異世界帰還〜案内人を頼まれました〜

慧斗

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2.ビッグボア退治完了

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 葉っぱを避けながら枝を蹴って軌道修正しつつ距離を詰めていく。樹上に住処を作る小動物達を驚かせないように細心の注意をはらってるつもりだけど、時々振動にビックリさせてしまってるみたいだな。

「皆ゴメンね~」

 謝るとそれぞれ身体を器用に使って振り返してくれる。可愛いな~、急いでるのになんだか和むよ。
 そのまま先へと進んで行き、彼らの背後にある木の枝に着地する。ちょうど彼らの頭上からビッグボアを監視できる位置だ。
 ビッグボアはまだ僕には気付いていないようなので、あえて通り過ぎることにした。下手に刺激して彼らに襲いかかられても困るしね。
 ここだと話し声も聞こえてくるみたい。さすがに小声だと聞き取れないけど。

「だからさ! こんな森の中にいつまでも突っ立ってないで出ようっつってんだろ!!」
「動こうにもここが森のどの辺りなのか見当もつかないのにむやみやたらに歩いても疲れて迷うのがオチだろ」

 先に責めるように大声を上げたのが大学生の知らない青年。茶髪に鋭いつり目で性格もキツそうだな。
 面倒そうに反論したのが高校から一緒だった紺野こんの拓人たくと。確か高校の時は弓道部だったはず。普段は面倒くさがりだが、ここ一番の集中力が凄い。

「それに神様の話だと私達を助けてくれる案内人が来てくれるって言ってたよ、ね?」
「ああ、確かオレ達と同じ年頃の男を向かわせるからって」
「ただの男じゃないわよ。イケメンよ、イ・ケ・メ・ン♪」

 最初に僕を話題に出したのが高校の後輩で笹木ささき香菜かな。 眼鏡をかけて緩く三つ編みにした髪を後ろに流している。
 それに同意を示したのが拓人の幼馴染みで高校から一緒の紫藤しどう智貴ともき。高校の時は剣道部だったような。何気に空気を読むのが上手かったりする。
 イケメンを念押ししたのは大学生の女性。知らない人だけど、イケメンを念押ししないで欲しいんだけど。出て行きにくいよ!

「確かに見目麗しい頼りになる若者って言ってましたね」
「美人でもお兄さんじゃな~。お姉さんが来てくれると嬉しいけど」

 重ねて言ってきたのが高校の後輩で紫藤沙貴さき。智貴の妹で長い髪をポニーテールにしている。というか、もう外見どうこうは止めて下さい。
 それに対して女性が良いと言ったのは社会人の男性。お姉さんじゃなくてごめんなさいね。

「イケメンは目の保養でしょう! 欲を言えばもう少し年上なら良かったけど、ね」
「ですよね! どんな人が来るかな~?」

 こちらは社会人の女性2人。目の保養って…地球で色々と疲れてたのかな?

「せ、先生~。ボク達これからどうなっちゃうのかな? もう嫌だよ~」
「とにかく、落ち着いて。ね? きっと大丈夫だから。神様を信じよう」

 オドオドして半泣き状態なのが高校の後輩で片山亮輔りょうすけ。この通り、臆病な所がある。
 先生って呼ばれたのが高校の教師で文芸部顧問の神谷かみやいつき。フワフワの猫っ毛でたれ目。いつだったか幼い頃から薙刀なぎなたを習ってるって言ってたっけな。

 あれ? ヤバい! ビッグボアがこっちに猛スピードで迫ってきてる! 皆に集中してて意識が逸れちゃってた。

「ねえ! 何か近付いて…ひっ! な、何あれ!? 巨大な猪?」

 彼らの中でいち早く気付いたのは大学生の女性。髪はショートカットでボーイッシュな人だ。
 それよりビッグボアをなんとかしないと! 素早く風の魔法を発動させて奴を狙い撃ちする。反撃する暇なんて与えない。

「《風矢ウィンドアロー》《空気弾エアショット》」

 出力を上げて手数で押さえ付ける。ビッグボアは成すすべもなくたくさんの風穴が空いた状態で横倒れになる。倒れる瞬間、ドォンと地響きが鳴り砂埃が舞い上がる。
 辺りが静かになると倒れたビッグボアを茫然ぼうぜんと見つめている彼らだけが残されている。
 う~ん、ちょっとやり過ぎたかな?
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