153 / 170
37章 文学少女からヒロインへ
第152話 誰にも教えてなかったもんね…
しおりを挟む「また明後日ね」
「今日はありがとう。明日の代休はゆっくり休んでよ?」
「先生、ごちそうさまでした」
加藤くんと千景ちゃんをタクシーに乗せて見送ったあと、二人でお部屋を片付けた。
「なんか、いつもと同じなのに……。静かになっちゃいましたね」
同じように感じたのは、あの結花先生のお家に行った帰りだったっけ。私たち二人だけじゃ、まだ何かが足りないのかな……。
「そうだな。お風呂、先に入るか?」
「私シャワーしか浴びられないですから、先生が先でいいですよ?」
「そうだった。ごめん。じゃあ、背中を流してあげるよ」
「はい。お願いしてもいいですか?」
先生がこのお部屋を選んだ理由のひとつに、一緒に入れるくらいお風呂が大きかったということがあった。
呼ばれてバスルームに入ると、左足が濡れないように台を用意してくれていて、テーピングされていないところを濡れタオルで拭いて、背中も流してくれる。
「ありがとう……。ごめんなさい、私って昔からいつもこんなのばっかり……」
そうだよ。今に始まったことじゃない。小さかったあの頃も、転んでひざを擦りむいたときは同じようにお風呂に入れてくれたっけ。
「自分の嫁さんの背中を流して何が悪い? いつも考えすぎだ。花菜はもっと堂々としていいんだ」
背中のあとは、私の左側に結ってある三つ編みを解いて、髪の毛にシャワーを当ててくれる。これも小学生の頃から変わらない。手つきも慣れているから安心して任せてしまった。
「そういえば、橘だったかな。俺なら知っているかもって聞かれたんだけど答えられなくて。いつか聞こうと思ったんだけど、今日聞いてもいいか?」
「うん。何か気になることあった?」
「もし、答えたくなかったらいいんだ。どうして花菜の三つ編みは片方だけなのかって……」
そっか。みんな不思議がっていたんだ……。そうだよね。後ろ髪を大きく編み込んで横に流して出すスタイルはよく見るけれど、いつも片方だけって変だもんね。
今は全ての髪を下ろしているから、左側の一部だけが三つ編みの分だけ長くなっているのがよく分かる。
「ちょっと長いお話になるかもしれません。のぼせてしまうと思うので、お風呂から出たらお話しします」
「無理に答えなくていいんだ。ごめん、変なことを聞いてしまった……」
「ううん。もうお話ししてもいいと思います。お風呂を出たら用意しておきますね」
これまで、誰にも話したことのなかったこと。でも、夫婦の間に隠し事はしたくない。
「これでよし。ドライヤーは自分で出来るよな?」
「ありがとう。うん、あとは大丈夫。先に着替えて待ってますね」
髪の毛をタオルで包んでくれて、私はドライヤーでそれを乾かした後、自分の大切なものが入っている小さな箱を取り出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
となりのソータロー
daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。
彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた…
という噂を聞く。
そこは、ある事件のあった廃屋だった~
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる