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5話.夢の時間
しおりを挟むライオネルと話をした次の日。
「マーニィ。一緒にご飯を食べよう!」
昼休みの終わり、ライオネルが嬉しそうに寄ってきた。
昨日と同じように教室がざわりとする。
わたくしに関わるなと理由まで教えていったのに、どういうつもりなのだろう。
「あなた、どういうつもりですか?」
キッとライオネルを睨みつけが、ライオネルに動じる様子はない。
「だめかな?」
「ちょっと」
ライオネルを引っ張ってまた屋上に行く。
「どういうつもり?」
ライオネルを問い詰める。
するとライオネルはあっけらかんと笑って言う。
「確かにマーニィの事情は分かったけど、それは僕らが仲良くしちゃいけない理由にはならないよね。違うかな」
「それは」
確かに、ライオネルと仲良くしても、魔王に乗っ取られやすくなることはない。
けれど。
「わたくしと一緒にいれば、周囲がどうなるかわからないわよ。最悪危害を加えられるかも」
「どうせ3か月しかいないし、それに君を助けたいと思って編入したわけだからいいよ」
「わたくしが悪役令嬢として積み上げてきたイメージだってどうなるか」
「必要なら僕も演技する。君に一目ぼれした身の程知らずの役でも君を正そうとする愚者の役でもなんでも」
「どうしてそこまでして」
「事情を知ったからこそ、なおさら助けたくなったからだよ」
「同情のつもり?」
「違う!君が魔王を抑えてくれているってことは、世界を救ってくれているってことじゃないか。当然僕のことも。それなら、僕だって力になるのは当たり前じゃないか」
必死の形相に気圧される。
そんなことを本気で言ってくれる人もまた初めてだった。
いや、わたくしがメビウスに取りつかれる前ならいた。
お兄様だ。
10年前、魔王に怯えていたわたくしに「私が絶対に魔王を倒してやるからな」と言って、
その後すぐに勇者になることを決断したお兄様。
タイミングが被っただけで、前から人々のため決断していたことかもしれない。
それでも、わたくしのため、が決め手になったのかもしれないと想像したら、
嬉しくて仕方なかった。
「君が心配なんだ。なにもできないかもしれないかもしれないけど、せめて孤独の戦いをしてる君と仲良くしたい。その孤独を少しでも紛らわせる存在になりたいんだ」
その言葉は、マーニィにとってこの7年ずっと夢想していた、
あるはずのない現実だった。
誰かが、マーニィの事情に気づいてくれて、寄り添ってくれて、楽しく笑いあう。
そんな日が来ればどれだけいいかと思った。
何度もそんな光景を夢にみた。
来るはずがないと思う程に、思いは募り、それをずっと無理やり抑え込んで来た。
だから、言葉で言い表せない感情があふれ出してくる。
何だか泣きそうだ。
辛うじて残った理性でそれを必死に飲み込む。
「そう、勝手にすれば」
そっけなくそれだけ言って。お弁当を食べた。
「うん、いただきます」
ライオネルも手を合わせて弁当を食べる。
初めはお互い無言だったが、少しして、単語のやり取りが始まった。
そこに徐々に文脈が肉付けされ、会話になっていく。
今日食べたお弁当は、この7年で一番美味しかったと思う。
そうしてわたくしたちは、毎日一緒に屋上でお弁当を
食べるように約束した。
理想的な夢のような時間。
そんな時間があってもいいかと思った。
最後の3か月くらいは。
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