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【 プロローグ 】

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りく、あなたは今、どこにいますか?」


 美野川みのがわのほとりで、暖かくなった風を感じながら、オレンジに色付いた空に向かいそうつぶやいた。

 美しく緩やかなこの水の流れは、川下にある赤い鉄橋を越えると、遠くに見える大海原へと辿り着く。
 夕日に照らされた空と同じオレンジ色の輝きを放ちながら、澄んだ流れはゆっくりと色濃くなってゆく。


 彼が銀色に輝くリングを、私の左手の薬指にやさしくそっとはめてくれた。
 両手を握りながら、私を幸せにしてくれると、この場所で誓ってくれた。

 太陽と同じオレンジ色の頬をした彼と向き合いながら、照れくさそうに言う。

「そういえば、初めてのデートもこの場所だったよね、りく

「ああ、だからこの場所を選んだ」

 彼も目を細めながら、照れくさそうにそう言った。

 その時の彼の笑顔が、とても眩しく輝いて見えた。


 でも、彼はもう私の手を握ることはない……。


 この場所で、彼はってしまったんだ……。


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