あなたのやり方で抱きしめて!

小林汐希

文字の大きさ
34 / 98
11章 無意識のお願い

34話 いいと言われても…でも…

しおりを挟む



 あれから2週間、私と先生の関係は特に進展はしなかった。

 お母さんの実質的な了解は出ているとは言え、「はいそれならば」ってほど、ことは簡単じゃないもんね。

 私は一度先生に振られている。そして先生は大人だもの。

 年下の私が何度も告白をすることが迷惑になってしまうかも知れない。

 ううん。それでなくても、好きな人への告白は軽々しくしたくない。今回は先生だもん。次は結果は分からなくてもきちんと気持ちを自分の言葉で伝えたい。


 まだ私が中学生や高校1年生だった頃、クラスの中には毎年のバレンタインや学期ごとに告白をしては少し付き合って、ちょっとしたきっかけが元で失恋したと騒ぐ子たちもいた。

 そんな子たちを横目で見ながら、「それでも告白できたんだよね」と羨ましく思ったりもしていた。

 私にはそもそもそんなことができる自信がなかったから……。


 結果的に18歳の今まで誰ともお付き合いをしてこなかった私。

 告白する勇気も、お付き合いをしていて「さよなら」を突きつけられたときに、それを受け入れるだけの心の大きさ、勇気がないというといのが本当のところだと思うよ。


 昨年書いたあの手紙。

 本当に初めての経験だった。

 だって、断られることが最初から分かり切っているのに止めることができなかった。

 先生に迷惑がかかると分かっていたはずなのに……。

 それだけ、私の心を先生が暖めてくれていたのだけれど、迷惑をかけたことは謝らなくちゃならない。

 お母さんも言ってくれたけれど、確かに今の先生と私は教師と生徒という関係ではない。そこは分かっている。

 でも、先生に熱を上げているのはきっと私だけ。先生にはもっと年上の、大人の女性が好みに違いない。

 毎日10分の距離を一緒に歩いて帰っているけど、そこに出せる話題でもない。きっと沈黙してしまう。

 それに、答えを聞いてしまったら……。この大好きな毎日の10分間が終わってしまう。

 そんな感情がずっとループしてしまって言い出せなかった。

「どうした原田、最近帰り道静かじゃないか。体の具合でも悪いのか?」

 こんな気持ちがぐるぐる回ってしまうと、つい沈黙の時間ができてしまう。

「え? そうですか? 私はこのとおり元気ですよ?」

「まったく、原田の悪いところはそういう空元気で誤魔化そうとするところだ。なにか気になることがあれば、今でも変わらずに相談していいんだ。それは原田のお母さんからも頼まれていることだし」

「はい、そうでしたよね。でも、本当になんでもないんですよ」

 先生は私が口に出せないことがあるときっと気づいている。

 でも、それを無理に聞こうとはしてこなかったし、表に出したときの結果を私自身が受け入れられるか、その自信がない。


 でも、そんなやせ我慢は偶然のトラブルの前では何でもなかったことを思い知ることになったの……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...