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記憶ですよ
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咲飛(サト)の本家は、由緒正しき家柄で大きな家であった。
代々政治家や医者、弁護士などを親戚に多く、両親と咲飛と歳の離れた兄は、所有の高級マンションに住み、親は大手企業の社長であり裕福だった。
忙しくて一緒にいる時間は無いに等しかったが、お土産に狐のヌイグルミを買ってきてくれた。
咲飛が大喜びすると、両親は出張や、何処かに出かける度に狐のキーホルダーやら、置物やら買ってくるようになった。
咲飛は初めは狐が大好きというわけでは無い。ただ両親が私のためにと選んで買ってきてくれるのが嬉しかったのだ。
部屋はドンドンと狐に埋め尽くされていった。
狐に囲まれて幸せだった。
しかし、小学校をもうすぐ卒業という時。
珍しく家族一緒に食事をした帰り。
両親と兄は交通事故で呆気なく逝ってしまった。
ただ一人咲飛だけ残して。
兄にサトは溺愛されていた。忙しい両親に代わり、よく面倒見てくれて、相談相手になってくれて、寂しい時は抱き締め、優しく撫ぜてくれた。
家族みんなが逝ってしまった事はショックというより、『絶望』だった。
本家で親族会議が開かれ、咲飛を誰が引き取るか話し合ったが、彼らは冷たかった。手を挙げる者は誰もいなかった。
ただ救いは、残された遺産があり、しっかり弁護士を通して管理されていた。そして、親戚も皆裕福で金の亡者では無かったため、トラブルも無く、お金に心配する事は無かった事。
ただ、「面倒だから。」という理由で拒絶されたのだ。
保護者が必要な時は、名ばかりではあるが本家である父の兄夫婦がサインしてくれた。
頭の良かった咲飛は、中高一貫のエリート学校に入り、寮生活をした。
そして医大に受かり一人暮らし。のんびりと一人旅をしていて異世界に飛ばされたのだ。
兄との思い出の夢。
一人残される夢をよく見る。
周りに拒絶される夢をよく見る。
急に一人になって苦しむくらいなか、もう一人で良いじゃないか。
でも、家族を亡くした自分は、人の命を助ける仕事を目指した。他の人が、一人にならないように手助けする仕事に。
だから、シオを突き飛ばし、フェンリルの前に出たのは後悔していない。自分が死んだとしても…。
シオの腕の中で、一度ぼんやり目が覚めたものの、また眠ってしまったらしい。
「兄様…」そう、呟いていた。
気付けば、サトは泣いていた。
それをシオが指で拭う。
悪役顔王子なのに、意地悪なのに、側にいると安心する。
死んだ兄様と同じで優しい。
「目が覚めたか?」シオの言葉にハッと覚醒する。
どのくらい眠ってしまっていたのだろう?
その間、もしかしてずっと抱いてもらっていたのだろうか?
申し訳無くて、飛び起き、降りようとしたが、体に激痛が走った。
「ゔっ」と立ち竦む。
「まだ無理しなくていい。回復魔法(ヒール)を施したが、私は回復魔法が苦手で…、まだ少し痛みが残っているかもしれない。」と辛そうな表情をした。
「そんな顔しないで。少しでも役に立てたなら、それで私は満足です。」
「お前は……。
お前は私のペットだ。無理をするな。」
………お前はペットだという言葉が無ければ、数百倍嬉しいのだけど……。
代々政治家や医者、弁護士などを親戚に多く、両親と咲飛と歳の離れた兄は、所有の高級マンションに住み、親は大手企業の社長であり裕福だった。
忙しくて一緒にいる時間は無いに等しかったが、お土産に狐のヌイグルミを買ってきてくれた。
咲飛が大喜びすると、両親は出張や、何処かに出かける度に狐のキーホルダーやら、置物やら買ってくるようになった。
咲飛は初めは狐が大好きというわけでは無い。ただ両親が私のためにと選んで買ってきてくれるのが嬉しかったのだ。
部屋はドンドンと狐に埋め尽くされていった。
狐に囲まれて幸せだった。
しかし、小学校をもうすぐ卒業という時。
珍しく家族一緒に食事をした帰り。
両親と兄は交通事故で呆気なく逝ってしまった。
ただ一人咲飛だけ残して。
兄にサトは溺愛されていた。忙しい両親に代わり、よく面倒見てくれて、相談相手になってくれて、寂しい時は抱き締め、優しく撫ぜてくれた。
家族みんなが逝ってしまった事はショックというより、『絶望』だった。
本家で親族会議が開かれ、咲飛を誰が引き取るか話し合ったが、彼らは冷たかった。手を挙げる者は誰もいなかった。
ただ救いは、残された遺産があり、しっかり弁護士を通して管理されていた。そして、親戚も皆裕福で金の亡者では無かったため、トラブルも無く、お金に心配する事は無かった事。
ただ、「面倒だから。」という理由で拒絶されたのだ。
保護者が必要な時は、名ばかりではあるが本家である父の兄夫婦がサインしてくれた。
頭の良かった咲飛は、中高一貫のエリート学校に入り、寮生活をした。
そして医大に受かり一人暮らし。のんびりと一人旅をしていて異世界に飛ばされたのだ。
兄との思い出の夢。
一人残される夢をよく見る。
周りに拒絶される夢をよく見る。
急に一人になって苦しむくらいなか、もう一人で良いじゃないか。
でも、家族を亡くした自分は、人の命を助ける仕事を目指した。他の人が、一人にならないように手助けする仕事に。
だから、シオを突き飛ばし、フェンリルの前に出たのは後悔していない。自分が死んだとしても…。
シオの腕の中で、一度ぼんやり目が覚めたものの、また眠ってしまったらしい。
「兄様…」そう、呟いていた。
気付けば、サトは泣いていた。
それをシオが指で拭う。
悪役顔王子なのに、意地悪なのに、側にいると安心する。
死んだ兄様と同じで優しい。
「目が覚めたか?」シオの言葉にハッと覚醒する。
どのくらい眠ってしまっていたのだろう?
その間、もしかしてずっと抱いてもらっていたのだろうか?
申し訳無くて、飛び起き、降りようとしたが、体に激痛が走った。
「ゔっ」と立ち竦む。
「まだ無理しなくていい。回復魔法(ヒール)を施したが、私は回復魔法が苦手で…、まだ少し痛みが残っているかもしれない。」と辛そうな表情をした。
「そんな顔しないで。少しでも役に立てたなら、それで私は満足です。」
「お前は……。
お前は私のペットだ。無理をするな。」
………お前はペットだという言葉が無ければ、数百倍嬉しいのだけど……。
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