Perverse second

伊吹美香

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episode 3

リセット

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バッと中西の肩越しから顔を出したのは、やっぱり三崎。



その表情は酔っているにも関わらず青くなっていて、俺の顔を見るなりとても安心したようだった。



「お前こんな所にいたのか。帰るぞ」



顎で出口を促しながら目で威嚇すると。



「はいっ!」



中西の腕が緩んだのか、するりとすり抜け俺の元に駆け寄ってきた。



「ちょっと…まだ一次会の途中やん。帰るの早すぎん?それに三崎さんはこの後オレと…」



「申し訳ないっすけど」



何とか三崎を引き止めたい中西の言葉をバッサリ遮ると、荷物を中西から引ったくり三崎に手渡した。



「途中ですけど帰ります。コイツ飲み過ぎて忘れてるみたいですけど、今回の展示会のレポートと課長への業務連絡残してるんで」



「こんな時間から?」



「こんな時間からです」



有無を言わさず三崎の腕を引っ張ると、



「じゃお疲れ様でした。また明日」



さっさとその場を後にした。



こんな時間から報告も何もあるわけないだろ。



そんなことはきっと中西だって分かっているはずだ。



けれどどう言われても、どう思われても。



三崎を中西の手には渡せなかった。



「柴垣くん…痛い」



小さくそう言った三崎の言葉に、自分がどれほど強く握っていたのかを知り、手をパッと離した。



店を出てすぐ目の前に止まっていたタクシーに三崎を押し込むと、運転手にホテルの名前だけ告げて押し黙った。
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