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友達ごっこ
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駐輪場まで来ると武田だけ徒歩で通学していたので足を止めた。
「じゃあまた明日」
上杉は自転車の鍵をつけて武田に尋ねた。
「なあ、武田くん徒歩やけど学校から家近いん?」
「二十分かかるかな?」
「ビミョー。てかチャリで来いよ」
「ウチ、自転車ないから」
じゃあ、と校門に向かい歩き出した武田を上杉は自転車を押して呼び止め並んだ。
「送ったるわ。武田くん後ろ乗り?」
「……二人乗り駄目だろ」
「真面目やなぁ。もしかして自転車乗られへんの?」
「は? 乗れるけど?」
ニヤニヤしている上杉を睨むと武田は自転車の荷台にドカッと跨いで座った。
「早く漕げば。校門でて右だから」
遅れて後ろから三好が自転車を漕いで上杉と武田に並ぶ。
「何? 武田んち行くの? オレも行きたい!」
「送るだけでしょ? 家には入れないよ」
「入れたらええやん? 友達とは仲良くせなあかんよ?」
「君は特に入れたくない。絶対何かするだろ?」
「せーへんよ。大人しくしてるやん」
「なーコンビニ寄っていい? 食い物買って武田んちで食おうぜ。腹減った」
「聞けよ! お前ら家には入れないからな?」
「三好くん、メントスとコーラ買ってこーや? 武田くんちで実験しよ」
「うわ、鬼畜!」
「あ? お前、マジふざけんなよ?」
「武田くん、口悪くなってんで?」
上杉と三好の笑い声を聞きながら武田は静かに笑った。自分の手でこの関係を壊したくない。
上杉の漕ぐ自転車に揺られながら武田の心も揺れた。
狂気と正常の中に混沌とする自分がいる。狂気を押し殺して完璧に遮断しなければきっと彼らと一緒に居られない。
小学生の頃に傷付けた友達の顔が脳裏にチラつくと武田は懺悔するように目を閉じた。
「武田くんどっち行ったらええの?」
上杉から尋ねられると武田は我に返って顔を上げた。
「……次の信号渡って右」
「武田んちって日本家屋で豪邸のイメージだわ」
「それ戦国武将のイメージ引きずってない? 普通の家だよ」
「名前、貞継やもんなぁ。渋すぎやな」
「オレのじいちゃんの名前より渋いわ」
「ねぇ……馬鹿にしてない?」
「してへんわ! 俺なんか名前めっちゃ間違われるよ?」
後ろから三好が得意げに上杉の名前を口にした。
「上杉いくとだろ?」
「自己紹介したからやん? ゆきととよう間違われんねん」
「てか、三好くんの名前なんだっけ?」
「はあ⁉︎ マジか武田、今更かよ! 一年の時もクラス一緒だっただろ!」
「ごめん。君の名前、当て字で読めない」
「お前がバカにしてるだろ⁉︎ ちょ、上杉、止まれ。武田殴るわ」
「暴力はあかんよ。武田くんも謝りや?」
自転車を漕ぎながら後ろで聞こえる小競り合いに上杉は笑った。
学校から真っ直ぐ家に帰りたくないので上杉にとって武田の家に寄れるのは丁度よかった。
中央通りから逸れると、しばらくして住宅街に入った。
街並みを形成するように同じコンセプトで揃い並ぶ家の中に武田の家はあった。三階建ての一軒家を眺めて上杉は口を開く。
「思ってたのと違うわ。めっちゃ普通」
「普通だって言ったでしょ。じゃあ、ありがとう。また明日」
荷台から降りると武田は上杉と三好を無視するように背を向けた。
「は、マジか? 家に上がらせろよ?」
「さよなら」
呆然とする三好を切り捨てるように武田は言った。
三好はコンビニまで寄ったのにと残念そうにして上杉を見た。上杉は静かに自転車を端に寄せて止めるとニッと笑った。
家まで来たら武田の家に強引にでも入るつもりでいた。だから何も問題はない。
武田が鍵を開けて家に入ろうとした瞬間、上杉は背後からドアを掴んで家の中に聞こえるようにわざとらしく叫んだ。
「お邪魔しますぅー! うわー武田くんちめっちゃ綺麗ー!」
武田は驚き、振り返って上杉に信じられないと言う目を向けた。
「……お前勝手に……」
「ジュースあるしお茶いらんよ?」
ニコリと笑う上杉に武田は舌打ちして睨む。
「やば。上杉、遠慮ねーな……」
自転車を止めた三好も来て玄関から武田の家の中を覗いた。
「……うち、本当に無理だから」
「ええやん? 俺ら大人しくしてるし」
「いや、今日は無理だから」
玄関先で揉めていると家の中からパタパタ音がして武田の母親が顔を出した。
わざわざ出て来た母親に武田は顔をしかめてため息をつく。
武田の母親はショートカットに細身で背の高い綺麗な女性だった。上杉は一瞬、たじろいだがすぐに得意の愛想笑いを作る。
「あら、こんにちは。お友達?」
「こんにちわー。武田くんといつも仲良くしてもらってます上杉です。お邪魔します」
「あ、オレ三好です!」
「まぁ、いらっしゃい。どうぞ上がって?」
感じの良さそうな母親に上杉はチラリと武田を見た。
武田はジトリとした視線を上杉に向けて靴を脱いで家に上がった。
「……いいよ。上がれば?」
脱いだ靴をキチンと揃えると武田は上杉と三好に投げやりに答えた。
「じゃあまた明日」
上杉は自転車の鍵をつけて武田に尋ねた。
「なあ、武田くん徒歩やけど学校から家近いん?」
「二十分かかるかな?」
「ビミョー。てかチャリで来いよ」
「ウチ、自転車ないから」
じゃあ、と校門に向かい歩き出した武田を上杉は自転車を押して呼び止め並んだ。
「送ったるわ。武田くん後ろ乗り?」
「……二人乗り駄目だろ」
「真面目やなぁ。もしかして自転車乗られへんの?」
「は? 乗れるけど?」
ニヤニヤしている上杉を睨むと武田は自転車の荷台にドカッと跨いで座った。
「早く漕げば。校門でて右だから」
遅れて後ろから三好が自転車を漕いで上杉と武田に並ぶ。
「何? 武田んち行くの? オレも行きたい!」
「送るだけでしょ? 家には入れないよ」
「入れたらええやん? 友達とは仲良くせなあかんよ?」
「君は特に入れたくない。絶対何かするだろ?」
「せーへんよ。大人しくしてるやん」
「なーコンビニ寄っていい? 食い物買って武田んちで食おうぜ。腹減った」
「聞けよ! お前ら家には入れないからな?」
「三好くん、メントスとコーラ買ってこーや? 武田くんちで実験しよ」
「うわ、鬼畜!」
「あ? お前、マジふざけんなよ?」
「武田くん、口悪くなってんで?」
上杉と三好の笑い声を聞きながら武田は静かに笑った。自分の手でこの関係を壊したくない。
上杉の漕ぐ自転車に揺られながら武田の心も揺れた。
狂気と正常の中に混沌とする自分がいる。狂気を押し殺して完璧に遮断しなければきっと彼らと一緒に居られない。
小学生の頃に傷付けた友達の顔が脳裏にチラつくと武田は懺悔するように目を閉じた。
「武田くんどっち行ったらええの?」
上杉から尋ねられると武田は我に返って顔を上げた。
「……次の信号渡って右」
「武田んちって日本家屋で豪邸のイメージだわ」
「それ戦国武将のイメージ引きずってない? 普通の家だよ」
「名前、貞継やもんなぁ。渋すぎやな」
「オレのじいちゃんの名前より渋いわ」
「ねぇ……馬鹿にしてない?」
「してへんわ! 俺なんか名前めっちゃ間違われるよ?」
後ろから三好が得意げに上杉の名前を口にした。
「上杉いくとだろ?」
「自己紹介したからやん? ゆきととよう間違われんねん」
「てか、三好くんの名前なんだっけ?」
「はあ⁉︎ マジか武田、今更かよ! 一年の時もクラス一緒だっただろ!」
「ごめん。君の名前、当て字で読めない」
「お前がバカにしてるだろ⁉︎ ちょ、上杉、止まれ。武田殴るわ」
「暴力はあかんよ。武田くんも謝りや?」
自転車を漕ぎながら後ろで聞こえる小競り合いに上杉は笑った。
学校から真っ直ぐ家に帰りたくないので上杉にとって武田の家に寄れるのは丁度よかった。
中央通りから逸れると、しばらくして住宅街に入った。
街並みを形成するように同じコンセプトで揃い並ぶ家の中に武田の家はあった。三階建ての一軒家を眺めて上杉は口を開く。
「思ってたのと違うわ。めっちゃ普通」
「普通だって言ったでしょ。じゃあ、ありがとう。また明日」
荷台から降りると武田は上杉と三好を無視するように背を向けた。
「は、マジか? 家に上がらせろよ?」
「さよなら」
呆然とする三好を切り捨てるように武田は言った。
三好はコンビニまで寄ったのにと残念そうにして上杉を見た。上杉は静かに自転車を端に寄せて止めるとニッと笑った。
家まで来たら武田の家に強引にでも入るつもりでいた。だから何も問題はない。
武田が鍵を開けて家に入ろうとした瞬間、上杉は背後からドアを掴んで家の中に聞こえるようにわざとらしく叫んだ。
「お邪魔しますぅー! うわー武田くんちめっちゃ綺麗ー!」
武田は驚き、振り返って上杉に信じられないと言う目を向けた。
「……お前勝手に……」
「ジュースあるしお茶いらんよ?」
ニコリと笑う上杉に武田は舌打ちして睨む。
「やば。上杉、遠慮ねーな……」
自転車を止めた三好も来て玄関から武田の家の中を覗いた。
「……うち、本当に無理だから」
「ええやん? 俺ら大人しくしてるし」
「いや、今日は無理だから」
玄関先で揉めていると家の中からパタパタ音がして武田の母親が顔を出した。
わざわざ出て来た母親に武田は顔をしかめてため息をつく。
武田の母親はショートカットに細身で背の高い綺麗な女性だった。上杉は一瞬、たじろいだがすぐに得意の愛想笑いを作る。
「あら、こんにちは。お友達?」
「こんにちわー。武田くんといつも仲良くしてもらってます上杉です。お邪魔します」
「あ、オレ三好です!」
「まぁ、いらっしゃい。どうぞ上がって?」
感じの良さそうな母親に上杉はチラリと武田を見た。
武田はジトリとした視線を上杉に向けて靴を脱いで家に上がった。
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脱いだ靴をキチンと揃えると武田は上杉と三好に投げやりに答えた。
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