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9.新たな一歩

二百一話 教国目前

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201話 教国に着いた

向かって来ているワイバーンは3匹か、奴らは基本的に1匹で巣の周囲を飛び回り
警戒し2~3匹で狩りに出る、だったか?ならあれは狩りの部隊ってことだな
もう自分の付近には他の集団どころか1人もいないが…確か奴らは商隊を狙って
襲っているんだったか?なら1人であれば特に襲われる事はないのかもしれない
…そう思っていたがそんな事は無いのかもしれない、こっちに向かって来ている
既に一直線にこっちへ向けて滑空を始めている、ふむ?奴ら痩せ細っている?
羽ばたく翼に力は無く体もふらついている、更に口からは涎がこぼれて眼は正気を
失った様に血走っていて、先頭を切っている中央の個体はもう近くまで来ていて
他の2体はそれぞれ間隔を開けて追従する陣形、の様に見えて既に崩れている
後ろの方は加速した前の個体をそのままただ追っているだけで、後ろの2体は
加速していないため間隔が開き、1番後ろの個体はこっちに着く前に地面に
降りようとしている、確かワイバーンの1回の飛行可能時間は30分程だったか
その度に地面に降りて休息を取って、また飛び上がる…故に地上に降りる時は
大抵が疲労している時のため動きが鈍くなる、攻撃の回避も当てる事もやりやすく
なり討伐が容易になるとか、まぁ飛んでる相手への攻撃手段がないならそれが
安定だし、他には突撃に合わせて反撃するのが基本的な対処法としてある位か
残念ながら主戦力として使える魔法が無いし、追尾性能のある魔法も無いので
近付いてきた所に近接で対応するしかない、とそんな事を考えている内にもう
先頭の個体は噛み付こうと口を開き直前まで迫ってきている、既に喰らう事しか
考えていないようで、そこに一切の躊躇いも無くただ一直線に突っ込んでくるだけ
最早食えなければただ飢えて死ぬか、殺されて死ぬかの違いしかないのだろう
もしかしたら自分が死んでも後続の個体が食えればいいと思っているのかもしれ
ない…一応集団で生活する社会性を持つ種なんだし、眼前まで迫ってきた顔を
避けて首を切り落とし翼に当たらないように直ぐ距離を取る、まぁ当たるとあの
勢いと質量でそこそこダメージがあるだろうから回避が安定だ、そして残る2匹は
どうやら危機意識でも持ったのか、連携…?連携しているようで2方向から挟む
様にして飛んでくる、しかし遠距離攻撃をしてこないな…確か奴らは燃える粘液
の様な物を吐いて空から攻撃し、その火と熱で獲物が弱った所にトドメとしての
接近攻撃だったはずだが?と言う事はその手段が取れない程弱っているのかも
しれないな、あれって酸が殆ど無くなった胃液とか言われてるようだし…
実際は別の物のようだが、恐らくそれを生成出来ない程弱っていると思われる
それに挟撃をしようとしているようだが速度が違う、どうやら速度を落とすと
飛行が不安定になるようで、右から来る個体は速度が一気に落ちて地面を蹴って
加速なのか安定化を図っている、その間に左から来る口に向かって振り切ると
頭部の上半分が飛んでいき体は地面に落ちる、次に右から来ていた個体は
ドタドタと力なく地面を蹴りつけながら翼を振っていたが、飛べていないまま
こっちに近づいて来ていた…そこまで知能が低い種では無かったと思うんだが
まぁ状態が状態だからか?生物だし体調で変化する…魔物の活性化の影響で
エサが少なく飢えてるんだとしたら、奴らの規模からするとエサが全く足りて
ないよな、実際殆ど3体とも飢餓状態だし…なのにどうして大人しいんだ?
近付いてくる奴の首を斬り落とす、こいつは少し他の奴より小さいな
「ふむ、こやつら随分痩せ細っておるな」
「あぁ、だが最近ワイバーン共が特別活性化したと言う情報は無い」
「周囲の活性化のせいで食料が足りんのだろうが…」
「暴走していないのが妙だ、もしや上位種に統率されているのか?」
「ただのワイバーン共ならもっと好き勝手動き周る筈だからなぁ」
「それとも…巣の近くに天敵や強大な存在が棲み着きでもしてそれで活動に制限が
掛けられたが故に混乱し暴走状態になっているのかもしれん」
「奴らの天敵か…となると奴らの上位種に当たるドラゴンかドレイクか?」
「ふむ…最近そんな大きな個体が空を飛んでいるとは聞いていないが」
「それが小型なのかもしれんし、巨体の魔物の可能性もあるが最近は存在を確認
されていないからなぁ…まぁ気付いてないだけかもしれんが」
2人が色々と話合っているのを聞くと、ワイバーンは決まった場所に巣を作り
同種へ呼び掛け多数が集まって集落を形成するらしい、そして奴らには群れを
率いるリーダー的な存在は発生しないんだとか、そのため居住地を変える場合
そこの群れ全てで移動するため、残る個体は移動できなくなってしまったか老い
すぎた個体だけとのこと、これだけ活動しているし移動も観測されていないため
やはり外部の要因でこうなっているらしい、気付いたからと言え何が出来るかと
言えば特に何もない、まぁ巣に近づかないのが1番だろうと言う事で話は終わった
「何かあれば討伐依頼や討伐隊が出るだろうからな、気にしなくてもいいだろう」
「取り敢えず優先すべきは妹探しだ、しかし探すにしても見た目も名前も判らん」
「ん?兄者も知らないのか?会ったのは幼少の頃だけだからな…流石に今の姿を
知らない以上見た目では探せん、名前に関しては本名で活動していないだろうから
だ、本名であろうが育て元の名であろうが貴族の名前であれば目立つ」
「まぁそれもそうですな、貴族である事はさらって行った奴らも分かっています
からな…そうなると与えらそうな役目で考えるべきか?」
「与える仕事は地位のある人物に関係するだろう、恐らく国の主要人物に関わる
役目ではあるはずだ」
「そこまで判るのか?兄者」
「いやこの予測はただ私であればそうするというだけだ、使うものは適した場所に
使えばいいだけだろう?使えるのだから使わねばな」
「成程…ですが使っていた奴は随分な大馬鹿者だったようですが…」
「…うむ、確かになんの意味も無いかもしれんが、貴族であればなんだかんだ
使い道はある、奴でなくとも思考が死んでいない配下ならそう考えているだろう
故に先に偉い人物の付近を探っていこうではないか」
「姿を変えられていたらどうする?」
「まぁ幻惑魔法なり使っているなら解かねばならんが…使えんだろう?」
「もちろん」
「私が一応使えるから大丈夫だ」
「見つかりそうになったら?」
「取り敢えず気絶させ確認してから殺す、目撃者が消えれば問題は無い」
「問題ない…?兄者は時に脳筋思想になるのは何故だ?」
そんなやりとりをしている内に着いた、途中走ったりしたもののもう日が
暮れてきて暗くなり始めている、まぁ活動するなら夜がいいから丁度いいのか?
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