業フロアは人も疎らだ。



さすがに定時の一時間前に帰ってくる営業マンはあまりいないらしい。



のんびりといつもは出来ないような事務作業までこなしていると、



「お疲れ様でーす」



と、沙耶ちゃんが帰ってきた。



「わ、結菜さん早いですね。驚いちゃった」



デスクに荷物を置く沙耶ちゃんに向かって『お疲れ様』と返事を返す。



「はぁ。今日は特別疲れちゃいました」



「どうしたの?」



「なかなか受注取れなくて。今週入荷分は私の得意先には不向きみたいです」



「そっか…。お店によっては商品イメージが固定されている所もあるものね」



「そうなんです。勧めてもなかなか首を縦に降ってくれなくて」



「自分の取り置きの範囲内で委託の特設組んでみたら?バイヤーさんも固定観念で取引している人多いから。それで動きをチェックすると、新しく動きそうなのを提案できるじゃない?」



私も以前にやった戦法だ。



これには自分の時間も割かなくてはならないし、商材を選ぶのも大変だった。



けれどその後は新しい商品を提案できて、ちゃんと数字にも繋がった。



沙耶ちゃんに説明すると彼女は笑顔で頷いた。



「早速商談してみます!結菜さん、ありがとうございます」



「まだお礼を言うのは早いわよ。成功したら知らせてね」



「はいっ」



明るい表情になった沙耶ちゃんを見ながら、素直というのは最強の武器なのだと改めて感じる。



この素直さの半分でもいいから私にくれないだろうか。
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