まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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35章 「担任の先生」だもん!

第141話 3年に一度の体育祭

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「あー、疲れたぁ!」

「仕方ないよ、先生たちだって気合い入っちゃうんだし」

「まだ本番は先なんだぞー!」

 夏休みが終わった9月の体育の授業はほとんどが体育祭の練習に充てられる。

 私たちの高校は秋のイベントは持ち回りで3年に1回ずつということになっている。

 私たちの学年では、1年生の時に秋の全校遠足で箱根に行った。2年生の去年があの文化祭で、3年目の今年が体育祭というローテーションで回ってきた。

 どうしてもイベントが集中しがちな秋の負担を軽くするためにこんなシステムになっているらしいと、先生は補習授業の時に国語準備室で教えてくれたっけ。

 これが終わると3年生は受験シーズンに突入する。同時に3年間に一度ということもあって、後悔をするもしないも一度きりのチャンスとなるから、必然的に生徒だけでなく先生たちのボルテージも上がることになるよね。



「先生、去年の文化祭では他を圧倒したんですから、今年も狙うんですか?」

 各競技の出場選手を決めるホームルームで、誰かが言った。

「まぁ、昨年はずいぶん思い切ったことをやりました。体育祭は全学年合同ですから難しいとは思います。それでもみんなでやれることはやっていきたいと思いますよ」

 長谷川先生は今年も変わらずに私たちに議事進行を任せてくれた。



 体育祭は学年別じゃなくて『組別』対抗戦という形なんだって。うちみたいな『5組』なら、1年・2年・3年5組の3クラスが同じチームとなる。

 よく言われるのが、体育特待生が多い『3組』に有利という下馬評だけど、決して体力勝負だけでないのが難しいところで、突出して3組が強いとも言い切れないのは歴代の成績を並べてみると浮かんで見えてくる。

「それじゃぁ、先生のためにも今年も総合優勝狙うぞ!」

 やたらとテンションの上がったホームルーム。わいわいと出場枠を決めていく中、それを見守っている先生が私の横に立って小さく呟いた。

「松本さんは無理しないでくださいね。体育祭も大事ですが、あなたにはこの先の道もありますから」

「先生……。分かってます……」

 一番よく知ってるんだもんね。私が昔は体を動かすのが大好きだったこと。走っていつもお兄ちゃんと追いかけっこをしていたこと。

 今も毎日のリハビリに付き合ってくれて、私が何をしたいか一番近くで理解してくれているのだから。

 今年の夏休み、近くの県立公園でのウォーキングとジョギングを毎日の日課にした。平らなところだけでなく、アップダウン、オンロードだけでなく砂利道、あえて滑りやすい雨上がりのオフロードまでいろんなシーンを試した。それを今でも続けている。

 帰ってからお家でマッサージをしてくれる先生に言わせれば、昨年と比べて足の太さは変わらないけれど筋肉がついていると言ってくれている。

 それでも、昔のようにオールマイティとはいかない。真っ直ぐ走るだけならまだいい。トラックを走るとき、カーブで足首に力がかかるのが怖い。

 千景ちゃんのお父さんからも、まだ徐々に上げていく段階だと言われている。関節を壊したら歩けなくなる『爆弾』を抱えている足であることは間違いないのだし。


今の私にとって一番重要なことは、不安なく普段の生活を送れるようになること。私と一緒に歩いてくれる大切なパートナーに安心してもらうことだから。

 それを分かってくれているから、表向きに先生はあくまで私は故障者だと言ってくれているんだ。

 昨年の2学期以降はその効果もあって、体育でも足に負担がかかる競技は参加だけしている形になっていることも多い。

 だから私が出場するのは、女子全員参加の応援合戦と借りもの競走だけの予定に決まった。
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