まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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39章 珠実園での緊急会議

第158話 立ち聞き…まさか!?

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 3年生の2学期も今日で終わり。3年生はこれから年明けの試験まで最後の追い込み時期に入る。

 昨年の春休みに修学旅行に行っているので、その分登校日も少ない。3学期の大部分は自主選択登校だ。

 終業式とホームルームが終わったあと、私は呼ばれていた国語準備室に向かった。

 部屋の前に立って、扉をノックしようとしたとき、中からすすり泣くような声が聞こえた。


「諦めきれないんです…………。校長先生にも話が行ってて……」

「はい。それは仕方ないことだと思います」

「そしたら、校長先生から長谷川先生に相談してみなさいと……」

「それで、この間相談に来たんですよね? そのあとは何か進展がありましたか? 逆にあのタイミングだったから、色々と考える時間ができましたよね」


 長谷川先生が事務的に声を出している。そうしないときっと話が進まないからだ。




 そうか、先生が異常に疲れていた問題はこれだったのかと納得がいく。

 もちろん他のお仕事もある。でも生徒をいつまでも校内に残しておくことはできないから、それを先に聞いたあとでいつものお仕事に取りかかるなら、帰りの時間も寝る時間も遅くなるのは仕方ないことだよ。


 そのあと、扉の外まではハッキリ聞こえてこない小さな声と、泣き声しか外に漏れてこない。


「中島さん、前回も言いましたが、いつまでも泣いているわけにはいきません。次に何が出来るかを考えましょう」


 中島さん、そうあの6組の中島知子ともこさんだ。2年生で行った修学旅行の時に先生に告白をしたけれど、想いを果たすことが出来なかった彼女だ。

 今年の夏の花火大会の日には、浴衣を着ているところを見た。後日、あの日は同じ6組の篠崎くんとお付き合いをしてたのが理由だからだったとまでは千景ちゃんから仕入れた情報で知っている。

「とにかく、篠崎くんも呼ばなくては話になりません。また学校の中ではこれ以上大事おおごとにするのは中島さんにも篠崎くんにもプラスにはなりません」


 長谷川先生の声が近づいて、動けなくなっていた私の前で扉が開いた。

「松本さん!」

「すみません! 私帰ります!」

 聞いてはいけないものを立ち聞きしてしまった気がして、どうにかしてその場を離れようとしたときだった。

「松本さん! 待ってください」

 先生が大きな声で私を呼び止めた。

「先生……?」

 先生が私の肩をつかんでいる。そしてすがるように私に小声で頼んできたんだよ。

「頼む、花菜。珠実園に至急連絡してくれ。あそこの先生たちの総力が必要なんだ。それも待ったなしだ。俺の名前を出せばすぐに解ってくれると思う」

 学校で名前呼びをするなんて、いつもの先生の余裕がない。これは相当緊迫しているのだと瞬時に理解した。

「分かりました。いまここで掛けちゃいます」

「すまない。頼む」

 まるで助けを求めてくるような空気に私はすぐに頷いて、ブレザーの内ポケットからスマホを取り出した。

『はい、児童福祉施設、珠実園です』

 この声は結花先生だ。これならそのまま話に入れる。

「結花先生、私、花菜です」

『花菜ちゃん、どうしたの?』

 先生につられて私も緊張した声になっていたのか、結花先生はすぐに切り替えてくれた。

「小島先生が、珠実園に急いで電話をして欲しいというので電話しました」

『そう。分かりました。任せて! 花菜ちゃん、あなたも先生たちと一緒にこっちに来てくれる?』

 これはきっと、事前に話を共有してあったに違いない。それでも、結花先生が「任せて」という安心感はこの場では何より心強い。

「先生、結花先生が『任せて!』と。あと私も同行してほしいとのことです」

「分かった。じゃぁ、帰宅の準備をして一度来てもらえますか?」

「はい。すぐに戻ります」

 前年の同じ日とは全く正反対の緊迫感が張り詰めた時間が始まった。
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