コロコロロ……

星野 未来

文字の大きさ
上 下
14 / 14

【 エピローグ: おやすみ 】

しおりを挟む

 それから、その人は、ボクのご主人様になった。

 こんなキズだらけのボクでも、大切に使ってくれる。

 来る日も、来る日も、ご主人様は、ボクを大切にしながら、たくさん素敵すてきなお話を書いてくれる。


 ――数ヵ月後、ご主人様が携帯電話けいたいでんわの画面を見て、微笑んでいた。

 「おやすみ」というテーマで書いた物語が、なにやら立派な賞を取ったみたいだ。

 ボクも少しはご主人様のお役に立てたよう。

 そのやさしそうに見つめるご主人様の笑顔を見て、ボクも思わずうれしくなった。


 今日も、ご主人様は、ボクと一緒に物語を書く。

 壮大な、でも、とても小さな冒険の物語を……。


 書き終えると、ご主人様はまたいつものように、ボクを寝場所へそっと置く。

「おやすみ」

 ガサゴソと音を立てて、おふとんの中へ。

 ボクもご主人様に、小さなこえでいつもの「おやすみなさい」を伝える。


 コロコロロ……。


『おやすみなさい』



 やさしさにあふれて、ボクは幸せだよ。





(おわり)



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...