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8.転輪

百七十話 (敵にとって)地獄の戦争

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170話 戦力外通告···!?からの参加権

やれること···いや出来る事が無い、これは参加しても邪魔にしかならない
それに飛び交う矢を見ている間に門の前に居た兵士が全滅していた
パッと見でも三千人は優に越えた数が居たと思う、実際最初の突撃でも
前面にいた兵士は削れていたが奥に居た兵士達はそこまで効いていなかった
突撃するにしても死体が散乱していたせいで勢いを保てなかったんだろう
そして本体が前に出る、門前の兵士の全滅に合わせ前進していたようだ、しかし
どうやって門を開けるのか?気になっていたのだがその答えは···投石だった
前に出て弓を射ち続けるゴブリンの後ろに着いたトロール達が石を投げる
だがそれをたかが投石などとは言えない、何故なら人間の頭部よりも大きな石
それがトロールの筋力によって飛んでいくのだから、最早簡易投石機である
あっちも投石機を使っているのか、たまに門の向こうから石が飛んでくる
その石が弓ゴブリンに向かえば吹き飛ばされ死ぬ個体も出てくるが、本隊の近く
トロールや盾持ちゴブリンに向かえば平然と腕や盾で石を弾き防ぐ、代わりに
こっちから飛んでいった石は門にあたり軋ませ、時には壁を越えて向こうに落ち
石壁の上に居る運の無い兵士に当たった時には肉が弾け血が撒き散らされる
自分も足元に転がっている小石を投げてみる、勢いよく飛んでいくものの
壁の上を大きく越えて検討違いの方にいってしまった、投げるの下手だな···
いつの間にか隊長であるゴブリンの周囲から復活?したゴブリン達が前に出る
どうやら装備品は無くなるようだ、確かに武器は門の前に散らばってるもんな
門に辿り着いたゴブリンはその散らばってる武器を適当に拾い上げては
槍なら上にいる兵士に向けて投げつけ、剣なら扉の隙間に捩じ込んでいく
そして死んでは隊長ゴブリンの元で復活し、また突き進んでいく
どうやら隊長ゴブリンが復活地点になっているようだ、魔法使いは一体···?
今はなにもせず居るだけかと思っていたが、どうやら何か魔法を使っていた
詠唱はしているようだが、ここまで聞こえてこない程の小さな声のようだ
何の魔法か判らないが、発動しても判りにくいと言うことは補助の魔法だろうか
トロールの投げる石はどうやって準備しているのか疑問に思い、その石を
魔法で補充しているのかと思ったが、トロールが地面に手を着けるとその手を
押し戻すように石が生成されそれを掴んで振り上げる、そう言えばトロールは
土の妖精だっけか、だからあれはトロール自身の能力と言う訳だ
もしかしたら身体強化の魔法を使っているのかもしれない、妖精の身体能力など
知らないから既に強化を受けて戦闘していたとしても気付けない
視線が部隊の後の方にいっためふと案内していた彼はどうしたのかと思ったら
既にその姿は無かった、いつの間にか帰っていたのだろうか、いや来る途中から
会話もしていなかったし部隊と合流した時点で既に帰っていたのかもしれない
せめてどうしたらいいのか、何の役目をすればいいのか指示が欲しかった···
現状眺めているしかない、座ってただ観戦を楽しむなど出来るわけもなく
暇と言うより居心地が悪いと言うか落ち着けないと言うか、そんな感じ
そんな事を考えうつ向いているわけにもいかず、思考を止めて門へ向くと
殆ど門が開きかけていた、正確には大きくひしゃげ全体にヒビが入っている
木製であるため火を着けたりもしていたようだが今まで延焼しなかった
なのにヒビが裂けはじめてからはその裂け目から煙が上がりだし火が着き
ヒビの内側へ移って火が広がる、どうやら表面は耐火なのかそこは燃えていない
さらに石がぶつかれば木の破片が飛び散り火の粉が舞う、兵士達も下がったのか
降ってくる矢の量が増えたが、門の隙間から兵士の姿が見えなくなった、すると
火の粉が舞う門へ何か小さな壷が投げ込まれる、それが砕けると中から出た
液状の何かが引火したのか衝撃が発生し、その風が火を巻き上げ勢いを強くする
その火が風に乗ってあちこちに飛び散ると門の火はもう燻るだけになった
そこで本体が前に出て、門の奥へ弓の掃射をすれば前線のゴブリン達が中へ突撃し
トロールの前に出た重装備が槍を構え突進、その後ろにトロールが着いていき
更にその後ろに剣を担いだ重装備のゴブリンが着いていく、本隊に残ったのは
壁の奥に掃射を続ける弓と、本隊が近付いたためしばしば飛んでくる矢が
とある地点から逸れていっている事から、風魔法か何かで防御している魔法使い
そして護衛の3体の重装備だけ、これまでの一連の流れを指示も言葉もなく行う
いやトロールには指示を出していたが、ゴブリン同士では一切無かった
相手に次の行動を察知されず、更に一瞬の間に行える思考の統一と言う強み
恐ろしい物だ、これだけ厄介な能力があるなら確かに攻めこもうと思わないだろう
そう普通なら···だが、だからなんで知能の低い魔物ですら彼らに攻撃する事が
殆ど無いようなのにコイツらが攻撃したのか判らない?王になっている奴が
妖精?と言うよりゴブリンをか?見下している、いや蔑んでいる?これは同じか?
ようだがその理由も判らない、異世界人···地球人らしいがいつ来たのだろう
そしてなんでそんなに愚かなのだろうか?と言うか思想が偏っているのかか?
シノ達と同じ地球かは判らないし、同じだとしてももっと前に来ているようだし
教育は受けているのだろうが···育った環境が悪かったと言う訳でもないだろう
何故ゴブリンに対しそんなに敵対的なのだろうか、恨みでもあるのかと思ったが
そもそも妖精達は人間どころか外部に干渉すること自体少ないようだし
関わりは無さそうなんだよな···そもそも一般人ですら妖精を知っていても
どんなものか知らない人も多いようだから、異世界人が知るとなると
元の世界で知るのが1番確率が高い···んだが、確か地球に妖精いないよな?
なんで敵対的になるんだ?ゴブリンを知ってるんだから妖精だってのは判るはず
実際シノ達も知ってたし、同じ地球でなくても同じ様な過程を得ているんだから
大体は一緒のはず、平行世界みたいな同じ成り立ちで近い在り方だし···ん?
「あんたも参加するなら今だぜ?それと王は殺さないでくれると助かる」
成る程やっと出番が来たか···いや今の口振りだと勝手にやっても良かったのか?
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