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20章 ふたりの先生
第74話 明日から登校します!
しおりを挟む夕食の場でみんなに自己紹介をして、小さい子たちと一緒にお風呂にも入って。
そう、結花先生と同じように私が図書館にいたのを覚えていた子もいて、緊張していたのは私だけ。みんなの方から寄ってきてくれた。
どんな環境になるのか不安でいっぱいだったけれど、あの結花先生とこんな境遇で再会するなんて思ってもいなかった。
ご自宅から幼いお嬢さんを連れて出勤している結花先生は、泊まり込みではなく夕方には帰ってしまうんだって。
それでも聞けば、結花先生は子どもたちだけでなく子育て中のお母さんたちからも信頼してもらっているベテランの先生だと言うこと。
そして、この珠実園での今後については結花先生が私の主担当をしてくれることになったという。
「結花ちゃんのお母さんはここの顧問弁護士だから、いろいろと必要になると思ってね。それに結花ちゃんが花菜ちゃんを担当させて欲しいって自分から言ってきたのよ?」
夕食の時間に茜音先生は笑って教えてくれた。
あの結花先生が私の生活支援担当になってくれる。それだけでも嬉しく思ったのに、それだけじゃないと分かったのはもっと後のことだ。
私も子どもたちは大好きだし、ここのみんなは人懐っこい。すぐに打ち解けることが出来そうだ。
「花菜ちゃんは、学校大丈夫?」
そうだ、明日からまた登校しなくちゃ。授業にもずいぶん遅れてしまっただろうな。
長谷川先生が、「それは担任として力にならせてくれ」と言ってくれていたから、そこは甘えさせてもらうことにした。
箱から取り出した制服をハンガーにかける。初めて持つ新しい通学定期も用意してもらった。
きっといろいろな壁に当たったり、悩むこともあるかもしれない。でも、少なくともこの部屋と園の中は私の自宅として緊張せずに過ごしていい空間だとみんなが言ってくれたし、珠実園の運営方針が何よりもその空気を大切にしていると教えてもらった。
造りつけの机に開きのフォトスタンドを置いた。お母さんに持たせるため棺に入れたものとは別の写真で、私が形見としてもらってきた。
お母さんとお父さん、私が小学校入学式の時に家族三人で撮った物だ。そして片方にはまだ写真が入っていない。
ここに私の花嫁写真を入れるのがお母さんの夢だった。生前には似合わなかったけれど、その夢を叶えて両親の墓前に報告するのが私の小さな親孝行だと思っている。
「お母さん……、もうお父さんに会えた……? お父さんは私の目印を持っていてくれるはずだし、お母さんは私の写真を持っているから大丈夫だよね……」
写真に向かって小さくつぶやいたとき、スマートフォンのバイブレーションが震えてすぐに手にとる。
長谷川先生だった。「今日は行けなくて悪かった。明日から登校できそうか?」と。
きっと大丈夫。
出かけていた涙をぐっと堪える。泣いていても始まらない。「大丈夫です」と明日から登校することを伝えて、私の新しい出発の日は終わろうとしていた。
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