48 / 170
13章 夕立の思い出
第47話 ひと部屋でいいです!
しおりを挟む路線バスの後部座席に先生と二人並んで座る。
「松本、こっちこそごめんな。この3年間何もしてやれなかったお詫びだ。いろいろと言いたいことはあるだろうけど、何も言わずに受け取ってほしい。このことは学校じゃ内緒で頼むな?」
私の耳にしか届かないような小さな声で言ってくれた。
「もちろんですよ。ところで、私たちはどういう関係を演じればいいんですか?」
そう。それをハッキリさせておかないと、呼び方すらどうすればよいのか悩んでしまうから。
「そうだな。とりあえず往復と部活の資料を整理している間は文芸部の顧問と生徒だ。それ以外の時間は……、松本が決めていい」
「はい。分かりました」
15分ほど揺られて、海岸沿いのバス停に二人で降り立った。
海側を見ると砂浜もあるし、道中いくつかの宿も見えていたっけ。
「すてきです……。こういうところ初めてです」
「外浦海水浴場って言うんだ。松本、こっちだ」
さっきと同じように後ろについて歩く。少し通りから奥まったところの旅館に入っていく。
「こんにちは、長谷川です」
「啓太くん早かったのね。お待ちしてましたよ。遠いところお疲れ様でした」
旅館の女将さんが先生のことを名前呼びするなんて凄いと思っていた。
「もしかして、学生時代の行きつけだったりしたのですか?」
「実は、ここ親戚のところなんだ。だからこんなハイシーズンでも安くしてもらっている」
「なんだ、そうだったんですね。納得です」
フロントで手続きをしていると、二人で私を見ながら聞いてくる。
「もともと、四人の予約で男女分けして二部屋だったんだが、結局俺たち二人だけだ。どうする?」
普通に考えればそのまま男女で分けるのだろうけど……。そうか、逆に私だからそんなことを聞いてきたのか。
「一部屋にすれば、お値段安くなりますよね」
「まぁそう言うことにもなる」
「それなら、一部屋にしてください。無駄な出費は不要ですから」
「おいおい」
先生が驚いたように目を丸くし、女将さんは吹き出してしまった。
「本当にいいの? まぁ。しっかりしているお嬢さんだこと。花菜さんと仰いましたね。じゃあ啓太くん、ここ長谷川花菜さんと書いてくれる? これでお二人は家族のように見えるから、あとで怪しまれることもないわ」
そう笑って通してくれたお部屋は、2階の角部屋で海がよく見えた。
「昼飯はお願いしてなかったから、その辺まで食べに出ようか。いつも行く食堂があるんだ。まぁ、それを見越して叔母さんも『昼は用意しなくていいよね』なんて言ってきたんだろうけど」
「はい。私も歩いてこの景色をよく見てみたいです」
「大切だ。じゃあ松本の作品用のロケハンだな」
「そう言い切っちゃいますか?」
もちろん部活の宿題をやらなくてはいけないと分かっている。
でも、今年の校外合宿は朝から特別なことだらけだ。ここまで来たら、少しくらい羽目を外してもいいかなと思ってしまうくらい、私の心は久しぶりに踊ってしまっていたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる