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5.帝国と言う国

百三話 亡霊と湖の調査6

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103話 指輪を発見回収作業に

木々に身を隠す様にしながら湖へ戻っていく、亡霊の影も形もない
湖が見える場所まで近付いたが姿は見えない、まだ出てきてないようだ
しかし最初に来たときより雰囲気が妙に変化している気がする
なんとも言えない感覚だが、しいて言えば淀んでいる空気だろうか?
「どうする?挨拶する場合、相手が正気を持っているとは限らなくなったわ」
どういうことだろうか、夜は亡霊が活発化する時間ではあるが···
「まさか感情や意思が暴走するとでも?この変化が何かあるのか?」
「えぇこの雰囲気の変化は活発化だけじゃない、亡霊は精神そのものでもある
元々がゴースト種の魔物か魔物が変化したのならあまり関係ないんだろうけど
元が人間で更に自我ある存在、だとすると感情の暴走が起きるかも」
なるほど魔物は人間種程複雑な感情や意思を持たないのが多い、そう言った存在が
ゴースト種になっても希薄な意思は活発化しても大した変化は起きないのか
ならば龍等の人間のように感情が多く意思も強い知性ある種だとどうなるのか
同じようになりそうだが、そう言った魔物が変化した情報は殆ど無いんだよな
あっても元人間のゴースト種の情報ばかりだ、変化してゴースト種になった魔物は
それなりに居るようだが、どれもゴースト種の特性と行動に変わってしまい
元人間のゴーストのように多様性を持たない、人間と魔物は何かが違うのだろう
確認のため草木に隠れ待つ、少しすると最初と同じ様に水が盛り上がった、が
水は湖から外には出ず上に伸びそのまま湖に戻っていく、ルシェラの様子が違う
「ギィーー」「ググォーーー」「オアァーーーー」
叫ぶのではなく小さく唸るように出ている声は少しづつ大きくなっていく
目が青く輝く光を放ったようにくっきり見える、更に落ち着きがなくなっており
周囲を見渡しては頭を揺らし抱え体も大きく動き、そして村の方へ向かっていく
途中で何度も止まっては唸り周囲を見渡している、その背が遠ざかる迄見送った
「随分と様子が変わっていたな、これも夜だからなのか?」
「恐らくこれが彼女の感情の暴走よ、引き金は···死んだ時間かしら?」
反応され無いための小さく短いやり取り、だが必要な情報はこれで十分だ
死んだ時間に感情が強く掻き乱され暴走し行動する、確かに納得できるとはいえ
死亡時間に関しては確定かどうかは解らないが、この暴走が普通ではないのは確か
ゴースト種の暴走にしては可笑しいからな、普通なら生物を襲うものだ
だが村の人間を特に害している訳でもない、襲われた者は居たが死者が居ないのが
これが普通のゴースト種でないことを意味している、呪いの理由は不明のままだが
依頼も退治だから討伐をしなくてもいい、一番いいのは弔ってやる事と成仏か
だがなにをするにしても、まず湖の底まで行かなくては話が進まない
もし亡骸があっても持ってくるのは指輪だけだ、体は持ってこない方がいいだろう
二度手間になるとしても、穏便に終わらせるには無駄なことはしない方がいい
もし亡骸を引き上げて暴走されても困るし、自ら見投げしたのならそのままでも
良いだろう、水中でしかも浄化されているなら肉体もアンデッド化しないだろうし
ほっといてもいい、ルシェラはもう見えなくなったか、湖に向かっていく
「遺体はどうするの?放っておく?それと私はどうしようか」
「そのつもりだ、そうだな何かする事あるか?」
「うーんそうね、貴方はロープ結んだ方がいいんじゃない?持っておくから」
「そうだな何か合った時には合った方がいいか、ロープは持っている」
そこそこ長さがあり細いが強度は十分だろう物、亜空間倉庫から取り出す
「どこに持ってたの?でもそれだけじゃ足りないかも、これも使いましょ」
どうやら彼女も持っていたようだ、確かに長さ10M位の物だし足りないかもな
互いのロープ端を結び胴体に巻き縛る、合図もあった方がいいな
「何かあったときの合図はどうするか、引く回数と意味はどうする?」
「2回で回収終了か引き上げ、こっちから2回で敵が来た、これくらいでしょ」
「そうだなそれくらいしかないか、では準備しよう」
幾つかの装備を外していきポーチも腰布も取り外しほぼ裸になる
「ちょちょっちょ···まっま、まちなさいヨッ何で目の前で脱ぐのよ!?」
「装備は外した方がいいと思った、それと気にするな」
「···気にするわよ···もう、貴方も異性相手なら気にしなさいよ、相手の為にも」
「冒険者なら然程珍しくもないようだぞ、パーティー内ならよくある事だと」
「そうなの?だとしても緊急時以外は慣れそうにないわね」
浅い部分から足を入れていく、特に冷たい訳でもないな、軽く潜っていく
「思ったより泳ぐの下手ね···大丈夫かしら?」
何か聞こえた気がしたが···水中だし気のせいか、うーむ暗いな見通しが悪い
ただただ下へと潜っていく、だんだん暗くなり周囲が全く見えなくなった
一先ず底までいけばいい、底までこればなんとなく地面の輪郭位は見える
底に手を付き伝って移動する、どうやら水面より底のほうが広いようだ
手前から少しづつ奥へと向かっていく、そこに深い青色の宝石を見つけた
これが魔除けだろうが同時に水の浄化もしているのだろうか、水が綺麗なままだ
宝石は少し光っているお陰で見付けやすい、近付かないと見えないけど
周囲には武器や小さな物、幾つか握ってみると金属のようだ、硬貨だろう
昔此処に住んでいた人達の遺品のような物だろうか、あちこち散らばっている
武器も硬貨も錆びておらず十分使えるだろうが、まぁいいか別に困ってもないし
物がここに集まっているなら近くに亡骸もあるだろう、近くを回るように移動する
宝石の光がなんとか見える範囲なら迷うこともない、探して半周程で見付かった
状態はよくわからないが女性だと思われる、衣類から判断するしかない
顔や体型は暗くて殆ど見えなくて判断がつかない、だが多分合ってるだろう
流石に昔の人物の亡骸なら既に形を保っていないだろうし、基本的に人は来ないし
もし来たとしても装備くらいしているだろうが、ただの服しか着ていない
指輪を着けていれば正解だろう、手の位置を確認し近付いて指輪を探す
右手には何もなかった、左手は握られており確認に手間取ったが指輪を見付けた
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