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会話と日々の章
押しが強いよ先輩女神20
しおりを挟むでも、彼女は頭がいい。毎日のように映画論だったり先生や生徒達の批評を戦わせる日々だったけど、まあ、こっちが勝てた試しは十回に一回、それも向こうが「まけた」と認めたことはない。
これもまた、何かの策略じゃなかろうか?
あるいは実験とか。
気がついたら腕組みして考え込んでいた。
「どうした?」
「先輩、嘘も冗談もなしで、質問に答えてくれますか?」
「? ああ、いいぞ」
「これまでの先輩の言葉に嘘はないんですね? 実はこれが僕に対する何かの実験であるとか、裏に事情があるとか、そういう僕を最終的には傷つけたり、笑いものにしたりする、そういう行為じゃないんですね?」
キョトンとした、先輩の顔を見つめて僕入った。
「……まず、嘘や、君を笑いものにしたりするとか、実験とか、絶対に、そんなことはしない」
先輩も真面目にこちらを見つめ返して、言った。
「なら……」
僕は息を吸い込み、決断した。
「お付き合い、したいと思います」
「そうか、やっぱり無理だよな……」
と寂しげに背を向け、先輩は動きを止めた。
「え?」
慌てて振り返る。
「いま、何って言った、君?」
「お付き合い、したいと思います」
ぽかんとしていた先輩の顔にみるみる生気が蘇る。
「そうか!」
目が輝き、隈がすっと消えていった……まて、目の下の隈ってそんなに短時間で取れるのか?」
思わず先輩は僕の手を取り、そこから抱きしめようとして、はっと退いた。
なにか、バツが悪そうな顔になって俯く。
「そうだ、忘れてた……」
「?」
「嘘はついてない、君を想う私の心は本当のモノだ。ただし、裏の事情はある……私が君に自分の気持ちを切り出した、124あるうち最後の124番目の理由だ」
「それは……?」
「これから私が話すことを、信じてくれるか?」
まっすぐな目だった。
「私が、女神をやめたいからだ」
「は?」
「普通の人間と恋に落ちれば、女神は女神でなくなる瞬間がくる。そうしたら、女神の力はその元女神の子に移るか、あるいは別の誰か近い血縁に移行する……これなら厄介ごとのおしつけあいだが、幸い、女神の力は統合が始まっていて……」
「えーと」
一瞬、まだこの上僕を騙すのか、と怒鳴りそうになったが、先ほどこちらを見つめた先輩の目にはこれまで同様、冗談の欠片も無い。
それに先ほどの変装からの解除はどう見ても物理法則にも、骨格的にもあり得ない。
「いえ、続けて下さい」
「うむ……つまり、私の世代で、これまで散らばっていた女神の力は統合され、偉大な女神が復活する。私が女神の力を手放せば、それは自動的に女神の力を統合して一番多く持ってる女神候補者の元へ行く……いわば棄権票あつかいになるわけだ」
「女神候補ですか、一対一で殴り合いとかするんですか?」
「もっと陰湿かな……まあいい、とにかく、これですっきりした。君に対して隠し事はしたくない」
先輩は晴れやかな顔で言った。
「あとでトラブルが起こったとき騙していた、とか言われたくないからな」
うんうん、と頷きながら立ち上がる。
「他に聞きたいことはないか? 私が君で自慰行為を始める時のイメージの話とか、正式なスリーサイズとか」
くるりとスカートを翻して一回転しながら、さらっとどぎついことを訊ねる。
「いえ、とりあえず今は……」
「そうか、まあその辺はお互い付き合いながら知り合っていけばいいしな!」
にっこりと笑った先輩の笑顔は本当に輝いていて……いやまて、明らかに背後に光源があるぞ!
思わず僕は彼女の肩越しにライトを持ったメイドさんでもいるんじゃないかと思って覗き込んだがそんなものはなく、部屋の光量も元に戻っていた。
まさか、ホントに女神と言うことなのか?
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