姉の様子が、おかしいです。

桃次郎

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88  キャサリン・アンバー 4

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アンバー家に1通の手紙が届きましたの。

ワタクシ宛の手紙でしたわ。

手紙の差出人は、以前、お世話になった彫刻師からでしたの。

ワタクシに何やら、相談したい事がおありとの事。

今日は、その彫刻師のお宅へとお伺いする日ですの。

「どのような相談かしら?」


   

ガタン。

馬車が止まり、従者にエスコートされて、馬車から降りる。

玄関の前で、彫刻師が出迎える。



「キャサリン様、わざわざお出で頂きまして、ありがとうございます。」

「いえ、構いませんわ。」


 


家の中へと案内される。

彫刻師の家は、工房と自宅と一緒になった家である。

家の中は、こじんまりとした作りで、応接間などない。

キャサリンが通された部屋は、食事をとる為の部屋で、

テーブルとイスが4脚あるだけだ。


   


「それで、どのような相談なのでしょう?」

ワタクシに出来ることかしら。

「えぇ、キャサリン様と聖人様のおかげで、うちの工房に仕事の依頼が
毎日、入るようになりまして、借金の返済の目途がつきました。
是非とも、キャサリン様からお聞きした、聖人様のお話を皆に広めたいと
思いまして、キャサリン様のお力添えを頂けたらと・・・・。
つきましては、キャサリン様に絵本を描いて頂けないかと。
ワシでは、絵が上手く描けないのです。キャサリン様に見せて頂いた
聖人様の絵は、とても素晴らしかったです。
絵本の費用は、もちろん、うちでお支払い致します。
聖人様に感謝の気持ちを伝えたいのです。」

なんて、素晴らしい事でしょう。

絵本にして、聖人様を世の中に広めるなんて。

ワタクシには、思い付きも致しませんでしたわ。

ワタクシは、気が付いたら彫刻師の手を掴んでいましたわ。

「是非とも、聖人様の素晴らしさを広めましょう。ワタクシ、協力は
惜しみませんわ。」

さっそく、ワタクシは邸に帰り、スケッチブックを広げ
絵本の制作にかかりましたわ。

気が付けば、朝になっていましたわ。

我ながら素晴らしいものが描けましたわ。


すぐに、彫刻師にみせなければ。

朝食も食べている時間が勿体ないですわ。

「馬車を用意してください。」

彫刻師の家へ行きますわよ~。


「えぇ~!もう出来上がったのですかい?」

ふふふ・・・。

驚いていますわね。なぜか、とても筆の進み具合が良かったのですわ。

聖人様のお力ですわね。


さっそく、彫刻師にお見せしましょう。

感想が楽しみですわ。



彫刻師がスケッチブックを広げる。

読み進めるうちに、なんだかしょっぱい顔をしている。



キャサリンは気づかない。

なぜなら、次回作の本の話の内容を考えるのに夢中になっていたので。




彫刻師は、自分が頼んでいるので、意見が言えない。
しかも、相手は貴族だ。

もう、この本でいいんじゃないか・・・・。


「キャサリン様。素晴らしい本です。」

キャサリンは、ぱあぁと目を輝かせた。

「そうでしょう。ワタクシも我ながら満足いく本が描けたと
思っておりますのよ。」

ふふふふ・・。




良かった。本当の事を言わなくて・・・・

彫刻師は、胸をなでおろす。

いいんだ。・・・これで、いいんだ。

彫刻師は、自分を納得させた。



「キャサリン様、こちらのスケッチブック
をお預りして、印刷所へ届けさせて頂きます。」


ワタクシは貴族令嬢、聖人様を世の中に広めるのならば
ここは、ワタクシがやるべきではなくて?

この名誉ある使命は、ワタクシこそがやるべきだわ!


「いえ、この本は、ワタクシにやらせて頂きますわ。
費用も必要なくてよ。あなたには、この本を像を買いにこられた
方達に配って頂きたいのです。もちろん本の代金は不要ですわ。」

「えぇぇーーーー!それは、困ります。こちらから申し出た事なのです。
そういう、わけにはいきません。」

「いえ、これは、ワタクシの使命なのです。」

彫刻師には、納得して頂いて、すぐに印刷所へ依頼しましたわ。




数日後・・・



ワタクシの手元に製本された聖人様の本が届いた。

素晴らしいわ。

ワタクシの(妄想と願望のてんこ盛り)絵本。

聖人様の像へ奉納する。







腐れ神様の腐教活動が着々と進んで行く・・・・・。








流れ弾に被弾する被害者がでる予感。



































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